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ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

前登志夫の世界~木々の声 4/2から奈良町にぎわいの家 蔵にて

2020-04-01 | 短歌
今年も短歌の師、前登志夫を偲ぶ展示イベントを開催します。
日本を代表する歌人、前登志夫は2008年4月5日に亡くなりました。
桜のころに逝去された先生。春は前登志夫を偲び、歌の力を新たに思う季節でもあります。いつもバタバタしていて、歌の世界から離れていますが、
この時期、こうした展示イベントをすることで、先生の歌や言葉はやはり、今の地球に!?とても必要だなと思います。前登志夫の歌とその思想は、世界の諸問題の核心を考えさせてくれるのです。なので、アーカイブを見て振り返る、文学史上の人物というだけでなく、もっと私たちの身近なところにあり、生きる力と知恵をその世界から得ることができればよいなと思います。そのためには、何かしらの「翻訳」が必要なのかもしれません。英語だけでなく、日本語の方面でも。
とにかく、先生のことを、短歌を知らない方たちも、わかりやすく広く、まずは見ていただけたらと、2010年より、展示や朗読、昨年は校歌コンサートも行ってきました。今年は原点にかえり、短歌二十首に(選歌は根来譲二さん、歌意は喜夛隆子さん…共にヤママユ)、長男、前浩輔さん撮影の奈良南部の写真を展示します。鮮やかな写真に思わず、目を奪われますが、どうぞゆっくり、歌の世界を鑑賞下さい。
なお、以下のチラシの前家の槇山も?!展示しています。
コロナウィルス関連でお出かけしづらいですが、展示企画は開催していますので、お近くまで来られたら、ご覧ください。尚、奈良町にぎわいの家は、玄関から奥まで、開けっ放しで、気密性もなく風通しもよいですが、くれぐれもコロナ対策に気を使いながらと思います。






八千草薫さん~短歌の思い出

2019-10-29 | 短歌
女優、八千草薫さんの訃報のニュースが流れました。現在も放映中の、倉本聡渾身のドラマ「やすらぎの郷」を見ながら、どうしてこんなにいつまでも透明感のある明るさが放てるのだろうと感嘆していました。
9年前、私の自作短歌がCMで半年ほど放送されましたが、その歌を読んでくだったのが、八千草薫さんでした。当時、三國連太郎さんと八千草薫さんは、「皇潤」のCMに出演されていて、日本のダイナミックで美しい風景が印象に残るCMでしたので、皆さんも記憶にあるのではないでしょうか?そのシリーズの一貫で、9年前、丁度、奈良は平城遷都1300年祭でしたので、奈良で撮影となったとのこと。奈良の風景の中で、三國さんと八千草さんが歌を読むという設定で、その短歌の依頼を受けたのです。(奈良フィルムコミッションさんからのご紹介でした。)ディレクターさんとCMの監督さんの意向を聞きながら、いくつか、歌を作り、結果、採用されたのが、以下の写真の歌です。八千草さんの声は、本当に素敵で、私の一生の思い出になりました。ちなみに三國連太郎さんの歌は興福寺が背景です。それはまたの機会に。
女優として一生を全うするのは、本当に大変なことだと思いますが、八千草さんのように、少女の可憐さを持ち、そのたたずまいが、なんともいえない空気感を画面に出せる方というのは、思い当たりません。一方で、名作「阿修羅のごとく」(脚本・向田邦子)「岸辺のアルバム」(脚本・山田太一)といった、現代を背負うようなドラマでも、その背負い方が、演技が全てというよりも、少し違う別のもの…声の質もそうですね、ご自身全体、八千草薫というミューズによって、現代の一点の時間が普遍化されていくような…。なので、ずっと見ていたいと思う、そういう女優さんでした。心よりご冥福をお祈りします。


前登志夫うた宇宙 より

2019-08-10 | 短歌
先日、お盆ということもあり、久し振りに短歌の師、前登志夫先生のお宅に伺い、仏前の先生と愛娘いつみさんに、手をあわせてきました。先生の家から見える山の風景、家までの景色…この暑さにも関わらず、その日は何とも淀みなくクリアな空気で、何もかもがはっきりと見え、「ああ、これがそう、当たり前の景色」とただ、ただ見ていました。奈良町にいると何もかもが近く、屋根に切り取られた空は小さいのです。こうした町の景色と違う山の見え方に、元いた場所に帰るような気持ちになったのかもしれません。
さて、2011年から、前登志夫を偲ぶイベントを、亡くなった4月に毎年開催しています。最初の年にホームページもたちあげ「前登志夫うた宇宙」として公開しています。その中に、歌人の喜夛隆子さんに今月の一首ということで、前先生の歌を紹介、解説していただいたコーナーがあります。短歌は難しい、と思っておられる方にもわかりやすく、しかも短い中に先生の歌のエッセンスが「ぎゅ!」と詰まっています。以下ホームページの「今月の一首」から。樹下山人と言われた、前登志夫の世界を身近にどうぞ。


八月の歌        喜夛隆子(歌人・ヤママユ) (執筆年は2011年夏)

せむすべのわれにあらじなビルマにて戦死せし兄みほとけなれば     『青童子』

 ああ、私にはどうするすべもない、戦死した兄はみ仏なのだから・・・・。作者のふかい嘆息が、しみじみと伝わってくる。暑い夏、今年もお盆が、八月十五日が巡ってくる。敗戦から六十六年目、東日本大震災の死者たちには初盆。かけがえのない大切な人を亡くした人々の悲しみや追慕の思いは、それぞれの胸にしまわれれて忘れ去られることはない。
 この一首は、戦後半世紀たった頃の、作者七十歳前後の作品である。兵役を経験した最後の世代である前は、戦地にゆかぬままに終戦をむかえた。吉野の旧家と林業を継ぐべき長男・兄が戦死したことは、両親にとっても弟である登志夫にとっても、大きな悲しみ悔しみであった。
 若い頃から晩年にいたるまで、兄や同世代の戦死者を悼む歌や、遺族の悲しみを想う歌を繰り返し詠んでいる。その中から,四十代と晩年の二首を引く。

 草深きビルマの月を消息(たより)せし兄よ死ねざるわがうつ太鼓   『縄文紀』

 生駒嶺のくらがり峠越えたりし同級生の多くかへらず       『大空の干瀬』







歌人・前登志夫 校歌コンサート 4/21開催!

2019-04-12 | 短歌
桜のころに逝きし歌人、現代の西行と言われた、昭和戦後から平成を代表する歌人、前登志夫先生を偲び、毎年、春にイベントを開催していますが、今年は校歌コンサートを企画しました。先生は奈良県内の学校の校歌の作詞をされ、今回、十三校の校歌を奈良町にぎわいの家で披露します。
歌は奈良町を中心に活動されている、高橋晴子さんとそのお仲間。指導されているコーラスの皆さんも参加。校歌が平坦にならないよう、いろんな歌い方を工夫して下さいます。また、ピアノ伴奏は、「奈良町ふぁんたじぃ」始め、舞台での歌やラジオドラマなどでいつも作曲してくださる、小宮ミカさん。
さて、その校歌のあいまに披露するのが、前先生が十代の頃に書かれた、詩集「山脈に風ひかる」です。先生は軍隊に入隊の前に、一冊の詩集を残し、故郷を後にするのですが、その未刊の詩集を、先生の短歌結社ヤママユの有志の皆さんが、昨年の没後十年にまとめてくださった、大変、貴重な資料です。
その中に、代用教員として、地元の学校で子どもたちを教えていた、前登志夫の顔が見えるのです。今回の校歌コンサートに、子どもたちとの時間を書いた詩は、ふさわしいと思い、いくつか朗読をします。朗読初披露になりますので、どうぞお楽しみに。
また、4/6から開催中の、前浩輔氏の風景写真と、校歌の歌詞の展示もあわせて、お楽しみいただけます。奈良町にぎわいの家の蔵で展示中で、先日、
お客様が、奈良市立二名中学の卒業生だったようで、校歌を見て「ああ、前登志夫さん。私、校歌歌えるよ。」と娘さんに言っておられる女性の方がいました。校歌という身近な歌から、前先生を記憶にとどめてくださっているのは、とても嬉しいことだと思いました。
そんなこんなで、毎年?!4月は師の足跡を振り返る貴重な季節であるとともに、その実現に忙しくて目が回る、新年度でございます。
ぜひ、皆様、お越しください。

※4/21コンサートは無料・要申込み(奈良町にぎわいの家…0742-20-1917)
 展示は4/23まで。9時から午後5時(最終日午後4時まで)




歌人・前登志夫展 ~11/4日まで。

2018-10-30 | 短歌
日本を代表する歌人、前登志夫。4月に没後10年の展示と朗読&トークを企画開催しましたが、今年は秋にもと思い、町家劇場旗揚げの場所となった、奈良町の町家文化館くるま座で企画しました。
明日10/30火曜日~11/4日曜日、10時~17時まで。無料。※但し、金曜日は休み
奈良町御霊神社東へ100メートルです。
ただいま奈良は正倉院展開催中。企画運営する、奈良町にぎわいの家でもこの週末は、スタッフによる全館花展をします。また、奈良町女子大セミナーハウスも古い町家ですが、この時期は開いていることも多いとのこと。
ぜひ、町家を三軒ハシゴしながら、秋の奈良町をお楽しみください。
さて、前登志夫展では、先生が出演されたテレビ映像も終日、映します。
日頃忙しくて、中々、前先生の言葉を振り返らないのですが、今日は搬入しながら、お元気な声が映像から聞こえてきて、ちょっと胸が詰まりました。
大正15年生まれ、若いころに戦争に向き合い、戦後を生きた世代、とても大きな方でした。
そんな前登志夫を是非、体験しにいらしてください。