遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

ようやく、能管、急之舞があがりました

2019年05月19日 | 能楽ー実技
バイカウツギの花が咲きました。




さて、能管の練習ですが、急之舞がやっと終わりました(まだまだ、不十分ですが)。
なんと、二年半。
一曲にこんなに長くかかってしまうとは
自分でも、よく続いたもんだという気がします。

その理由は、指し指です。
指し指とは、能管のメロディー(唱歌)に細かな修飾を施す技法です。

プロの方は、それぞれのやり方で指し指を駆使して、独自の能管演奏をしているのです。
私ごとき素人が恐れ多いのですが、師匠にすすめられ、せっかくの機会ですから、挑戦しました。

もう一つの難題は、急之舞です。
急之舞は、能の舞の中で、最もテンポの速い曲です。
ものすごいスピードで指を動かさねばなりません。
そこへ、さらに、指し指が加わるのですから、もう、人間ワザとはとても思えません。


能と急之舞

急之舞が用いられるのは、主として、道成寺と紅葉狩りです。
どちらも、前場の美しいシテは、後場では、般若の面をつけた鬼女となります。
急之舞は、変身の象徴でもあるのです。


能・道成寺


                門水筆 「道成寺」(前場)
           伊勢門水:1859-1932、狂言師、日本画家。

能・道成寺は、道成寺縁起に書かれた事件から、400年以上後の道成寺が舞台です。
(前場)
いわくありげな白拍子が、女人禁制の道成寺を訪れ、鐘の供養のためといって、舞います。
白眉は乱拍子。
シテの緊張した静寂。長ーい間合いを破る小鼓方の掛け声と鼓の音。そして、さらに続く、異様な緊張と静寂・・・・小鼓とシテとの息詰まるような緊張感の後、突然、急之舞となり、激しいテンポのリズムに変わります。

「♪山寺のや 春の夕暮 来てみれば 入相の鐘に花ぞ散りける  ・・・・・・・・ 思へばこの鐘恨めしやとて  竜頭に手を掛け飛ぶとぞ見えし 引きかづきてぞ失せにける♪」

シテは鐘の中に飛び込む ・・・・・・ 能・道成寺の最大の見せ場です。




         河鍋暁翠画(木版) 「道成寺」(後場)

(後場)
鐘が上がって現れ出でた女は、蛇に変身。
付けているのは般若の面。能装束は、蛇の鱗を象徴する△ウロコ模様。
蛇鬼は、僧たちを打とうとするが、逆に祈り伏せられてしまいます。そして、自身の炎で身を焼き、日高川の深淵へと身を躍らせ、消え入るのでした。


能・紅葉狩り

もう一つの急之舞の能は、紅葉狩りです。
紅葉の山奥、鹿狩りに来た平惟茂一行が通りかかると、紅葉の下で美女たちが酒盛りをしていて、酒宴に誘われます。思わず盃を重ねるうちに、舞を見ながら惟茂は眠ってしまいます。
優雅な中之舞は、突如、激しい急之舞に変わり、女は山中へ消えます(前場)。
後場では、惟茂が目をさますと、鬼神となった女が惟茂を襲います。激しい立ち回りの後、惟茂はこれを打ち据え、退治します。



      河鍋暁翠画(木版) 「紅葉狩り」(前場)



                これは、トランプ。


道成寺では、女の怨みがつのって、蛇になる、鬼になる。この時に、急之舞が舞われます。
紅葉狩りでは、急之舞が美女の本性を暗示しています。紅葉狩りの美女も、源経基の寵愛を受けた後、追放された女(紅葉)が、怨みをつのらせて鬼女となったという紅葉伝説に由来します。
したがって、いずれの能でも、怨念と妄執から鬼となった女を表す般若面が用いられます。



ps. 素人の能管、急之舞です。
    紅葉狩りの急之舞(中之舞から急之舞へ)です。
    よかったら、聞いてみてください。
             https://yahoo.jp/box/dedrvj





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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
No title (Duke Friedrich Ronniele)
2019-05-20 12:37:00
ナイス!!。
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No title (星 降る子)
2019-05-20 17:02:00
お能のこと、ほとんど何も知らないなりに、、読ませて頂きました。
素晴らしい古典に通じておられて、、芸事にも通じておられて、素晴らしい人生ですね。
☆ナイス
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No title (遅生)
2019-05-20 18:33:00
> 星 降る子さん
コメント、ありがとうございます。
たいしたことはないです。あまり流行らないことに首をつっこんで抜けられなくなっただけです(笑)。なにせ、世間から遅れて生きている遅生ですから(笑)。
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No title (Dr.K)
2019-05-20 20:39:00
先ずは、恥ずかしながら、「能管」って何?と思い、ネットで調べました(-_-;)
日本の横笛の一つなんですね(^-^;

さっそく拝聴いたしました。
素晴らしいですね。能楽堂に行った気分でした(^-^;
↑の解説を読んだ後にお聴きしましたので、情景まで浮かびました。
お能には、事前の予備知識が必要なことが分かりました。
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No title (遅生)
2019-05-20 21:06:00
> Dr.Kさん
コメント、ありがとうございます。
能菅、ほとんどの人が知らないと思います。私もそうでした(笑)。
でも、以外とよく使われているんですね。能、歌舞伎はもちろんですが、祭り囃子の笛も、能菅を使っている場合が多いです。誰でも知っている、番町皿屋敷でお菊さんの幽霊が出るときのヒュードロドロ・・・あれは能菅です。ちなみに、お菊さんが割ってしまった皿は、鍋島だったとか。ぶち割れでも欲しいです(笑)。
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Unknown (aichan)
2019-08-31 15:12:47
鼓も笛も拝聴させて頂きました。有難うございます。
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aichan さんへ (遅生)
2019-08-31 19:46:14
ありがとうございました。
返信する
Unknown (aichan)
2019-09-01 10:14:42
失礼致します。gooは未経験でしたが、こちらの記事を拝見したくて登録いたしました。
コメントは出きるのですが
フォロー、いいね、、などくりっくしても反映されずログイン画面になり、ログインくりっくすると
トップページに戻ります。
ゆっくりじっくり拝見したいのですが、思うようにことがすすみません。😭
返信する
aichan さんへ (遅生)
2019-09-01 11:15:56
ブログは、それぞれにクセがあって、慣れるまで大変ですね。わたしも、gooへ引っ越してきて、最初はずいぶん迷子になりました。
ごちゃごちゃしたサービス(?)はいっぱいありますが、ほとんど不要。

結論として、常に「編集トップ」画面にいれば、すべて事足りることがわかりました。ですから、いろんな操作をしても、必ず、「編集トップ」画面に戻るようにしています。
たとえば、気に入ったブログをフォローしておいたら、そのブログから新投稿があった場合、「編集トップ」画面に表示されるので、すぐに見に行けます。

ご参考までに。
返信する
鬼たち  (もののはじめのiina)
2019-10-09 09:23:48
「鬼」を検索したら、コチラに誘導されました。
                      鬼女や蛇鬼がいました。
コチラの冒頭が花の紹介でしたから、あるいは「ほおずき=鬼灯」かとアタマをよぎりました。(^_^;)


> 阿弖流為の像、どうやって作られたのでしょうか。言い伝えをもとに、想像力をはたらかせた?
https://ja.wikipedia.org/wiki/悪路王


> 歴史は勝者によって作られます。本当のところを私たちはどうやって知ったら良いのか、・・・
「鬼に角がはえトラパンツなのは❔」に触れていますが、朝廷への反体制勢力を鬼と呼び蔑視したと見ることもできます。
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/c01907595e505228a0ec2f5082799843

また、その下部に「陸奥」にも蝦夷(えぞ、えみし。アイヌを含む)について説明してみました。
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/cc53840154195f1c52eb3961ed4a2a1d



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