まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

今なお響く、宮本常一さんの言葉

2017-05-13 10:59:02 | 心を捉えた言葉たち

目の前の仕事に追われ進む方向を見失いそうになった時、ふっと思い出す心の座標軸となるのが、宮本常一さんです。
生前にお会いすることは叶いませんでしたが、生まれ故郷の周防大島には二度訪問し、16万キロを歩いたフィールドワークと膨大な量の著作に触れると、宮本さんの問題意識や本質を見抜く洞察力に、強い刺激と励ましをいただきます。
心に響く言葉はたくさんありますが、時折書き留めて何度も見返す言葉をここに記録します。

■使命感の原点がわかる『民衆と仏教芸術』の一節

「民衆というものは、いつの世にも馬鹿にされつつ、おいてきぼりをくわされてきたものである。それは今も変わりがない。しかし、そうした中で、自分達にあった生活をたててきたのである。しかも、その生活は支配者達の歴史の底に埋没してきたのであった。そうした民衆の生活の歴史を、何とかして探り当ててみたいというのが、私の久しい念願であった。」

■激動の時代を歩んだ問題意識と人間の本質
柳田國男に師事しながらも、当時の民俗学に懐疑的な意見が出ていてドキリとする内容。

「実は私は昭和三十年頃から民俗学という学問に一つの疑問を持ちはじめていた。日常生活の中からいわゆる民俗的な事象をひき出してそれを整理してならべることで民俗誌というのは事足りるのであろうか。
村を歩いて年寄りたちばかりでなく、中年の人も若い人も一番関心の深いのは自分自身とその周囲の生活のこと、村の生活のことである。民俗的な事象を聞くことについて喜んで答えてくれる人は多いのだが、その人たちの本当の心は夜ふけてイロリの火を見ていて話のとぎれたあとに田畑の作柄のこと、世の中の景気のこと、歩いてきた過去のことなど、聞かれて答えるのではなくて、進んで語りたい多くを持っていることであった。
まずそういうものから掘りおこしていくこと、そして生きるというのはどういうことであるかを考える機会をできるだけ多く持つようにしなければいけないと思った。」

■郷土大学開講の辞(1980年、昭和55年3月に開校)
地域を担う人達が、何をテーマに話すべきか書かれた当時の講義メモも示唆に富む内容。二宮尊徳が農村開発で行った【芋こじ】を彷彿とさせるのが郷土大学。

郷土大学は「郷土にいて郷土に学び同時に郷土で学ぶことによって深い思索と広い視野を持ち、今後の郷土が如何にあるべきか、われらは何をなすべきかを学習する機会と機関」であり、「今後の郷土のあるべき姿をさぐり、これを実現しようとすることを目的とするもの」です。


■講演「良い村を作るのは誰か」(1969年、昭和44年)
人口減少時代の今読んでもまったく古びない内容。

「いろいろの人達の持ち味をいかして、そして例えば農業をする人は一つの村の中で限られた少数になっていったとしても、それ以外のいろいろの仕事をする、そこで皆が楽しく遊びながら、あるいは話し合いながらそれが勉強になるような場が作られて、そういうことの中から我々は、素晴らしいイメージを将来に向かって持つことができるようになるのです。」

■『ふるさとの生活』柳田國男が語る宮本常一
30歳以上も若い宮本をリスペクトしていたことがよくわかる一文。彼の才能を発掘したのも、後に師となる渋沢敬三と引き合わせたのも柳田。

「この本を書いた宮本先生という人は、今まで永い間、最も広く、日本の隅々の、誰も行かないような土地ばかりを歩き回っていた旅人であった。
どういう話を私達が聞きたがり、聞けば面白がり、またいつまでも覚えているかということを、この人ほど注意深く考えていた人も少ない。」

■『旅と観光』で語る観光の本当の意味

「本来旅は旅する者が主体的な目的を持ち、また旅でなければ体験できないものをもとめ、その風土と人とにかかわりあいをもつようにすることが大切ではないかと考える。もともと観光の意味もそういうところにあるのではないだろうか。そして日常生活する場所では得られないような体験をすることによって、日常生活への反省もなされる。観光旅行が本来の旅の趣旨にたちかえるような旅行への回帰はもうぼつぼつおこっていいのではないかと思う。人を遊ばせるための観光施設も必要であろうが、それにもまして重要なのは、より多くの人が事務や利害をこえて知りあう機会をもつことである。そいうことのために観光ということばの内容と意味がかわってくるように望んでやまない」

▼今の時代に必要なことは、ほとんどすべてここに書かれていると言っても過言ではありません。
決して安くない本ですが、観光に関わる人には強くおススメします。

『宮本常一講演選集5 旅と観光 移動する民衆』
宮本 常一 (著), 田村 善次郎 (編集)

http://amzn.asia/2allwGR

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 当事者を生む”切っ掛け”をど... | トップ | 未来の自分へ(blogリニュー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

心を捉えた言葉たち」カテゴリの最新記事