コロナウイルスに負けるなシリーズ、16回目です。
今回は、油絵です。
李景朝『白磁のある静物』 80x99㎝
故玩館にある油絵の中で、最大のものです。
作者は、李景朝。
あまり有名ではありませんが、静かに内へ向かう絵が特徴です。
李 景朝略歴(日動画廊、李景朝展より)
1936年韓国済州道生。
- 68年鴨居玲に師事、神戸大学教育学部美術研究科修了。二紀会展初入選、以降出品。新人賞、奨励賞、他受賞(関西二紀展)。
- 80年東京紀伊国屋画廊企画個展(坂崎乙郎画廊)。
- 81年昭和会展入選招待。大阪日動画廊個展以降10回個展。
- 83年早稲田大学創立100周年記念展出品・同大学に収蔵される。現代の裸婦展入選招待。
- 84年裸婦競作展最優秀賞受賞。あかね画廊個展。
- 86年韓国新作展会招待出品、会員となる。以降出品(世宗文化会館)。つかしん西武百貨店個展。
- 88年韓国現代作家展(アルゼンチン・チボリ美術館)。
- 99年モスクワアートフェアー出品。
- 02年梅田阪急百貨店個展。
- 03年大阪韓国総領事館で個展。韓国最優秀芸術家に選ばれる。評論家協議会(最優秀画家賞)受賞。済州道知事賞(輝いた人賞)。
- 06年公州国際アートフェスティバル出品、人物集作家展(ソウルギャラリー)出品。
- 07年福岡日動画廊個展。現在二紀会同人、新作展会員(韓国)。日本美術家連盟会員。
李景朝は、若い頃、鴨居玲に師事しました。
李景朝は、師の鴨居玲ほど、暗い情念を激しくキャンバスに打ちつけることはありませんが、やはり鴨居の影響を強く受けていると思います。
今回の作品は、古い李朝箪笥の上に、アワビと李朝の白磁碗が、そして、その横に、枯れたヒマワリと芥子が描かれています。
暗く沈んだ画面の静物は、作者の心象風景を表しているのでしょう。疵ついた李朝の白磁碗は、この絵の中心画題であることはまちがいありません。
かつて、民芸の主唱者、柳宗悦は、白磁の白を朝鮮民族の哀しみの色として捉えました。白磁のはかない白さを哀しみの象徴と考えたのです。その後、柳の考えには、様々な批判がなされました。
しかし、この絵を見ると、柳宗悦や彼を李朝美術へ導いた浅川伯教、巧兄弟の慧眼は、やはり、本物であったと言わざるをえません。
この絵をみていると、故国を離れて暮らす作者の故郷への念、葛藤、そして哀しみが、静かに伝わってきます。
画面中央に置かれた白磁碗は、作者自身を象徴しているのでしょう。
コロナウィルス騒ぎで何ともやり場のない気分の時、ふとこの絵をみると、深いところにある本当の自分をとりもどすことができるような気がします。
経歴を読みますと、精力的に活動もしているんですね。
李朝箪笥や李朝の白磁碗、アワビなどの質感表現には素晴らしいものがありますね。
それにしても、故玩館からはいろいろと出てきますね!
コロナウィルスとしても、どこから攻めていけばいいのやら、迷うことでしょう、、、(^O^)
こんなマイナーな作家なら、偽物もあり得ないでしょう。鴨居玲の絵には、昔、引っかかりかけた事がありますが(;;;;^^;;;;)
故玩館には、ガラクタ、偽物、そして、ほんのわずかの本物がゴチャゴチャになってますから、ドロボーさんのみならず、コロナウィルスの目を誤魔化すには役立つかも知れません(^.^)
枯れた花と欠けた器は、見る者を静かに内省へと導いてくれます。
写真と見まがうような細密画の展覧会が近年よく話題になっています。
絵の中の白磁の器、本物を見てみたいですね。
日本人には、中国物より朝鮮の物の方に親近感がわきます。
完璧を追求する中国より、少しくだけて素朴な朝鮮物に惹かれます。
朝鮮半島の品については、またブログで紹介します。