遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能楽資料10 現代の番綴り本(1) 観世流謡曲百番集

2020年10月06日 | 能楽ー資料

数多くの能のなかで、人気のあるものは限られます。しかし、それでも数十番はありますから、謡いもそれだけの数が普通に嗜まれるわけです。ですから、コンパクトで持ち運びに便利な番綴り本が各種発行されてきました。

先回は、江戸時代の番綴り本をいくつかとり紹介しました。

では、明治以降の番綴り本はどのような物なのでしょうか。少し整理して、数回に分けてアップします。

また、一曲のなかで謡いどころの短い部分だけを集めた小謡本については、別に書きたいと思います。

 

今回は、現行の謠本を集めた『観世流謡曲百番集』です。

11x16㎝、厚さ3㎝。平成13年刊。

 

謡が、百余曲入っています。

一番綴りの謠本、100冊と比べると、どれほどコンパクトか、実感がわきます。

 

少し大きめのポケットなら、すっぽり入ります。

 

本を開くとまず、観世流謡曲等級季節表がまずあります。

見ずらいですが、謡いの各曲それぞれを、1月から12月各月に分け、さらに、難易度によって、5級ー1級に分類し、さらに高度な曲は、準九番習、九番習へ、最上級は重習となります。「勧進帳」「石橋」「道成寺」「砧」などは重習いとなります。この表によって、曲の季節と難易度がわかります。

 

次に目次です。ずらりと曲が並んでいます。

そのうちで、例えば、「弱法師」を開くと、

一番綴り本より、少し字は小さいですが、十分に使えます。

 

このシリーズには、続編があります。『観世流謡曲續百番集』です。

大きさは、『観世流謡曲百番集』と同じ。百番集以外の謡曲、百十余曲が掲載されています。

 

この2冊で、現行の能のほとんどはカバーされます。

『観世流謡曲百番集』

『観世流謡曲續百番集』

 

非常に便利です。

謡や囃子の会、あるいは能楽会館の客席で、この百番集をもっている人は、ベテランかもしれません。「お主できるな!」という感じです(^^;

でも、お金を払えば誰でも買えます。問題は、非常に高価なこと。2冊で、福沢諭吉先生が4人以上(^^;

 

2冊の百番集は、現行観世流謠本大成版を凝縮した物です。

元となる一番綴り本、『弱法師』を見てみます。

 

まず、作者、資材、構想などの基本事項。

 

続いて、曲趣と節譜解説で謡い方を説明、

 

舞台鑑賞鑑賞で、能の進行を説明があります。

 

つぎに、重要な字句、難解な字句の説明。

 

小道具や面の説明のあと、謡いに入ります。

『観世流謡曲百番集』では、この頁の右下半分から後が、そのまま縮小印刷されていることがわかります。

 

このように、現行の観世流謠本大成版は、非常によくできています。しかし、ここへ至るには、先々回のブログで紹介した、明治期に興った謡本改訂の動きが、大きく関係していると考えられます。

次回は、丸岡桂の改訂謡本縮刷版について紹介します。

コメント (6)
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