
アルデンヌクラシックの前哨戦ブラバンツ・ペイルで昨年12月の交通事故から今季初レースを迎えたレムコ・エヴェネプールが、一騎打ちでファンアールトを下し、劇的な復活勝利を挙げました。3位は集団スプリントで競り勝ったUAEの若手アントニオ・モルガドという結果です。

今季の春のクラシックはファンデルプール対ポガチャルという2強の争いで、ミラノ~サンレモはマチューが、ロンド・ファン・フラーデレンはポガチャルが、先週のパリ~ルーベはマチューが勝利し、ポガチャルが2位というまさに二人のマッチレースでした。

そして、今秋から始まるアルデンヌクラシックはマチュー不在でポガチャルの3連勝が濃厚とみていたら、ここでレムコ・エヴェネプールの登場です。昨年末の怪我はかなりの重傷で、神経損傷は完治しておらず、未だ痛みがあるといいます。それでも、脚を使うスポーツなら大丈夫と言い切っていたように、今季初戦をワウト・ファンアールトをスプリント勝負で破り、今シーズンの初勝利を飾るのですから流石です。

ただ、今季のワウトの調子はイマイチで、ドワーズ・ドーア・フラーデレンでは3対1のスプリントに持ち込みながらEFのパウレスに敗れ、ロンドとルーベは共に4位とポガチャルやワウトとはかなり力の違いを感じていました。そのワウトと互角では、ポガチャルのライバルに名前は上がるものの力の差はありそうです。3位にUAEの若手モルガドが入っていることを観ても、本番ではポガチャルの力は明らかに上でしょう。

とはいえ、昨年はトリプルクラウンのポガチャルには及ばないまでもオリンピックの2つの金メダリストなので、今年のツール・ド・フランスではヴィンゲゴーとログリッジでビッグ4と呼ばれることは間違いの無い選手なのは間違いありません。

また、レムコの大怪我は今回が初めてではありません。2020年のイル・ロンバルディアで下りの急カーブを曲がり切れず、橋の側壁に衝突。数メートルの高さから投げ出され骨盤骨折と右肺挫傷の重傷を負っているのです。ここまでの実績はこの年にツールを征しているポガチャルを圧倒していたのです。

ただ、ジュニアの時代から完成されていたレムコに比べポガチャルはまだ粗削りで、レムコが大怪我をしたイル・ロンバルディアには参戦すらしていません。勿論、ツールで3度の総合優勝に加えモニュメントを8勝に世界選手権まで征するまでに成長したポガチャルの立場は逆転しています。今ではレムコがポガチャルに勝てるのはTTだけといった状況になっているのです。

レムコはポガチャルの1歳年下でもあるので、これからはポガチャルとの2強時代を牽引してくれそうな存在であることは間違いありません。大きな怪我を2度も乗り越えたレムコのメンタルの強さは称賛に値します。才能という意味では間違いなくポガチャル以上の存在です。空力モンスターといえるあのフォームが取れるのはレムコの天性の才能の現れでしょう。

昨年「怪物と神童の2強時代へ突入か?」という記事を書いていますが、この二人の長きに渡るバトルを観てみたいと思っている矢先のレムコの事故だったのです。流石に今回の怪我の影響は少なくないだろうと見ていたのですが、復帰は意外に早かったのは不幸中の幸いでした。
流石に今夜開催のアムステル・ゴールドレースでいきなりポガチャルと勝負になるとは思っていませんが、ポガチャルにもパリ~ルーベの疲労が残っている可能性もあるのです。マチューの名前はありませんが、レムコにピドコックというロードとMTBのオリンピックチャンピオンが王者ポガチャルに挑むという構図は楽しみです。
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