







たった9ページのマンガのエピソードの中に
散りばめられた少年のひたむきな姿。
コマとコマの小さな隙間にも垣間見える
自分自身を奮い立たせる勇気。
少年の心の成長物語。
先週の金曜日。
3月18日のテレビアニメ『ドラえもん』。
多くの掲示板やブログで《怒り》と《嘆き》が飽和しています。
『ドラえもんに休日を ? ! 』は、
素晴らしい原作を汚す様な改悪ぶりを晒してしまいました。
原作の解釈とあまりにも食い違う脚本は、
全く別の物語へと変貌させたばかりか
原作者の想いを込めたメッセージを濁してしまいました。
安易にお笑いギャグを連発する描写は空回りして、
虚しさだけが残るアニメーションでした。
放映から一週間が過ぎ、
何故今日この記事を書いたのかは、僕にもよく解りません。
この記事にいったいどんな意味があるというのかも…。
ただ、
原作を知らずにあのアニメーションだけを観た人に
故藤子・F・不二雄先生が描きたかった事を
少しだけでも理解して欲しかったのだと思います。

『ドラえもんに休日を ! ! 』
てんとう虫コミックス第35巻に収録。
※原作のタイトルに【?】マークはありません!
◆ストーリー◆
いつも面倒を掛けるのび太に
「日曜も祝日も夜も昼も、
気の休まる時がない。」と漏らすドラえもん。
ドラえもんのそんな苦労に気付いたのび太は、
「よし! 明日の日曜は、
まる一日ドラえもんの休日にしよう ! ! 」と提案する。
タマちゃん(ネコ友達)とハイキングに行ける事を喜ぶ反面、
やはりのび太の事が心配なドラえもんは、
「どこにいてもとんで来る。」と【呼びつけブザー】を渡す。
意地でもブザーを使いたくないのび太は、
ジャイアンやスネ夫たちの前で一大決心してみせる。
「何事が起きようと、
ぼく自身の力で切り抜けてみせる!」
あの手この手を使って
ブザーを使わせようとするジャイアンとスネ夫。
降りかかる災難に負けそうになり、
何度もブザーを使いそうになるのび太でしたが、
「だめ ! !
ドラえもんには今日一日、
ゆっくり休日を楽しんでもらうんだ!」
「どんな事があってもこれだけは……。」と歯を食いしばる。
災難に遭うのび太を追いかけながら
ジャイアンとスネ夫は、
のび太の強情さに感心するやら呆れるやら。
そしてまた、
家に帰ろうとしたのび太を襲う新たな恐怖。
見知らぬ二人の悪ガキたちに捕まってしまったのび太は、
「もうだめだ。ドラえもんを……。」とブザーをグッと握り締める。
その時脳裏に浮かんだ、休日を楽しむドラえもんの笑顔。
「絶対に使わないぞ ! !
さあ~、やるならやれ ! ! 」
なんと!
のび太はブザーを踏み潰して壊してしまう。
その一部始終を陰から見ていたジャイアンとスネ夫は、
「あいつにあんな根性があったとはな……。」
「のび太、力を貸すぜ!」と助太刀する二人。
「いやあ、楽しい一日だったよ。」
休日を満喫して戻ったドラえもんはのび太に尋ねた。
「大丈夫だった?」
座布団を枕にいつものスタイルで寝転ぶのび太。
「あたりまえさ!
平和な一日だったよ。」
誇らし気に語らない少年が手にした勲章。
それは、自分すら気が付いていない《心の財産》。
少年の心の成長物語



今夜放映された映画『のび太のワンニャン時空伝』を最後に、
1979年4月から2005年3月までの26年間、
『ドラえもん』を支え続けて来た声優さんたちの声は、
ブラウン管から流れて来なくなります。
僕が9歳の頃から観ていた
大山のぶ代さんたちが奏でるハーモニーは、
もうブラウン管から流れて来なくなります。
やはり心に空いた穴は決して小さくはありませんでした。


◆『藤子不二雄』関連のエントリー◆
指摘したいところはたくさんありますが、
せめてブザーだけは押してほしくなかったです…。
もう今までのドラえもんたちの声は聞けないんですね。
まだ実感がわきません…。
コメントありがとうございます。
降りかかる災難に歯を食いしばりながら
乗り越えたのび太の姿を想うと、
あのアニメーションの中で《ブザーを押す》という事が
一番変えてはいけない事っだったはずなのに…。
悲しい最後のエピソードになりました。
4月始まる新しい『ドラえもん』は、
原作を素晴らしさを意識して製作される様ですので、
期待して待ちたいと思います。