鳥が飛べないという事は死を意味する。
しかし今回紹介する鳥は運の良さと生きようとする力が重なって生き抜く事が出来たのである。
今回の主人公はカラスではなくてこの「オオセグロカモメ」である。
5月中旬にこのカモメは翼を切断し痛々しい姿で現れた。
多分電線か何かに思いっきり激突してしまったのだろう。
ぶら下がっていた翼はいつの間にか取れていた。
後から聞いた話では心配した人が切り取ったという事である。
本来なら許可なく捕獲するといけないのだが機能していない部分を切除したのは良かったのかもしれない。
いつも一人ぼっちだから「ロンリー君」と名付けた。
ご覧のように左の翼がほとんどない。
この状態なら飛べないのは明らかである。
秋になりカモ達も姿を消してしまい池にはロンリー君だけになる事もしばしば。
立入り禁止もへっちゃらだね。
人工の池は冬になる前に水が抜かれる。
水がなくなった池底にはたくさん食べ物がありそれをお目当てにカラス達が集まって来る。
これはボソだからロンリー君にちょっかいを出したりはしない。
ブトのカモメの関係は川に行くと良く分かる。
本来ならカモメの方が遥かに強いのだがロンリー君は飛んで逃げる事が出来ないからひたすら走っていた。
あとは嘴で威嚇して追い払っていた。
ブト君がこうして低空飛行をしてからかっている事も多かった。
そんな姿を見て「カラスに突かれて死んでしまう」と言っている人がいた。
いくら飛べないからと言って突き殺されるなんて事はありえないんだけどね~。
ブト君だってとても用心しながら近寄っている。
本当にカラスを危険だと認識しているのならこんなにのんびりはしていないだろう。
そういう所を見ないで騒ぐのは止めてね。
時には番で様子を伺っている事もあった。
しかしこのまま放って置く訳にも行かなかった。
池底が凍り付いてしまい中に潜んでいる昆虫うなどを食べる事が出来なくなった。
可哀そうと言っている人達が魚やパンを与えていたので少しは腹の足しになっていただろう。
こんな風に空を見上げている姿を見ると悲しくなるよね。
本来なら空を悠々と飛んでいるのだから・・・・・。
役所に相談をして「ロンリー君救出作戦」を決行する事にした。
作戦は至ってシンプルだ。
捕まえて川へ放鳥するだけである。
池底が凍り付くのを待ち2回目の挑戦で捕まえる事が出来た。
箱に入れて川へ出発。
そして川へ放鳥するとキョロキョロしながらまるで思い出しているように見えた。
早速気持ち良さそうに水浴びをしていた。
ロンリー君は約7か月間飛べない状態で都市公園の人工池で暮らしていた。
これが川だったら捕まえる必要もなかったのだがここでは放って置けば凍死してしまう可能性もあった。
水鳥は凍り付いた地面にいるよりは水に浮かんでいる方が暖かいのである。
ロンリー君を放鳥した場所は食べ物も隠れる場所もあり他にもカモメやカモが越冬している最高の場所である。
一生飛べないけどここで元気に暮らして欲しいと思いながらロンリー君とお別れをして来たのである。