3月30日付のNEWSポストセブン記事「新型コロナで病院閉鎖、かかりつけ医で薬もらえぬ人が増加か」の内容は、読んでいて非常に危なっかしいと感じました。
当該記事は、『慢性疾患で定期通院している男性がクリニックを訪れたところ、そのクリニックはマスク・消毒薬の在庫が切れたため1~2週間の臨時休診、男性は常用している薬を手に入れることができずショックを受けた。今後、同じ境遇の人が爆発的に増加することが懸念される』…といった内容でした。
前回、投稿した拙文でもご説明しましたが、そもそも、そのような事態に陥る可能性は極めて低いです。 「新型コロナウイルス 薬局での対応について」
たとえ外来診療が困難になった場合でも、クリニック・病院は、電話・情報通信機器を利用して通院中の患者のフォローを行い、処方箋はかかりつけの薬局に送付されます。
万が一、ポストセブン記事のように連絡すら取れない医療機関があったとしても(本当にそんなクリニックがあったのか、疑問に感じる面もありますが…)、担当の薬剤師に連絡すれば、対応について説明してくれるはずです。危機感を持つ必要はありません。
新型コロナウイルスに関しては、今後の感染拡大の状況など分からないことも多く、不安を感じる方は少なくないだろうと思います。そうした中では、不必要なことは心配しないのも大切な知恵の一つです。
慢性疾患を持っている方は、メディア情報に惑わされず、必要な注意に目を向けて頂ければと願います(対面診療できないことで病状の変化が見逃されるリスクが生じる。医師・薬剤師と連絡を取り合い、そのリスクをカバーする)。
メディアに携わる立場の方々も、不要な危機感を煽ることのないよう、落ち着いて記事を作成して下さい。よろしくお願い致します。
…もっとも、諸外国の薬局に目を向ければ、多くの国や地域で「リフィル処方箋」が制度化されており、安定した慢性疾患の患者は複数回使用できる処方箋が交付され、毎回病院に行く必要がありません。また、何らかの事情で病院に行けない状況でも、薬局で最低限の薬が交付される「エマージェンシーリフィル」の仕組みが当たり前のように、必要な施策として整備されている訳です。
もし、日本でもちゃんと、こうした制度をあらかじめ整備していたなら、「今回のポストセブンのような記事は出なかったのではないか?」「記事が出たとしても、真に受けて心配するような人はいないだろう」ということは言えたでしょう。
医師会が怒るような施策はやめておこう、薬剤師の権限が増えたところで小売企業が得をするわけじゃないし…といった政治・行政の体たらくが、回りまわって患者・国民の無理解、パニックの要因(場合によっては患者の健康被害の直接の原因)になり得ることを、多くの関係者には真面目に考えて頂きたいものです。