今月17日、厚生労働省はC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーンで見つかったと発表しました。調剤を受けた患者からの相談で発覚し、系列3薬局から偽造品計5本(ボトル)が発見されています(正規品の薬価は1ボトル約153万円)。
これを受け、ハーボニー配合錠の販売元であるギリアド・サイエンシズ株式会社は「偽造品は、ギリアドの正規取引先以外の経路から入手されたことが判明している」と発表しました。
ハーボニー配合錠偽造品について
この薬局チェーンを運営する株式会社関西メディコは、
「弊社はスズケン(ギリアド社の正規取引先)以外に、医薬品卸売販売業4社よりハーボニーを購入しておりました。すべて医薬品医療機器等法はじめ関係法規に抵触する事のない取引」(括弧内は筆者)
と説明しています。
偽造医薬品は世界的には大きな問題として認識されているものの、日本では製薬企業から医薬品卸売販売業者、医療機関・薬局に至る流通経路が高度に管理されており、安全だと認識されてきました。
医師の処方が必要な向精神薬がインターネット等で販売されている、個人輸入で購入した医薬品に偽造品が少なくない、といった危険性は指摘されてきたものの、医療機関・薬局が扱う医薬品に偽造品が紛れ込むリスクについては、ほとんど想定されていませんでした。業界には衝撃が走りました。
その後の流通経路の調査によって、東京都の卸売販売業者2社から新たに計9個の偽造品が発見され、流通には少なくとも9社の業者が介在していたことが明らかになりました。このうち3社では、複数の個人からハーボニーを仕入れていた可能性があると報じられています(許可を持たない個人が医薬品を販売すること、また卸売業者が買い取ることも違法)。
また、これまでに発見された偽造品はいずれも、箱から取り出されたボトルの状態で流通し、必ず同梱されているはずの添付文書(医療者向け説明書)が付属していなかったことも判明しています。
厚生労働省プレスリリース
C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品について 第2報
考えたくないことですが、これらの業者と取引した全国の薬局や医療機関に、偽造品が流通した恐れがあるということになります。一刻も早く流通状況を特定し、医療施設や患者の状況を確認する必要があります。
しかし、驚くべきは流通経路の複雑さです。通常、製薬企業から医療機関・薬局に至るまで、これほどの業者が関わることはありません。
ギリアド社が「正規取引先以外の経路」と表現した理由はここにあります。業界には俗に「現金問屋」と呼ばれる、主に病院や薬局から仕入れた医薬品を販売する卸売業者が存在しています。インターネット等で医療用医薬品の買取り・販売を募集するこれらの業態に、偽造医薬品の入り込む危険があったと指摘すべきでしょう。
近年、高額な医薬品が発売される傾向にあります。
昨年の9月には、ハーボニーと同じくC型肝炎の治療薬である「ソバルディ」(84錠、519万円)を、転売目的でだまし取ったという事件がありました。
高額医薬品の転売・偽造、それが実際に手元に届いてしまう危険性を示唆する兆候はあったのです。
余剰医薬品を買い取る業態は必要との意見も目にします。しかし、そもそも未開封の医薬品は購入した正規の卸売業者に返品することができます。
現金問屋を介した複雑な転売市場は、これまでも医療関係者の裏金作りや脱税といった犯罪の舞台になってきました。高額医薬品が登場し、違法な転売・偽造薬といった犯罪の危険が拡大しつつある今、現行の規制の内容・罰則に実効性が伴っているかについて、真剣な議論が必要です。
これを受け、ハーボニー配合錠の販売元であるギリアド・サイエンシズ株式会社は「偽造品は、ギリアドの正規取引先以外の経路から入手されたことが判明している」と発表しました。
ハーボニー配合錠偽造品について
この薬局チェーンを運営する株式会社関西メディコは、
「弊社はスズケン(ギリアド社の正規取引先)以外に、医薬品卸売販売業4社よりハーボニーを購入しておりました。すべて医薬品医療機器等法はじめ関係法規に抵触する事のない取引」(括弧内は筆者)
と説明しています。
偽造医薬品は世界的には大きな問題として認識されているものの、日本では製薬企業から医薬品卸売販売業者、医療機関・薬局に至る流通経路が高度に管理されており、安全だと認識されてきました。
医師の処方が必要な向精神薬がインターネット等で販売されている、個人輸入で購入した医薬品に偽造品が少なくない、といった危険性は指摘されてきたものの、医療機関・薬局が扱う医薬品に偽造品が紛れ込むリスクについては、ほとんど想定されていませんでした。業界には衝撃が走りました。
その後の流通経路の調査によって、東京都の卸売販売業者2社から新たに計9個の偽造品が発見され、流通には少なくとも9社の業者が介在していたことが明らかになりました。このうち3社では、複数の個人からハーボニーを仕入れていた可能性があると報じられています(許可を持たない個人が医薬品を販売すること、また卸売業者が買い取ることも違法)。
また、これまでに発見された偽造品はいずれも、箱から取り出されたボトルの状態で流通し、必ず同梱されているはずの添付文書(医療者向け説明書)が付属していなかったことも判明しています。
厚生労働省プレスリリース
C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品について 第2報
考えたくないことですが、これらの業者と取引した全国の薬局や医療機関に、偽造品が流通した恐れがあるということになります。一刻も早く流通状況を特定し、医療施設や患者の状況を確認する必要があります。
しかし、驚くべきは流通経路の複雑さです。通常、製薬企業から医療機関・薬局に至るまで、これほどの業者が関わることはありません。
ギリアド社が「正規取引先以外の経路」と表現した理由はここにあります。業界には俗に「現金問屋」と呼ばれる、主に病院や薬局から仕入れた医薬品を販売する卸売業者が存在しています。インターネット等で医療用医薬品の買取り・販売を募集するこれらの業態に、偽造医薬品の入り込む危険があったと指摘すべきでしょう。
近年、高額な医薬品が発売される傾向にあります。
昨年の9月には、ハーボニーと同じくC型肝炎の治療薬である「ソバルディ」(84錠、519万円)を、転売目的でだまし取ったという事件がありました。
高額医薬品の転売・偽造、それが実際に手元に届いてしまう危険性を示唆する兆候はあったのです。
余剰医薬品を買い取る業態は必要との意見も目にします。しかし、そもそも未開封の医薬品は購入した正規の卸売業者に返品することができます。
現金問屋を介した複雑な転売市場は、これまでも医療関係者の裏金作りや脱税といった犯罪の舞台になってきました。高額医薬品が登場し、違法な転売・偽造薬といった犯罪の危険が拡大しつつある今、現行の規制の内容・罰則に実効性が伴っているかについて、真剣な議論が必要です。