医療と薬の日記

医療ニュース、薬など

病院閉鎖で常用薬入手困難…にはなりません!

2020-03-30 15:48:17 | 日記
3月30日付のNEWSポストセブン記事「新型コロナで病院閉鎖、かかりつけ医で薬もらえぬ人が増加か」の内容は、読んでいて非常に危なっかしいと感じました。


当該記事は、『慢性疾患で定期通院している男性がクリニックを訪れたところ、そのクリニックはマスク・消毒薬の在庫が切れたため1~2週間の臨時休診、男性は常用している薬を手に入れることができずショックを受けた。今後、同じ境遇の人が爆発的に増加することが懸念される』…といった内容でした。

前回、投稿した拙文でもご説明しましたが、そもそも、そのような事態に陥る可能性は極めて低いです。 「新型コロナウイルス 薬局での対応について

たとえ外来診療が困難になった場合でも、クリニック・病院は、電話・情報通信機器を利用して通院中の患者のフォローを行い、処方箋はかかりつけの薬局に送付されます。
万が一、ポストセブン記事のように連絡すら取れない医療機関があったとしても(本当にそんなクリニックがあったのか、疑問に感じる面もありますが…)、担当の薬剤師に連絡すれば、対応について説明してくれるはずです。危機感を持つ必要はありません。

新型コロナウイルスに関しては、今後の感染拡大の状況など分からないことも多く、不安を感じる方は少なくないだろうと思います。そうした中では、不必要なことは心配しないのも大切な知恵の一つです。
慢性疾患を持っている方は、メディア情報に惑わされず、必要な注意に目を向けて頂ければと願います(対面診療できないことで病状の変化が見逃されるリスクが生じる。医師・薬剤師と連絡を取り合い、そのリスクをカバーする)。

メディアに携わる立場の方々も、不要な危機感を煽ることのないよう、落ち着いて記事を作成して下さい。よろしくお願い致します。


…もっとも、諸外国の薬局に目を向ければ、多くの国や地域で「リフィル処方箋」が制度化されており、安定した慢性疾患の患者は複数回使用できる処方箋が交付され、毎回病院に行く必要がありません。また、何らかの事情で病院に行けない状況でも、薬局で最低限の薬が交付される「エマージェンシーリフィル」の仕組みが当たり前のように、必要な施策として整備されている訳です。
もし、日本でもちゃんと、こうした制度をあらかじめ整備していたなら、「今回のポストセブンのような記事は出なかったのではないか?」「記事が出たとしても、真に受けて心配するような人はいないだろう」ということは言えたでしょう。

医師会が怒るような施策はやめておこう、薬剤師の権限が増えたところで小売企業が得をするわけじゃないし…といった政治・行政の体たらくが、回りまわって患者・国民の無理解、パニックの要因(場合によっては患者の健康被害の直接の原因)になり得ることを、多くの関係者には真面目に考えて頂きたいものです。

新型コロナウイルス 薬局での対応について

2020-03-13 12:49:05 | 日記
新型コロナウイルスの流行に伴い、病院や介護施設での感染も各地で報告されています。

私が勤務する兵庫県三木市(北播磨地区)でも、圏域の基幹病院である北播磨総合医療センターにおいて医師の感染が確認され、外来診療・救急患者の受付などに影響が出ています。

厚生労働省では、あらかじめこうした事態を想定し、『電話などで診療を行ったうえ、医療機関から薬局に処方箋をFAXなどで送信する診療手順(患者は医療機関に行かず、慢性疾患の薬を薬局で受け取ることができる)』について通知しています。

このような際、医療従事者は

『診療・患者の状態確認が不十分となり、病状の変化を見逃したりしないか』
『対面ではなく電話での診療となり、患者と医療従事者との関わり・介入が弱くなってしまわないか』

といった点に十分な注意を払い、業務を行っています。
医師・薬剤師など医療スタッフからの病状・状況聴取、助言等について、ご協力いただければと思います。

地域薬局の薬剤師としては、普段行っている薬学的管理指導業務に加え、「医師による対面での診療が行われていない状況」を踏まえた介入・助言を行います。これまでの経過や病状変化、患者さんの生活状況、使用している薬剤の特性などを考慮し、必要であれば次回診療までの間に電話連絡するなど状況確認を強化する等の対応も検討します。

電話診療を受けることで、医療機関の受診→薬局の際の動線も変わるものと思いますが、薬を受け取る薬局を変えてしまうと、上記の介入が不十分になってしまう恐れがあります。ご注意頂ければと願います。


最近、新型コロナウイルスの予防効果を謳う商品も増えているようです。

皆さんが「かかりつけ」にしている薬剤師は、こうした商品に実際の効果が見込めるのかどうか、また新型コロナをはじめとした感染症の適切な予防策はどういったものかについて、個別の相談対応を行っています。
地域医療者の人的資源は、「健康に関する情報・商品の利用・購入が『自己責任』として切り捨てられるような社会」に対抗するものです。普段から親しくお付き合い、ご利用いただければと願っています。