
怪物対神童の対決2025はアルデンヌクラシック初戦のアムステル・ゴールドレースでした。結果はゴールスプリントに持ち込まれ、伏兵スケルモースが勝利しポガチャルは2位、レムコは3位という結果に終わっています。昨年末の大怪我から復帰2戦目ということもあったのか、最後のスプリントにもキレがありませんでした。

続くフレーシュ・ワロンヌでは雨と寒さの影響か9位と振るわなかったレムコに対し、最後のユイの壁でアタックを決めたポガチャルが後続に10秒という差をつけて快勝しています。やはり登りゴールになるとレムコには分が悪そうです。本人は寒さで身体が動かなかったと言っているようですが、先にレインウェアを脱いでいたのはポガチャルの方なので、寒さはポガチャルの方が感じていたはずなのです。

怪物対神童の対決の第3戦はモニュメント第4戦リエージュ・バストーニュ・リエージュになります。伝統的にクライマーたちの狩場となってきた格式高いこのレースが、2025年4月最後の日曜日、つまり今夜が2人の激闘の舞台となります。この直近4年間、リエージュの栄冠をこの二人が仲良く分け合ってきているのです。2021年と2024年はポガチャルが制し、2022年と2023年はエヴェネプールが勝っている。

レムコのリエージュ初参戦は2022年で、初参戦でモニュメントを初勝利しているのですから神童と呼ばれているのも頷けます。2020年のイル・ロンバルディアでの大怪我が無ければ、2021年もポガチャルとの対決が観られていたはずなのです。二人のリエージュの初対決は2023年ですが、この年のポガチャルは落車で手首を骨折しリタイヤに終わり、レムコが連覇を達成。

昨年はオリンピックを考えてか春のクラシックの出場を見送りステージレースを走って来たレムコに対し、ポガチャルはWツールを狙い春のクラシックはリエージュだけに絞って来ていたのです。それだけ、リエージュはポガチャル好みのレースなのでしょう。2022年はUAEツアーとティレーノ・アドレアティコで総合優勝はしていたものの、春のクラシックは不振でドアーズ・ドア・フラーデレンで10位、ロンド・ファン・フラーデレンが4位、フレーシュ・ワロンヌでは12位という結果でリエージュはスキップせざるを得なかったのです。

2022年のポガチャルの不振の原因は不明ですが、ツールでも初めてヴィンゲゴーに敗れているのです。シーズン最後のイル・ロンバルディアこそ勝っていますが、この年のポガチャルは明らかに不調でした。今のポガチャルからはロンドでの4位やユイの壁での12位というのは想像すら出来ないはずです。

今季のポガチャルは好調で、シーズン初戦のUAEツアーは余裕の総合優勝。ミラノ~サンレモこそ3位に終わりますが、初参戦のパリ~ルーベでもコースアウトでバイク交換を余儀なくされながら2位は死守。アムステル・ゴールドレースでは伏兵にスプリントで敗れるも、フレーシュ・ワロンヌでは完勝。リエージュも今のレムコでは勝てないと見ています。

ポガチャルの最大の敵は自分自身の体調だと見ています。過酷なパリ~ルーベを走り、寒さと雨のユイの壁を勝ち切った反動が心配です。まあ、この程度の試練はポガチャルにとっては当たり前なのかもしれないのですが…総距離252kmのコースに、全部で11の起伏が散りばめられ、獲得標高は4000mを超えるので、ポガチャルがどこで仕掛け、独走距離はどのくらいになるのかと考えるのが普通でしょう。ただ、2023年には落車でリタイヤしているレースでもあるので、過信は禁物です。今年はストラーデビアンケでも落車があったポガチャルはパリ~ルーベでもオーバースピードでコーナーを曲がり切れないというミスをしているのです。

ポガチャルの強さの秘訣に怪我が少ないというのがありました。ここまでで大きな怪我をしたのは2023年のリエージュでの落車だけと記憶しています。ただ、学習能力が非常に高いのもポガチャルの強みで、同じ失敗を2度はしないのです。このレースを走り切れば、次は6月のクリテリウム・ドゥフィネまで1か月以上レース間隔が空くスケジュールを組んでいるので、ここは全力を出し尽くす走りを見せてくれるはずです。

ここまでミラノ~サンレモとパリ~ルーベでファンデルプールに敗れているポガチャルですが、グランツールでは間違いなく1強になると見ています。昨年まではビッグ4と呼ばれていましたが、今年は残る表彰台争いになりそうな気がしています。レムコは大怪我をするまではポガチャルを圧倒していたのですが、2022年の大怪我以降はTTでしかポガチャルに勝てない状況が続いているのです。