ツール・ド・フランスの最後の前哨戦が幕を降ろし、2週間後にはいよいよ本番が幕を開けます。エース級が顔を揃えたドフィネはポガチャルの圧勝でしたが、ツール・ド・スイスは初日の大逃げから始まり、総合優勝争いは混とんとしていました。わずか127.2 kmのレースにも関わらず、残り30㎞で逃げ集団に3分ものタイム差を与え、最後はグルパマFDJのロマン・グレゴワールが13㎞の独走を決めリーダージャージに袖を通すことになりました。

これは雨の影響もありましたが、逃げ集団にベン・オコーナーやジュリアン・アラフィリップといった有力選手が入っていたにも関わらず、UAEを始めとする有力チームが積極的に差を詰めようとしなかったミスでしょう。UAEとしてはグロスシャートナーをヴィスマはバルト・レメンを逃げに送り込んではいたものの、リドル・トレックやレッドブル・ハンスグローエといったチームとの連携が出来なかった結果だと見ています。

最近はポガチャル不在のレースで時折大きなミスを犯すUAEのチーム力に不安を抱いていたのですが、このレースでは初日からそのミスが出て、優勝候補筆頭のアルメイダが3分以上のタイム差を付けられるという失態をさらしてしまいました。これで目が覚めたのか、その後は積極的な動きを見せ、特に圧巻だったのは第4ステージでのアルメイダの独走勝利でした。ポガチャルのような49㎞に及ぶロングエスケープを成功させますが、第1ステージでのタイム差が大きく、この勝利でもグレゴワールとのタイム差を1分ほど詰めただけで総合順位は7位。

その後も第7ステージでも勝利を挙げ33秒差の2位に上がり、何とか最終日の個人TTでの逆転に望みを繋ぎます。最終日は10㎞の登りの個人TTで、全ての選手がTTバイクではなく通常のバイクを使用していたのが印象的でした。流石に10㎞で800m登るステージだと軽さが優先されるようです。

ここでもアルメイダの走りは圧巻で、デカトロンAG2Rラモンディアールのフェリックス・ガルに24秒、ここまで総合首位だったアルケア・B&Bホテルズのケヴィン・ヴォークランには1分40秒もの圧倒的な差を付け最終日に逆転で総合優勝を果たしています。昨年は年間で2勝だったアルメイダですが、今季はここまで9勝と絶好調です。このアルメイダがポガチャルをアシストするのですから、今年のツール・ド・フランスはポガチャルが圧勝しても不思議はありません。

この大会はチームのミスをエースが見事にカバーして見せたUAEチーム・エミュレーツですが、個々の選手の力は上なので、チームの纏まりが問題になると見ています。ツール・ド・フランスではジロをサイモン・イエーツで征して見せたヴィスマ・リアースバイクのチーム力が最大の壁になるはずですが、ポガチャルが出場するレースなのでその心配は無いはずです。