医療と薬の日記

医療ニュース、薬など

日経メディカル 投稿

2015-02-17 11:23:54 | 日記
インターネットサイト『日経メディカル』の記事に意見投稿したもの。


記事「疑義照会するとクビ?」に意見投稿したもの

元来、医薬分業制度には薬の専門家である薬剤師が処方監査を行うことにより患者の安全を確保する趣旨がありますが、日本の場合は医師から医薬品を引き離すことで薬価差益を追求しないよう誘導することが主な目的です。  職能としての薬剤師の存在意義を考慮していないことは、中医協委員が「医者、歯医者は信頼できる、腕がいいといった判断基準がある。薬局にはそれがない」と発言し、薬剤師委員もそれを否定しない、といった様子にも表れています。任意分業や距離制限の緩さ、報酬改定によるかかりつけ薬局の誘導を行わない等、制度面にもこの価値観は反映されており、こうした一貫した姿勢が記事のような「日本の標準的な医薬分業」を導いています。  一方で司法の場においては、医師の日常的な高用量処方を門前薬剤師が認識していながら調剤を行い、健康被害が発生した事例について、薬剤師は照会の実施のみならず投薬そのものについても責任ありとして両者の共同責任を認定するなど、疑義照会の意義など知らない(認めたくない)、あるいは投薬にまで責任を負いたくないとする医療者側とは異なる見解です。  こういった事実は残念ながら、自浄能力がないと白眼視される医療業界の体質とも合致しており、業界内で解決することは不可能です。  医療事故によるバッシングが転機となるのか、それとも厚労省による強制かは分かりませんが、医療制度に関する無知や理解不足が大きなトラブルとなり得ることを、各医療者は肝に銘じる必要がありそうです。




記事「もう一度、薬剤師に戻ってみませんか?」に意見投稿
(記事への別の投稿「薬剤師の職務はデジタル技術に代替できるとして限界を感じ医師に転職したとの意見」に対して投稿したもの)

鈴木さんのご意見に対して、横槍のようで恐縮ですがコメントさせていただきます。
薬剤師の職能はコンピュータで十分に代替できる、という意見を時折聞くことがあります。薬剤師自身がそのように発言することもあり、今回の記事のように、そういった理由から実務を離れようとする方もおられるようです。
一昨年、オックスフォード大から「コンピュータ(ロボット化)の影響を受けやすい仕事」に関するレポートが発表され、700余りの職業をランキングしています。非定型的で対人スキルを要する仕事ほど、コンピュータに代替されにくいということになりますが、例えば内科医/外科医は代替されにくい方から15位、歯科医は19位、看護師は46位です。
鈴木さん、あるいは薬剤師は単純な職務だと実務を離れる方からすれば、薬剤師は下位と予想されるかもしれませんが、実際には54位です。例えば弁護士(115位)よりも代替されにくいという分析です。
そういった誤解は、患者の訴える症状と検査値、ガイドラインのプログラムがあれば、内科医はコンピュータに代替できるとする無理解と同様だと、私自身は感じています。
また日本特有の調剤薬局のマクドナルド化も、薬剤師職能の低レベル化を助長しているかもしれません。
医療経済で語るのであれば、なおさら薬剤師の活用が議論されるべきかと思います。先進国ではそれがスタンダードです。




記事「薬局はネット販売に勝てるはず!」への意見投稿

>この国は誤解しているんじゃないか

この誤解は、狭間先生ご指摘の通りだと思います。

日本では戦後、低い高齢化率と高度経済成長といった背景から手厚い保険医療を安価に提供しましたが、結果的に薬剤師が提供する市販薬と保険医療との価格逆転を生じ、市販薬分野の衰退、その後の市場化・規制緩和へと繋がりました。

同時に形骸化した医薬分業を長らく放置したことで、薬剤師は実質上機能せず、また医療経済の観点から分業が進んだ現在も、薬剤師が機能しづらい制度設計は変わっていません。この薬局・薬剤師に対するイメージが、有識者を含む社会の共通認識となっています。
中でも、政府系会議出席者の理解度が低く、またその点について問題意識も希薄であることは、この国の薬局のあり方に大きな影を落としています。

ただ薬剤師側が主張するように、薬学に専門性が存在するのであれば、一義的にその説明責任は薬剤師自身にあります。
分業バブル以降の日本薬剤師会が、あるべき制度設計や薬局・薬剤師のあり方について主張や説明を怠ってきた、あるいは主張するに足る能力を持っていなかったことは、不遇ではなく薬剤師自身の問題であることを自認する必要があります。

大きな流れでは、医師会や医系官僚が推し進める院内調剤への回帰がありますし、直近では来月12日、規制改革会議の公開ディスカッションにおいて医薬分業の是非が取り上げられます。ディスカッションでは、処方医療機関と薬局とを物理的に分ける必要があるのか、また薬局で支払う医療費が効果に見合うものかどうかについて、「患者の利便性」から見直すことになっています。つまりは医薬分業とそのコストを否定する予定、ということです。
規制改革会議の公開ディスカッションは「世論の喚起」が目的です。ここで生じた世論を背景に、来年4月の報酬改定が議論されます。

他のステークホルダーとの争いにおいて薬剤師の負けが込むことは、薬剤師にとって利益の消失に過ぎませんが、同時に他の先進国と比較して、薬剤師が提供すべき国民利益を失わせていることについて、私たちは認めなければなりません。

本来的に、薬剤師は国民に対してその責任を負っています。