CPNN(平和の文化ニュースネットワーク):国連の「世界の子どもたちのための平和と非暴力の文化国際10年」(2001~2010)

生命尊重・非暴力・助け合い・良く聞く・地球環境・寛容と連帯・男女平等・民主主義の記事を配信します。

内田雅敏1994『「戦後補償」を考える』講談社現代新書

2007-07-10 18:05:11 | 
ペンネーム:デコ

なぜ選んだか?:
私はゼミで「イラク戦争・湾岸戦争におけるアメリカ政府の行動」というテーマを中心に活動しますが、アメリカを考える前にまず日本についての知識が必要であると考えました。ただ単に「日本は戦争に負けた」「原爆を落とされた」などではなく、逆に戦時中や戦後、日本が他国に対して表面では決して語られる事のないひどい行為についてもっとよく知っておかなければならないと感じ、そしてその事実を踏まえた上でアメリカや諸外国と比較してみたいなと思いました。それと、ゼミの仲間がこの「戦後補償を考える」の本を推薦してくれたのでよし読もうと思い、大学の図書館で借りてきました。

本の内容:4つの題から構成されています。
①十五年戦争(アジア・太平洋戦争)の経過。この章では戦争経緯を簡単に紹介している。
②戦時下の日本がやったこと。住民虐殺・強制連行・強制労働・軍票問題の真実。
③戦後処理と賠償・補償問題。日本の賠償と諸外国の賠償の違い。
④戦後補償の核心と歴史認識。反省なき行動と発言、本当に求められているのは何か。

感想・意見:
自分の知識がなかったこともありますが、恐らく公にはさして語られることのない事実が記載されていて衝撃を受けました。読んで考えさせられたのは日本は広島・長崎に原爆を落とされた「被害国」ではあるが、同時にアジアの国々を侵略し朝鮮人・中国人を強制連行・強制労働させ、従軍慰安婦問題、南京大虐殺などを実行した「加害国」であることを忘れてはならないということです。アメリカとの戦争と考えがちですがアジアの国々に対して酷い事を行っていたのです。しかし日本は前者のことだけに焦点を当て、後者のことは忘れてしまっているのではないか。いや「忘れさせる」ようにしているのではないかと。

この本が発行された頃、一部の人物が「南京大虐殺やアジア侵略は無かった」と発言していた始末です。結局日本の戦争責任は曖昧にされたままになっているのではないでしょうか?都合の悪い事実は消したいものですが、しかし過ちは歴史として永久に残るものだと思います。ユダヤ人を大量虐殺したヒトラー政権下のドイツとは戦後補償の対応に差が出ています。なかった事にするのではなく、こういうことがあったのだと後世に語り継ぎ、今後二度と起こらないようにしなければならないのです。

この問題は決して謝って済むような事ではありませんが、「加害者」としてアジア諸国への表面的な謝罪ではなく、被害を受けた全ての人へ心から謝罪しなければならないでしょう。

●メディエータのコメント
戦後処理は、お金の賠償だけでなく、加害者と被害者の和解が成立してはじめて確固としたものになります。真実和解を求めてのとりくみが、今でも必要なのです。

●ピースキー:(1)生命の尊重 (6)寛容と連帯

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』( みすず書房)

2007-07-10 17:57:01 | 
ペンネーム:in

私がこの本を選んだのは、差別に関する内容である事と、受験の時に読み、強く心に残った本だったからである。

内容: この本の著者であり、ユダヤ人であるヴィクトール・E・フランクルが大戦中、強制収容所内に収容され、収容所での体験が書かれている。しかし、ただの体験記でなく、一人の心理学者としての視点から見た収容所内での体験記である。

感想: 本の背表紙に「言語を絶する感動」と書かれているが、この本を読んでいる時も、読み終わった後も、私には感動というものは産まれなかった気がする。
それはこの本を読むのが大学受験のためだったからかもしれない。
勉強をするために読むのであって、時期的にも感動とかそういうものが必要なかったからかもしれない。
別に選択して捨てたわけではない。
だが、それだけではこの事を説明しきる事は出来ない様にも感じる。

私に産まれたのはinterestingという感情。
人間学…人間というものを学んでいたような気がする。
著者も言うように、我々が知らなかった人間がここにはいる。
目の前にある死を選ばずに、不確かな希望を信じて生きる、強い人間。
神を信じ、境遇を受け入れる、崇高な人間。
私は、この本にいる、まだ私の知らない人間が知りたくて夢中で読んだ。
そうでなければ私がこの本を2日で読むという事は出来なかっただろう。
(一冊本を読み終えるのに、一週間はかかる。)
いや、生々しさを考えれば読むことすらできなかったかもしれぬ。

私が抱いた感情もふまえ、やはりこの本には感動という言葉は相応しくない。
この本を表す言葉として、より近く、確かな表現は「感銘」という言葉ではなかろうか。
感動という言葉はそこで、その場所で途切れてしまいそうな、「一時」を表すように聞こえる。
だが、感銘という言葉は、感動より深く、いや私から発せられる感情が置き去りにされ、私自体がそれに震わせられ、私が変わらずにはいられないような感覚…このような意味で感銘というものを述べるのなら、私も間違いなくこの本に感銘を受けた一人と言えよう。

これまで多くの人が「感銘」を受けたからこそ、この本は読まれ続けている、と私は思う。

●モデレーターのコメント
私も学生時代に読んで感動した本です。
人間の心理の暗部と希望について考えさせられました。

●ピースキー: (1)生命尊重 (6)寛容と連帯

王敏(ワンミン)2005『中国人の愛国心』PHP新書

2007-07-10 17:50:43 | 
ペンネーム kan

教育基本法改正で「愛国心」が問題になっているとき大学生協でこの本を見つけ、面白そうだと思ったので紹介します。

中国において、「愛国心」は大人になるための条件であるとともに、人間にとってきわめて価値の高いものであると考えられている。

本書では、日本人とは違う精神構造を持つ中国人の心を読み解く5つのキーワード(「愛国」「歴史」「徳」「中華」「受容と抵抗」)で中国人の愛国心を7つの章に分けて分析している。

5つのキーワードの1つである「歴史」について、中国人はなぜあれほどまで 「靖国問題」などの歴史的問題をしつこく持ち出すかというと、日本人とは「歴史」に対する認識の違いがあるからである。日本人にとって「歴史」はあくまでも教養としての位置づけあるのに対し、中国人には生きるためのマニュアルのように捉えられている。中国人にとって「歴史」とは過去の出来事ではなく、現在と密接な関わりを持つものとして受け止められているのだ。

又、最近の中国の変化なども書かれている。近年の日中間では、文化交流が盛んであり、日本の音楽やファッションに憧れを抱く若者が増え、日本のテレビ番組やアニメに日々接っすることで、日本に対する違和感が減ってきている。

著者は最後に、「今後の日中関係の鍵を握るのは民間交流ではないかと思う。 民間が交流していけば、政府間がどれだけギクシャクしていようと問題は解決できるはずだ。」「文化交流を通じて、両国国民の心の交流がさらに進むことを願ってやまない。」としている。

この本を読み、色々な交流を通じてお互いに理解し合うことで、日中間の問題だけではなく様々な問題が解決できるのではないかなと思った。

●モデレーターのコメント
中国の人々の声を集めた本として、姜 著 佐治俊彦監訳 周 訳 2007『南京市民はいま、日本をどうみているか』(草の根出版会)が最近発行されました。あわせて読んでみてはどうでしょう

●ピースキー:
  (4)傾聴、(6)寛容と連帯

全国ろう児をもつ親の会(編著)2003『ぼくたちの言葉を奪わないで!』明石書店

2007-07-10 17:37:44 | 
レポーター:はんばーがー

レポートにあたり、まず、大学の図書館蔵書で検索するときにこだわったことは、・発行年が最近・だということ。なぜなら、ろう文化に対する知識、見解は少し前とは大幅に変わってきてるからです。そして、選んだ本がこの『ぼくたちの言葉を奪わないで!』です。

内容的には、

1,ろう児の人権宣言
2,ろうとは?
3,ろう教育の現状
 ◆用語解説
4,今後の方向性
5,申立趣旨

と、なっています。

自分の中でのキーワードは[手話]で、プロゼミでのグループは[傾聴]なのですが、
この本では、傾聴のために欠かせない「知識」、ろう者の、または、ろう者を子に
もつ親の訴えかけが含まれています。

そして、Q&Aなども盛り込まれており、偏見をもっていたことや、知らなかった世界
が開けると思います。

「手話」に対する知識というよりは、「ろう文化」に対する本なのですが、
ぜひ読んでみてください!

●モデレーターのコメント
 すべての人々が情報にアクセスするコミュニケーションの権利も大事な人権ですね。

●ピースキー:
 (4)傾聴 (6)寛容と連帯

尾崎礼子2005『DV被害者支援ハンドブック ~サバイバーとともに~』朱鷺書房

2007-07-10 17:18:27 | 
レポーター くらげ

1、 この本を選んだ理由

 この本の発行は2005年と新しく、アメリカのオハイオのDV連合で実際にDV支援者の教育に取り組んでいる著者が世界でも進んでいる最新の現場で使われている「知識」と「技術」と「心得」が詰まっている本であり、DV(ドメスティック・バイオレンス)という誰にとっても他人事ではないこの暴力について、支援者のみならずあらゆる人々にとって読みやすい言葉で書かれた本であることから、多くの人に読んで頂きたいと思い紹介することにしました。

2、 本の内容

この本は題名の通り「DV被害者支援ハンドブック」であり、DVに関わった仕事をしている人も全くDVを知らない人もDV被害者によりよいサポートが出来るようになるための本です。

まず、本はこの本の中においての「ことばづかい」から入り、すでにDVの支援に関わる人間にも全くDVというものを知らない人でもこの本を読み進めることが出来るようになっています。第1章から第4章にはDVに関わる前にDVを理解しやすいために支援者に必要な「考え方」と「知識」が書かれており、第5章と第6章では支援者に必要な「技術」が書かれています。第7章には日本では被害者対策よりももっと遅れている加害者対策について、アメリカで実際に行われているものを紹介しています。最後の第8章は支援者が落ち入りやすい「バーンアウト(燃え尽きること)」や「二次トラウマ(クライアントの経験に触れることで支援者にトラウマ症が現れること)」についてとそれらを防ぐための方法が書かれています。

3、感想・意見

この本は副題に『サバイバーとともに』という言葉があるように誰よりも「サバイバー(DVの被害を受けている人)」の目線に立って作られている本です。この本はここで使っている「サバイバー」という言葉についても、『なぜ「被害者」ではなく「サバイバー」という言葉を使うのか?』という事やそこにある考えなどを説明することから入るようなとても「やさしい」本です。

しかし、これは「やさしい」本と言いましたが、「簡単」という意味での「やさしい」ではなく、「サバイバー」という言葉や「家父長制」といった言葉を既に知っている人に対しても著者はその言葉の誤解や誤用、そして、その誤解などによって生じる二次被害を考え、より、「サバイバー」を傷つけることの無い『考え方』や『ことばの使い方』を提案していることから、「やさしい」本であると言えます。

支援者はもちろんのこと、支援者だけでなくDVの勉強をしたこともないような人の『常識』をほどき直し、「サバイバー」にとって何が本当に一番いい接し方であり、支援であるのだろうかということを教えてくれる本であり、自分の中にある先入観などにも気付かせてくれる本でもあり、DVなどに限らず様々な支援(カウンセリングや相談員、シェルター運営など)に応用の利き、身近な人からのDVの相談にも役立つ、ぼくが本当にお勧めする本です。

ひとつの問題を解決するのに、「技術」の前に「知識」が必要であり、「知識」の前に「こころ」が必要である。ということを考えさせ、感じさせてくれるよい本なのでDVについて感心がない方もぜひ読んでみてください。

●モデレーターのコメント
 ドメスティックバイオレンスは、身近な暴力ですね。そのような暴力を被害者の立場に立って取り組むのは、当事者の生活と人生をよりよいものにしていく活動であると共に平和の文化をきずく大事な活動だと思います。

●ピースキー: (2)非暴力 (7)男女平等 (4)傾聴