Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

震災で帰国を早めた「しらせ」

2011-04-17 05:07:25 | Nice boat
これからしばらく、先般の東日本大震災に関連して小生が気になったこと、見聞きしたことなどを、世間的にはあまり注目されない海事ネタなどを中心に拾ってゆきます。

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東京港・船橋港への入港待機船は、浦安沖に投錨して入港予定時刻を待つのが常となっています。
毎週日曜には、ここに近海郵船物流のRORO船「しゅり」(2代。2002年4月進水、今治造船今治工場578番船。総トン数: 9,813 GRT、載貨重量: 6,566 DWT、全長: 167.72 m、型幅: 24.00 m、型深: 17.18 m)が現れ、よく目立つ赤い船体を見せてくれます。



本船は東京―大阪―那覇の定期航路(*a)に就航しており、土曜の12時に大阪南港を出た後、東京港の同社使用ヤードでは日曜の荷役はお休みとしているため、この錨地で丸一日を過ごした後、月曜の朝8時に有明埠頭に入航するスケジュールとなっているのです。


さて、2011年4月10日の日曜日、この浦安沖に、もう1隻別の赤い船が姿を現しました。



海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」(2代。2008年4月16日進水、ユニバーサル造船舞鶴事業所10004番船。基準排水量: 12,650 t、全長: 138 m、型幅: 28 m、型深: 15.9 m)です。



本艦の第52次南極地域観測協力の当初行動計画(*1)では2011年4月10日に東京港晴海埠頭入港となっていました。
しかし、3月11日の震災を受けて行動計画が変更され(*2, 3)、シドニー港出港を3月24日から22日に繰り上げ、既に4月5日に海上自衛隊横須賀基地へと帰国しています(*4)。



ではなぜ帰国済みの本艦が改めて東京港外に来ていたかというと、昭和基地からの持ち帰り物資(廃棄物等、約 490 t)(*1)の荷揚げがまだで、これを11日から東京港で行うためだったのです。
それが証拠に、この時点ではコンテナラックには緑色のドライコンテナがまだ積載状態となっています。

「しらせ」は4月11日10時より13日17時まで大井食品埠頭ONバースに入港して荷役作業を行い、横須賀へと戻ってゆきました。



本艦が帰国を急ぐことになった理由は東北地方救援作戦への参加のため(*2)ですが、揚げ荷役の日程が帰国後すぐではなかったため、せっかく5日分も稼いだ時間が有効に生かされたかわからない(ように見える)のは惜しいことです。
南極から帰った砕氷艦は次シーズンに備えて初夏には入渠するので、その前に短期間の災害派遣をこなすのでしょう。

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おまけ。
近くにいた他船。



左 = 横浜油槽船「第五栄豊丸」(1994年7月進水、松浦造船所507番船。総トン数: 2,491 GRT、載貨重量: 4,234 DWT、全長: 90.00 m、型幅: 17.00 m、型深: 6.35 m
右 = オーシャントランス(オーシャン東九フェリー)「おーしゃん のーす」(1996年8月進水、尾道造船尾道造船所406番船。総トン数: 11,114 GRT、満載排水量: 11,726 t、載貨重量: 4,883 DWT、全長: 166.00 m、型幅: 25.00 m、型深: 8.40 m



左 = アメリカン プレジデント ラインズ「APL Sardonyx」(1995年進水、三星重工業巨済造船所1126番船。総トン数: 53,519 GT、載貨重量: 65,598 DWT、コンテナ積載容量: 4,388 TEU、全長: 294.00 m、型幅: 32.3 m、型深: 12.8 m)
右 = キャリムエンジニアリング「Asia Ace」(1987年進水、尾道造船尾道造船所326番船、元・琉球海運「かりゆし おきなわ」。総トン数: 6,635 GT、載貨重量: 4,780 DWT、全長: 145.78 m、型幅: 22.40 m、型深: 14.05 m)

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(*a) = 本航路は琉球海運との共同運航で、他の使用船「かりゆし」「わかなつ」は同社が運航。

(*1) = 砕氷艦「しらせ」による第52次南極地域観測協力について (PDF) - 統合幕僚監部、2010年11月2日
(*2) = 砕氷艦「しらせ」の行動計画の一部変更について (PDF) - 統合幕僚監部、2011年3月23日
(*3) = 第52次南極地域観測「しらせ」行動計画の一部変更について - 文部科学省、2011年3月23日
(*4) = 砕氷艦「しらせ」帰国 - 海上自衛隊横須賀地方隊、2011年4月5日

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近海郵船物流株式会社
http://www.kyk.co.jp/
近海郵船物流株式会社
海上自衛隊:砕氷艦「しらせ」による南極地域観測協力
http://www.mod.go.jp/msdf/formal/operation/nankyoku.html
海上自衛隊:砕氷艦「しらせ」による南極地域観測協力
南極地域観測事業:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/nankyoku/index.htm
南極地域観測事業:文部科学省
南極観測のホームページ (国立極地研究所)
http://www.nipr.ac.jp/jare/
南極観測のホームページ

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日本南極地域観測隊関連の過去記事
「日本南極地域観測隊」のコンテナがなぜか若洲に現る (2010年10月13日)
初南極から、お帰りなさい! (2010年4月8日)
【写真特集】一方その頃、新造砕氷艦「しらせ」は東京港に入港 (2009年10月18日)
南極観測船のいない11月14日 (2008年11月25日)

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Summary of images:
Description of #1 = RORO船「しゅり」Shuri(2代) (JL6688 / Off.No. 137018 / IMO 9276274)
Description of #2-5 = 砕氷艦「しらせ」JS Shirase(2代) (AGB 5003 / JSNJ)
Description of #6 = 白油タンカー「第五栄豊丸」Eiho Maru No.5 (JG5332 / Off.No. 134972 / IMO 9087934) / フェリー「おーしゃん のーす」Ocean North (JISB / Off.No. 135437 / IMO 9154086)
Description of #7 = フルコンテナ船「APL Sardonyx」 (9VVU / IMO 9077458) / 精密機械用RORO船「Asia Ace」 (H9ST / IMO 8700486)
Date = 2011-04-10
Source/Author = Vantey
License = PD-self
Public domain


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