
ツール・ド・フランスの前哨戦と位置づけられているクリテリウム・ド・ドゥフィネがいよいよ山場を迎えようとしています。ポガチャルにヴィンゲゴー、エヴェネプールという3強に加え、ファンデルプールにミランと超豪華メンバーが顔を揃え、今年のマイヨジョーヌの行方を占う絶好の舞台となりそうです。

第1ステージから総合を争う選手たちがゴールスプリントをするという驚きの幕開けとなり、ポガチャルがゴールスプリントを征し、2位にはヴィンゲゴーが追い込むという激熱のレースになりました。これには流石のポガチャルもやり過ぎと感じたのか、その後はおとなしい走りを見せているように見えました。

ところが第4ステージの個人TTではTTの世界チャンピオン・エヴェプールが圧巻の走りを見せたのに対し、途中に登りがあったにも関わらず17㎞で48秒というタイム差を付けられてしまったのです。エヴェネプールだけではなく、ヴィンゲゴーからも28秒も遅れていたのが気になりました。初日の走りを観る限り調子が悪いようには見えなかったので、この遅れの要因が何なのか全く分かりません。

ポガチャルはTTのスペシャリストではありませんが、昨年は登りのあるTTではジロでガンナを、ツールでもエヴェネプールにも勝っている選手なのです。レース後ヴィスマのTTバイクを持ち上げていたポガチャルの姿がSNSに上がっていましたが、流石のポガチャルもこのタイム差は気になっていたのでしょう。特に今年のツールには山岳TTがありますから尚更です。TTバイクはトラックバイクのようなフレーム形状なのでそもそも重量はあるのが普通ですが、メーカーによって重量にかなりのバラつきがあるようです。コルナゴは今回のポガチャルのタイムを見て新たなTTバイクを用意出来るのでしょうか?今季のUAEチーム・エミュレーツはずっとTTの成績が芳しくなかったことを考えると、TTバイクの開発の遅れが影響しているのかもしれません。

今回のTTではヴィンゲゴーなどはチームカラーがペイントされていないバイクに乗っていましたから、サーベロはツールに向けて新しいTTバイクを投入するのでしょう。コルナゴは今季Y1Rsというエアロロードを投入していて、第1ステージのポガチャルの勝利はこのバイクでした。どちらかというと軽量バイクを好むポガチャルが、このバイクをレースで使用したのはミラノ~サンレモ以来のことなのです。今夜からの山岳3連戦でもY1rsを使うのか、軽量のV5Rsに戻すのかに注目しています。

山岳に入れば流石にエヴェネプールには勝てるはずですが、調子が良さそうなヴィンゲゴーとのタイム差を詰められるのか?チームとしてもヴィスマの調子が良さそうなので、今季絶好調のポガチャルといえども22秒というヴィンゲゴーとのタイム差は結構大きいはずです。ヴィンゲゴーとしては自ら仕掛ける必要が無いので、ポガチャルをマークし続ければ良いのですから。

勿論、攻撃型のポガチャルは積極的に仕掛けると思いますが、守りに徹したヴィンゲゴーとヴィスマは強いので、TTで付いたタイム差が総合争いを決してしまった可能性もあると思っています。ヴィンゲゴーには落車の不安もありますが、それさえ無ければヴィンゲゴーがドゥフィネを征してしまうかもしれません。