まちづくりフィールドワークのPDCA 【POST】

（図は、慶応義塾大学環境情報学部/加藤文俊研究室のブログより）

「ふだん記(ふだんぎ)」と「よそゆ記(よそゆき)」という言葉をご存知ですか？

慶応大学の加藤文俊先生は、私たちの日々の活動や社会との関わり(つながり)やコミュニケーション、身の周りにある出来事を、どのようにデザインして表現するかを遊び心を持って研究している素晴らしい方です。この「ふだん記」と「よそゆ記」は、加藤先生の研究室のブログ”ハングアウト”(旧＜場＞のチカラ プロジェクト)の中で紹介されています。このブログは研究室での活動を綴った、非常にユニークで面白い内容です。
そのブログ記事の中で、橋本義夫(1902～1985)氏が提唱した「ふだん記」運動について、加藤先生は次のように語っています。

『ぼくたちが「地域」や「生活」などについて語るとき、この「ふだん記」感覚はきわめて重要です。「その土地よかれ、その人よかれ」という観点から、さまざまな〈生活記録〉を収集し、分析する。このことは、あたらしい「ふだん記」を生み出すばかりでなく、これまで残され、維持されてきた「記録」について問い直すことでもあります。』

橋本氏の「ふだん記」に触発された加藤先生は、「ふだん記」という情報を「地域」と「生活」という塊でくくることで、まちづくりに繋がる発想を示唆しています。この加藤先生の発想は、90年代に水俣市と仙台市で同時的に発生し、その後全国にも広がった「地元学」に通ずるものです。
さらに、加藤先生はこの「生活記録(ライフドキュメント)」をカードの束、「よそゆ記(＝よそ行き)」のPOST(上図参照)として、このフィールドワークという体験学習のプロセスを見事にデザインしています。「よそゆ記」のPOSTは『「ふだん記」と織り交ぜることによって、じぶんの投げ込まれた社会や文化の状況を、ひとつのカードの束として考えることができ』るとし、これは全国のまちづくり活動にとって、実に示唆に富んだ素晴らしいアイデアです。
実際に、加藤研究室では、携帯カメラで来訪者の視点から日常を切り取ることで、柴又や金沢などの地域でPOSTのフィールドワークを行ってきました。携帯電話に付いているカメラを用いて、「地元学」を手軽に自由に発展・進化させたプログラムと見ることができます。モブログとハガキサイズのOutput、Outputを通じた地域社会とのコミュニケーションには、まちづくりのフィールドワークの基盤、新しい日常のデザインとして、更なる可能性を期待できます。お手軽な遊び感覚を持ちつつも、フィールドワークをマネジメント・サイクル(Plan⇒Do⇒Check⇒Act)の如く捉え、きっちりとフィードバックさせるPOSTの手法は、まちづくりの活動をする皆さんにとって、非常に有意義なものとなるでしょう。以下のブログには詳しい説明が出ているので、是非皆さんの地域で試してみて下さい。

加藤文俊先生のプロフィール
http://fklab.net/vita/index.html
▼慶応義塾大学環境情報学部■加藤研究室のブログより
「ふだん記」とは？
http://vanotica.net/archives/001100.html
「よそゆ記」のPOSTとは？
http://vanotica.net/archives/001102.html
【論文】フィールドワークの想像力：POSTによる体験学習の試み　加藤文俊（慶応義塾大学）
http://fklab.net/pdf/jasag_05F.pdf

(株)清水工房のサイトより　自分史の原点「ふだん記」運動
http://www.simizukobo.com/fudangi/fudangi.html
橋本義夫氏の地元八王子市の市民グループによるサイト「ふだん記」
http://homepage3.nifty.com/fudangi/

ローカル・ジャンクション２１のサイトより、地元学の紹介ページ
http://www28.cds.ne.jp/~localj/menu/town1.html
いわて地元学ガイド
http://www.pref.iwate.jp/~hp0301/festa/guide.pdf