
プロ野球やプロサッカーには名門チームというのが存在しますが、サイクル・ロードレース界ではどうなのでしょう。ヨーロッパではサッカーに次ぐ人気を誇るスポーツですが、2年連続でワールドランク1位のUAEチーム・エミュレーツ・XRGは1982年に結成されたデル・トンゴを事実上継承する形で誕生したチームです。世界ランク2位のリドル・トレックの創設はさらに新しく2011年という状況なのです。歴史のある名門チームは時の流れの中で姿を変えて引き継がれているというのがサイクル・ロードレースの実情といえます。

あの偉大なエディ・メルクスでさえ、プジョー-BPに始まり、ファエマ、モルテニ、フィアット、C&Aと次々にチームを渡り歩いているのです。プジョーやフィアットという自動車メーカーは今でも存在していますが、近年は自動車メーカーがサイクル・ロードレースの冠スポンサーになっている例はほとんどありません。自動車メーカーは大会をスポンサードする傾向にあるようです。かように冠スポンサーが変わるとチーム名が変わるのがサイクル・ロードレースの世界なのです。

プロ野球やプロサッカーは地域密着型のチームがほとんどですが、サイクル・ロードレースはヨーロッパ中を大移動するスポーツで、今では世界中でレースが開催されているため、地域密着というのは難しいスポーツなのかもしれません。チームのベースとなる組織はあるのですが、冠スポンサーが時代と共に移り変わり、今ではどこがベースの組織だったのかは調べなければ分からいのが実情です。例えばUAEチーム・エミュレーツは嘗てはランプレというチーム名で、ジルベルト・シモーニやダミアーノ・クネゴが所属していたチームでした。使用バイクもcannondale、MERIDA、Wilier、COLNAGOと替わって来ているのです。2017年には中国のスポンサーに買収される寸前でUAEが手を挙げ、UAEアブダビとなり、大手航空会社エミュレーツが大手スポンサーに付き今に至っているのです。2020年にタディ・ポガチャルがツール・ド・フランスを征するまでのグランツール制覇はシモーニのジロだけのチームでした。

それが、2018年にツール・ド・ラヴニールを征したタディ・ポガチャルを2019年に獲得したのを転機に、2年連続世界ランク1位のチームにまで登り詰めたのです。ポガチャル加入前のUAEは世界ランクがTOP10にも入っていないチームだったのです。それが、ポガチャルが加入した2019年には4位に、2020年にはポガチャルのツール・ド・フランス総合優勝もあり3位へと順位を上げて行きました。ちなみにこの年の世界ランク1位はログリッジとファンアールトを擁したユンボ・ヴィスマでした。