ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

森川杜園企画第五弾!「狂言師・森川杜園」

2019-07-06 | にぎわいの家・奈良関連
奈良町にぎわいの家の二軒隣に住まいした、近代を代表する彫刻家、一刀彫の名人、森川杜園。5年前のにぎわいの家の開館時より、奈良町ゆかりの杜園企画、今年は5回目。毎回、大津昌昭先生の著書『芸三職森川杜園』より、朗読劇を構成し披露しています。「今年は狂言としての杜園をまとめておきたい気がする。」と大津先生。今回は、狂言師としての杜園に絞っての企画としました。朗読劇の最後は大津先生がお声かけ下さり、狂言も鑑賞できるというスペシャル企画となりました。
さて、毎年この時期に、杜園企画の劇を書くため、大津先生の『芸三職森川杜園』を読み直します。今回は狂言のシーンを構成し、そこにナレーション等を加えていきますが、原作のセリフが優れているので、構成するのが楽しい。セリフがまま、演技論、芸術論なんですね。杜園が狂言の稽古で「辛抱、辛抱!」と苦労しています。その折に師匠がこう言います。「「辛抱は、我慢だけやないやろが。あんなふうに演じたい、こんなふうに演じたいと、夢をもって辛抱するんやろが。そんな夢と辛抱が競り合うて、芸が磨かれていく。余分な力が抜けた自然の技へとな。」…劇作家としては、今回も沢山のこうした大津先生のセリフの中から、大きな優しさと強さを幾度となく感じました。こんな風に励まされたら、つくづく頑張れると思います。
さて、出演は昨年立ち上げた奈良町町家劇場の皆さん。今回も私が時間が取れず、全部で4回、8時間の稽古…。にも関わらず、本番の出来は良かった。当日の6/30ですが、奈良町にぎわいの家は、暑さのため、全て開け放っていて、しかも雨音が強く、天井も低い町家…。演じるのには最悪のコンディションでした。それに動じず、皆さん堂々としていました。今回、出演者一人一人が幼年期から七十歳までの杜園になりました。狂言の稽古のシーンなど「あほ!」「ばかもの!」など女性らしい?!皆さんが言ったことのないセリフも多々。登場人物は全員男性、それを女性が演じる大変さはありますが、
私には何の違和感もなく、よくされたと思います。
そして狂言ですが、シテの浦久保先生は八十歳を越えていて、普段のお話のお声は静かなのですが、狂言となると、声が張ってなんとすごい!この声聞くだけでも私なんて、長生きできそうな気がします。アドの伊川さんは、お茶の生産者として有名な方でもあるのですが、現在、浦久保先生から教えていただいているとのことですが、若々しい迫力ある声。演目は「寝音曲」。まあ、これがおかしくて寝たり起きたりの仕草を繰り返すのですが、シンプルな構造に明快な芝居、狂言の楽しさがいっぱいでした。
今回、町家ですから、畳での上演ですが、奈良町にぎわいの家は、一番広い座敷の奥に離れへと続く渡り廊下があります。この渡り廊下が能舞台の橋がかりのようで、町家の構造も発揮されました。皆さん、終日の大雨の中、よくして下さいました。
それがそのまま、アンケートの声に反映されていました。「継続して。来年きます。」「杜園のことを知らなかったがよくわかった。」「お話、劇、狂言どれも素晴らしい。」などなど…。クーラーもなく雨の音に高湿度…。私は司会のため、前に何度か出ましたが、お客様の顔がとてもよく、ああ、良かった、5年、杜園を続けてきて!と思いました。上演する側も見る側も、良い空気の交流がありました。そのことが嬉しかった。
というわけで、また来年も森川杜園…なんですが、来年、生誕200年!「オリンピックどころじゃないね。お祝いしないと。」というセリフを書いたのですが、いやいや、本当にお祝いを!ご期待くださいね。

大津昌昭先生によるお話。

奈良町町家劇場の語り。

狂言「寝音曲」

全員集合。中央の絵は杜園作!