ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

奈良には森にうたびとがいる〜歌人・前登志夫 短歌&写真展 7/15まで

2024-07-07 | 短歌
この春に奈良町にぎわいの家で展示した、歌人、前登志夫先生の12首(選歌…根来譲二 解説…喜夛隆子)と三年前に展示製作した12首(選歌・解説…喜夛隆子)の24首の歌と風景写真が揃った展示を、奈良市ならまちセンター一階で開催中です。24枚のパネル写真が一挙に揃うと山の空気が流れてくるよう。

前登志夫・短歌&写真展「樹と山のうた」  ならまちセンター1階ギャラリー「inishie」(猿沢池から五分)
2024年7月15日(月・祝)まで開催。(7/8は休み)10:00~17:00
主催…奈良市・奈良市総合財団 
企画制作・デザイン…小野小町 写真…前浩輔

山の雰囲気にあわせて、ラックには先生の歌集を、中央に樹を仕込み(私の右腕!スタッフがしつらえました。)
机には先生の著作やこれまでのイベントの冊子を机に置きました。
先生の歌は難解ですが、短歌は難しいという方にも、喜夛隆子さんの優れた解説で、山の人生を送った稀有な歌人の歌を、楽しんでいただけます。
なお、エントランスが工事中ですが、入っていただけますので、ぜひ、ご覧ください。感想ノートもありますので、コメントよろしくお願いします。






新作短歌のこと ①YouTube「花しまい」「夏嗄れ」 ②6/30まで展示中「歌で紡ぐ彩りの四季」

2024-06-19 | 短歌
①YouTube「花しまい」「夏嗄れ」 
所属していた短歌結社を離れてから、定期的に短歌を作ることがなくなりましたが、この度、久々に新作を60首作りました。どちらも2024年5月に奈良町にぎわいの家の蔵展示企画「短歌&フォト映写展「花しまい~町家に佇む娘たち」として、既に公開したもので、演出家の外輪能隆さんが、ガーゼのスクリーンを作り、懐かしいレトロな雰囲気が蔵にぴったりで、フランスのお客様が熱心に見て下さっていました。

→「花しまい」2024年2月に公演した、奈良町にぎわいの家主催、町家全館移動演劇「花しまい」の写真から歌を詠んだものです。歌そのものは、演劇の内容にまま、即したものでなく、つかず離れずの距離感で作りました。


→「夏嗄れ」2023年の夏に当館での写真展に向けてモノクロで撮影したものに、短歌をつけました。


②河村牧子写真展「歌で紡ぐ彩りの四季」
こちらは3年前に、河村さんの写真展と私の短歌のコラボ展を開催した時の短歌です。河村さんが新たな写真とともに、色に特化した内容で新たに構成した展示になっています。奈良公園の風景写真に歌をつけました。①の短歌とは全く趣が違い、風景を見た時に、こんな視線もあるよ、といったような歌になっています。


さて、私にとっての短歌は、前登志夫先生の出会いがなければ、作歌なんてありえませんでした。けれど、よく考えてみれば、演劇の世界に入ったきっかけになった、寺山修司の戯曲は、既に、歌人として著名であった寺山の短歌のエッセンスが丸ごと入ったもので、そのセリフの声調やリズムは、まさに短歌なんです。これを若い時は意識せずに、「かっこいい」なんて思ってましたが、今、演劇と短歌のどちらにも関わることで、その理由がようやくわかったような気がしています。
純粋な短歌は、もちろん、写真も映像もなく「言葉」のみで立つものですが、私の場合、写真や映像に歌をつけるのが妙にあう、ということを今回、実感したのは、やはり「演劇」にいるからなのだと思いました。風景は既に舞台にあり、空間と言葉の距離感が演劇の作業とするなら、今回の写真から歌を詠むことは、そんな演劇の作業に近かったのです。
だからでしょうか。私は今回の60首、戯曲を書くスピードに近く速さで作ることができました。昔から、「歌が戯曲並みに速く作れたらいいのに。」と思ってきたのですが、写真のおかげで、それが叶ったようです。
また、写真の世界によって、全くちがう雰囲気の歌になるのも楽しい作業でした。
よろしければ、動画二本と6/30までの展示をご覧ください。


2024.4/5~歌人・前登志夫展「樹のうた 樹のひと」

2024-04-02 | 短歌
昭和戦後から平成時代を代表する歌人、前登志夫。毎年、亡くなった四月に企画展を開催しています。
没後16年となる今年は、原点にかえり、「樹下山人」と言われた歌人の「樹」の歌を12首選び、前浩輔さんの撮影した、奈良南部の樹の写真に歌を入れ込んだパネルを展示します。選歌は根来譲二さん。解説は喜夛隆子さん。いずれも、前先生の短歌結社「山繭の会」の同人で、これまでの企画を支えてくださった方々です。
毎回、チラシも、展示パネルも、私がデザインするのですが、デザインしながら、長男の浩輔さんは短歌とは違う分野で多忙にされていますが、やはり、山の人というか、前先生の歌に通ずる自然へのまなざしを感じます。それを私は大胆にトリミングしましたが、そうすると、拡大された樹の部分が、また独特の香りを放つような、そんな不思議な経験をしました。
先生の歌は難解ですが、喜夛隆子さんの解説もあり、短歌の世界を知らない方も、前登志夫の歌世界に近づいていただけると思います。
ゴールデンウイーク過ぎまで、展示していますので、どうぞ、奈良町にぎわいの家の蔵にお立ち寄りください。





2024.3/2まで 奈良町にぎわいの家蔵展示・大学生による「マイ・フォト短歌」展

2024-02-20 | 短歌
「マイ・フォト短歌」は、その名の通り、写真に短歌を入れるもので、文字のフォントや歌のレイアウトも含めて、写真と歌が融合すればいいなと始めたものです。いきなり「歌」を作ろうといっても、中々難しいものです。気軽に自分がとった写真からなら、もっと短歌が身近になるかなと思って続けています。そもそものきっかけは、2022年の三笠公民館主催講座でした。三回にわたって指導しましたが、以下、その時の様子が公民館のHPにありましたので、見ていただけます。→
こんな講座ありました(マイ・フォト短歌) | 奈良市生涯学習財団

こんな講座ありました(マイ・フォト短歌) | 奈良市生涯学習財団

奈良市生涯学習財団

 

さて、今回の展示ですが、私自身がたった一回しか指導に伺えず、個別の歌のやりとりも中々、難しい中、なんとか皆さん、形にしてくださいました。若い皆さんの眼差しと言葉、ぜひ、ご覧ください。
以下、その展示の冒頭にある、天理大学社会教育学科、杉山先生の言葉を掲載して、展示の紹介とさせていだたきます。

  「マイ・フォト短歌」の展示にあたって 
  
  天理大学社会教育学科の杉山・田中研究室は、奈良町を はじめとする地域での実践と大学での教育をつなぎ、一人ひとりの学生の学びと成長を支えてきました。
「マイ・フォト短歌」との出会いは、2022年に奈良市三笠公民館が開講した講座 (講師…小野小町 (奈良町にぎわいの家プロデューサー) で、お手伝いしたのが始まりです。写真と短歌によって、自らの経験を振り返り、その意味を表現して共有し、次の一歩を踏み出す力をみんなでつくっていくことに、教育活動としての魅力を感じたのです。
 それ以来、小野小町さんのご指導をいただきながら、年度末の振り返りに「マイ・フォト短歌」に取り組んでいます。その醍醐味は、仲間同士の支え合いを通じた「対話」を通じて作品をつくっていく過程にあります。今回の展示作品も、互いの記憶や思いを聴き合い、語り合う中での「学び」を通じて準備を進めてきました。今回の展示が、ご覧いただいた皆様との「対話」のきっかけとなったら嬉しいです。ご意見、ご感想をぜひお聞かせください。 今回の展示を企画、実施してくださった関係者の皆様に、 心からの感謝を申し上げます。                
                                             天理大学  杉山 晋平


前登志夫没後15年企画 奈良町にぎわいの家

2023-04-05 | 短歌
2008年4月5日、82歳の生涯を終えた、歌人、前登志夫。桜のころに亡くなった歌人は、まさに西行の「願わくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ」に重なります。
今年は没後15年ということで、奈良町にぎわいの家では、4/1より蔵で展示、また22日には、奈良女子大学教授の磯部敦先生の講演もあります。
前登志夫の創作が、短歌でなく、「詩」から始まったということは、特筆すべきで、既に、師の主宰した「ヤママユ」誌上で、門下の喜多弘樹さんも書いています。今回、若き日に交流のあった、奈良女子大学名誉教授の横田俊一氏(故人)の旧蔵資料からの展示です。
当時の詩の言葉は、後の短歌作品のテーマやモチーフになっていて、とても興味深いものです。また、定型でないからこその、言葉の鋭さ、自由さも感じます。
また、講演をしてくださる磯部先生が発見した、30代半ばの前先生が書いた童話「ポポロじいさん」の朗読も講演の後にします。平易な言葉ながら、前登志夫の芸術論!がみえて、聞きながら、うるっとしてしまいました。私は晩年10年間の先生しか知りませんが、若いころ書いたものに、再び会える喜びを、今回の企画で特に感じています。そして、若いころから、全然、ぶれていない先生の世界に、その凄さを改めて感じました。
前登志夫は、すごいです。何がって…それをわかりやすく伝えるのが、私の役目かなと思っています。時間をかけて、そちらもしていきたいです。
奈良町の桜も散ってきましたが、ぜひ、奈良町にぎわいの家の蔵に、若き前登志夫のことばに会いにきてください。
なお、22日の講演と朗読は、要申し込みのため、奈良町にぎわいの家まで電話かメールでお願いします。