ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

小町座公演「母帰る」「五輪ものがたり」レポート

2019-12-21 | 小町座
小町座公演終わってから、もう三週間…。皆様、ご来場、ありがとうございました。
今回の公演はいろんな事情で、出演者全員が揃ったのが、本番前日の午後でした。もちろん、それまでに稽古しているとはいえ、現場のホールで
全員で揃うのが前日というのは初めてのこと。よく本番が開いたものだと振り返っています。キャストの努力を誉めたいと思います。演技内容は、見ていただいたお客様のそれぞれの声が全てですが、アンケートからは「脚本、演技」の項に皆さんの○が多かったです。
●「母帰る」→喜劇で書いたつもりが、一週間前になっても笑えず、直前、キャラクターを変え…云々…と稽古が大変だったことは既に書きましたが、小町座で初めての、時空が飛ばない?リアル劇は、ストーリーの内容がよくわかり、お客様もとても優しく?!笑いもあり、楽しんでいただけたようです。私はいつも一番後ろから見ていますが、今回、40代からシニアの男性が多かったように思いました。ですので、ある意味、これはお客様としてシビアだなと思っていましたが、ストーリーを楽しんでいただいている様子を感じました。声を出して笑ってくださるのは、女性で、舞台上の皆は、どれだけ励まされたかと思います。観客席の空気がまさに舞台を創るんですね。
●「五輪ものがたり」→今回、舞台美術を考える時に、プロジェクションマッピング的なことができたらなと思い、白いキューブを置き、その形にはまるようにデザインしました。「五輪ものがたり」は一人芝居を三人のキャストがするので、映像でサポートをとも考えてのことですが、これが割とうまくいきました。私と同じ、それより上の世代の方たちからは「当時のことを思い出した。」「札幌冬季五輪のジャネット・リン、覚えてる。」など、ご自分の五輪体験に重ねて見てくださったようです。
さて、その「五輪」ですが、一般的に「五輪」はもちろん、オリンビックのことですが、この芝居では、①戦前の五輪、②五十年前の東京、③そして二つの冬季五輪、札幌、長野の時代と自分の人生を語る、④令和の大学生がサークルで五輪映画を作る、という構成ですが、もう一つの「五輪」の仕掛を作りました。それは登場人物が持っている、実際の「輪」です。戦前の思い出を語る老婦人の「輪」は、①「毛糸で編んだ夕日」(出征する叔父に持たせたいと編んだが、空襲の火の粉で焼けて穴があいた)、戦後高度経済成長期の金の卵世代の婦人の「輪」は、②「干し柿」(福島の家の庭の柿。つないだ輪になっている)、冬季五輪を知る女性の「輪」は、③「布のリース」(昔、鼻緒職人だった父が作ったもの)、令和の大学生の「輪」は④「ドーナツ」(南米から出稼ぎに来ている家庭の子どものために作った)なので、舞台には最後、四つの四人の「輪」が登場します。でも四つだと「五輪」になりません。最後の五つ目の「輪」は…。
お客様からからこんな声を聞きました。「四つ輪が出てきて、五つ目は?どうなるのかと思っていたら、なるほど、そうかとびっくりし、納得しました。」
以下の舞台写真に五番目の「輪」があるので、見てくださいね。
最後になりましたが、お花の御礼を。
吉本興業ホールディングスの大崎洋会長様、ありがとうございました。30年前に、吉本発子どもミュージカルを書かせていただきました。まるでこの間のようです。(…当時は、ダウンタウンの番組のミーティングにも参加したりもしました。)
華やいだ受付になりました。心より御礼申し上げます。
また、奈良大学の上野誠先生には、祝電をいただきました。直筆の温かいメッセージ、ありがとうございました。
そしてご覧下さった皆様、本当にありがとうございました。演出する体力がいつまで続くかとわかりませんが、しっかり、オリジナル作を書いて形にしていきたいと思います。これからも、どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ。
「母帰る」

・母(赤いドレス)の二十年ぶりの帰宅で家族は…。

・父や娘たちの秘密が明らかになり、勘違いも含めて大騒ぎに。
「五輪ものがたり」

・老婦人の語る戦前の東京。

・金の卵として福島から上京した少女の回想と、福島の「今」。

・バブルを体験した世代の冬季五輪の思い出。

・五つ目の「輪」。