まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

自治体の『対外戦略』と”官”の役割

2005-08-18 13:00:30 | Personal Views

(視察!?を受ける子どもたち。授業参観ならぬパパの仕事参観があったらどんな気分だろう)

先日参加した公共政策の勉強会で、「自治体の先進的な施策は、他の自治体から視察依頼を無償で受ける習慣があるが、手間と税金を掛けて作ったせっかくの仕組みが、他の自治体に低コストで真似をされてしまう」という問題が指摘されました。
これについて情報と私見をまとめ、以下のような返事(多少修正)を書いたので、皆さんの役に立つこともあるかと思い、この場でリサイクルさせていただきます。


1.先進的な施策の開発コストについて
 「視察がたくさん来るのは嬉しいけれど、受け入れ側は負担ばかりで得るものがない」というお話があったと思います。まずはこの件に関し、(1)負担をどう扱うか?(2)視察をどう捉えるか?について少し。

(1)視察の負担をどう扱うか?

⇒ ①視察を有料化する。
  ②先進的な施策の事例集を作って販売する。

の二つが考えられると思います。前者については、海外(特に北欧やドイツ)では、自治体などの視察メニューを、テーマに合わせてパッケージ化し、積極的に有料視察(テクニカル・ビジットT/Vと呼ばれる)を受け入れています。例は下記のURLを参照下さい。日本でも少しずつ登場しているようですが、まだメニュー毎の単発ものが多いのではないでしょうか?
 後者の仲間では、ニセコ町の予算書「もっと知りたいことしの仕事」のような事例があります。住民に無料で配っているものを部外者に有料販売するわけです。単に販売用に作るのであれば冒険になりますが、元々作っているものを有料販売するのであれば、リスクは少なくてすみます。民間の事例ですが、新潟県村上では、まちづくりに関連した写真集を販売し、その売り上げを次の活動資金に充てているというものもあります。これは、多くの人の目に触れるメディアにすることで、シティセールスの効果を持ちます。

コペンハーゲンとマルメのT/V専用サイト
http://www.tvcph.dk/mainframe.php
フィンランド政観HPのT/Vページ
http://www.moimoifinland.com/technical/index.html
仙台フィンランド健康福祉センターの視察案内
http://sendai.fwbc.jp/shisatsu/index.htm
ニセコ町の取り組み:ベストセラーになった予算説明書
http://www.janjan.jp/column/0507/0507260048/1.php?PHPSESSID=43ed421e22fc698232b045ca2c986ec4

村上の取り組み
http://www.thr.mlit.go.jp/kansen/feature/sympo02/05.html

(2)視察をどう捉えるか?
 私が昨年参加した「持続可能なスウェーデンツアー」では、スウェーデンの片田舎にも視察に行きました。応対して下さったホストにとっては、わざわざ遠い日本からスウェーデンの田舎の取り組みを注目してもらっているということで、誇りと自信がつくようになります。さらにそのことが地元の新聞等で報道されると、地元で馬鹿にしていた人たちの見る目が変わります。これは地域に価値観の転換という大きな衝撃を与えます。ですので、視察をコスト面からだけで考えるのでなく、金銭以外の地域の波及効果を含めて評価することも大事なのではないかなと思います。
 また、地域の活力というのは、人づくりという長い時間と手間を掛けた努力の集積なので、形だけ模倣しても、一朝一夕に成功するものではありません。トヨタ方式が他の会社で容易に浸透しないのと同様、簡単に真似のできるものではありませんし、簡単に真似できるものでは困ります。「企業の場合は無償で競争力につながるノウハウの提供(視察)に応じることなどあり得ない」わけですが、有償のコンサルティングとして積極的にビジネス化しています。

参考:「何となく良くなった」からの卒業~経済効果を数値化する
http://compus.seesaa.net/article/2524776.html

2.自治体の広報について
 自治体の情報公開が大事ということで、広報部門が注目されており、那覇市では、コミュニティFMを使った定期的な情報発信など面白い取り組みも登場しています。しかしながら、この分野では日本はまだまだ遅れています。情報公開とは情報の一方通行に過ぎず、それだけでは片手落ちです。本当に重要なことは「如何に住民の声を吸い上げ、行政サービスに反映させるか」です。その点、ニセコ町や三鷹市、海外では英国で”Excellence in Marketing”部門で複数表彰を受けているEast Riding of Yorkshire Councilが先進的です。もう広報部という名称が古くなっており、このような自治体では「広聴広報部」や「コミュニケーション担当部」となっています。このようなセクションにマーケティング機能を持たせ、コミュニケーションサイクルを確立することが、地域のマネジメントを可能にし、地域の発展につながります。メディアミックスによる戦略と品質マネジメントISO9001が重要です。

コミュニケーション重視の自治体経営(UFJ総研 平野誠也氏筆)
http://www.ufji.co.jp/publication/sricreport/804/21.html
East Riding of Yorkshire CouncilのHP
http://www.eastriding.gov.uk/

3.官と産と民について
 世の中のwantsを満たすのは市場が得意ですが、needsを満たすことは不得手です。これが官の役割ですが、needsが多様化する中、限界が生じて新しい公共の担い手として民(=NPOなどの市民活動団体)が注目されるようになりました。官にはコスト意識とビジネススキルが不足しており、民にはコスト意識があっても資金とビジネススキルが足りません。また産には資金とビジネススキルを持っていても、公益意識が希薄です。これを解決するためには、人的な交流が不可欠で、その交流も単なる人脈や情報交換に終わらず、出向して実際に経験するぐらいの踏み込んだものがなければ、改善の効果も限られてきます。
 10年先には企業とNPOを交互に経験する人が大勢登場する社会になっていることを期待します。それがなければ、市場化テストなども上手く機能しないだろうし、ニートなどの雇用問題も解消しないだろうと思います。

4.縦割り組織をどう壊すのか?
 現実的な問題として、自治体も官庁も縦割りの風習を壊すことは難しく、官の担当者は異動も早いため、国民・市民(=生活者)にとっては信頼関係再構築の負担も大きい。この縦割りを壊すため、先進自治体の三鷹市では、連絡調整課長を業務の担当課長とは別に設置しています。首相は省庁の人的交流を進めるよう促していますが、この効果もあまり期待できません。今の組織をそのままの状態で、生活者との溝を埋めていくには、官と民の緩衝剤となる人材を配置するのが最適のように思います。生活者の視点に立った省庁横断的視野を持ったコンサルタントが、クライアントの要望にあわせて各省庁の役立つ部分だけをコーディネートおよびアレンジして提供するというイメージ。こういう仕組みというのは、できないものでしょうか?

 随分と話題があちこち飛んでいますが、根底には地域経営をどうするかという共通の課題があります。皆様のご意見など、いろいろとお聞かせいただければ嬉しいです。特に反対的な意見や「こんな事例あるよ」といったコメントは、とても参考になるので大歓迎です。

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1 コメント

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そうですね! (江原)
2005-10-05 21:41:38
先日は、ブログにコメント&トラバくださりありがとうございました。

上記の文章、うんうんとうなずきながら読みました。



視察のパッケージ化は私も考えているところでした。

他にも、職員の商品化(講師派遣)、事業・活動内容の商品化(出版)なんかどうかなーと思っています。



職場で提案してみます。



反対的な意見でなくてすみません(笑)
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