Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

ゆるゆり展(3) 我思う、我主人公なり。

2011-09-30 23:41:32 | イベントレポート
秋葉原の東京アニメセンターで2011年9月6日から開催中の『ゆるゆり展』のレポートその3。
その1その2はこちら
その2でも触れた通り、9月25日に一旦閉幕後の休館日を挟んだ27日、開催期間の延長が発表されています(新たな閉幕日は未定)(*8,9)。

今回はアパレル商品関連に注目していきます。
(以下の内容は本エントリの発表日より1週間程度古いものです)

まずは会場概観。(レポート3稿目にして漸く



ステージ上に見える4着の衣類は、左から順に
 ○「七森中学校制服(夏服) Ladies [ゆるゆり]」(COSPATIO、37,800円)
 ○「杉浦綾乃Tシャツ WHITE [ゆるゆり]」(二次元COSPA、3,045円)
 ○「歳納京子Tシャツ WHITE [ゆるゆり]」(二次元COSPA、3,045円)
 ○「船見結衣Tシャツ WHITE [ゆるゆり]」(二次元COSPA、3,045円)

制服のクローズアップ。



背後のチラシ。



 ○「七森中学校制服(冬服) [ゆるゆり]」(37,800円)
 ○「七森中学校女子制服(冬服) ワンピース [ゆるゆり]」(17,850円)
の発売告知。
夏服と冬服の違いはワンピースの袖の長さで、ジャケットは夏冬共通。冬服ワンピースの単品は夏服を既に持っている人向けとのこと。

ところでここ東京アニメセンターには小規模な物販コーナーがあるのですが、その様子がこちら。




写真で平積みTシャツの並びに見えるのは、
 ○「京子&綾乃ショルダートート NAVY [ゆるゆり]」(二次元COSPA、2,100円)
 ○「ちなつ&結衣ショルダートート NATURAL [ゆるゆり]」(二次元COSPA、2,100円)



現時点で商品化されているTシャツはこの3種、ショルダートートはこの2種がすべてです。
さすがに制服をここで即売してはいませんが、以上の5アイテム(これらは9月16日に入荷した由)(*10,11)はここで買えるようになっていました。

真っ先に商品化される辺り、やはり京子、綾乃、結衣が人気キャラなんですね。
あかりはどこ? 主人公なのに……
(キャラがペアで載るトートで、百合的にペアリングに参加できないが故にあかりがハブられるのは仕方ないとして)

中でも断突人気なのが京子。



上掲写真と2つ上の写真の通り、9月23日午後時点でTシャツの全サイズ通算の残りが計2枚。

そして9月25日夕方の様子がこの通り。



京子Tシャツ売り切れ。

ステージからも撤去。



そして、




なんと京×綾トートも売り切れ。

京子すごい。さすが真の主人公。

我思う、我主人公なり。
よって、そこにあかり、必要なし。

 ――なもり『ゆるゆり』原作第53話「いわゆるプロダクト・プレースメントというやつです。」(「コミック百合姫」2011年11月号所収)扉絵より、歳納京子

(以上の内容は商品の最新の在庫状況を反映しておりません。大事なことなので2回ry)
続く

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(*8) = ゆるゆり展延長けって~い♪ - 東京アニメセンター、2011年9月27日
(*9) = ゆるゆり展@東京アニメセンター延長けって~い♪ - ゆるゆりブログ、2011年9月27日
(*10) = 「ゆるゆり展」で今週末から新商品販売決定! - ゆるゆりブログ、2011年9月15日
(*11) = ゆるゆり展はっじまるよ~♪ - 東京アニメセンター、2011年9月

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TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト
http://yuruyuri.com/
TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト
東京アニメセンター TokyoAnimeCenter
http://www.animecenter.jp/
ゆるゆり | 二次元キャラクターグッズ製作販売二次元コスパ
http://nijigencospa.com/itemlist/id/00965/mode/series
美少女二次元キャラクターグッズ製作販売|二次元コスパ

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Summary of images:
Description = 『ゆるゆり展』
Date = #1,2,4-7: 2011-09-23 / #3,8-11: 2011-09-25
Source/Author of photographs = Vantey
Author/Permission of pictures = (c) なもり/一迅社・七森中ごらく部 / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
License of photographs = CC-BY-2.1-JP, Trademarked

ゆるゆり展(2) 全社的に応援された結果が

2011-09-29 02:18:52 | イベントレポート
秋葉原の東京アニメセンターで2011年9月6日~25日に開催されていた『STEINS;GATE展』『ゆるゆり展』のレポートその2。
その1はこちら

なお前稿の脱稿後の27日、『ゆるゆり展』のほうは開催期間の延長が発表されました(*1,2,3,4)。
終期は現時点では未発表となっていますが、会場の次回展示企画の調整も進んでいるようですので、そちらとの兼ね合いになるのかと。


今回は展示物の一部のご紹介から。
とは言っても開幕は3週間も前で、ネット上には詳細な内容レポートや高画質な写真は既にたくさんあるでしょうから、当方は個人的に気になった点を観ていく方向で。

まずはシュタゲ展からポスター。




このキャストサイン入りポスター、黒ペンで書かれたサインが見えにくいのが難点。
ですが、全体的に彩度がきついうえに描き込みがごちゃごちゃしたポスターなので、色ペンを使ってもやっぱりサインは映えない予感。

こちらは『ゆるゆり』のキャストサイン入りポスター。



これは原作漫画の複製原画群の左隣に掛かっていたものですが、他にもガラスケースとビデオモニタの載った棚の上にも1枚、会場入口扉の左2枚隣のガラスにも会場外向きに1枚(前エントリに掲示状態の写真あり)、都合3枚もサイン入りの同じポスターが会場に掛かっていました。



資源ありすぎw
ごらく部の皆さん、いろんな企画でサイン書きまくってたからなあ。

『シュタゲ』最終第24話のキャストサイン入り台本(表紙)。



こちらは色ペンが使われていました。8名のサインが7色で。
ただレギュラー陣のうち、ミスターブラウン親子が足りません。ラボメンじゃないからかしら。
{{ネタバレ}} 8人で8色かと思ったら、劇中で親子と判明する人が同色なのがニクいね。でも線の太さと色味が異なるので、使用されたペンは別々かとも思われます。

こちらは『ゆるゆり』1~4話の台本(表紙)。
各表紙に一人ずつ描かれたキャラの選択が興味深いです。
ちなつは5話だろうか6話だろうか。ここまで出ていない京子は何話だろう、まさか11話まで登場しなかったりして。――とか、通常は表に出ない資料だけにいろいろ妄想がとまらへん想像をかき立てられます。


(ゴメンあかりちゃん、ガラスの縁が顔の上に来てるのはわざと狙って撮ったんじゃないんだ…)

1話台本の上に見えるのは、アニメ5話に登場した同人誌『ボボボらい★くるミラクるん』(*a)。
この劇中登場本は、原作者・なもり先生の手により実物が制作されて『コミックマーケット80』(2011年8月12日~14日)の一迅社ブースで販売(*5,6,7)されましたが、予想以上の売れ行きで、3日分としてきた用意数を2日目までで全数完売(このため3日目は欠品となり販売せず)(*6)。多くの入手難の声を受けた救済策として、1日目が終了した夜に、9月17日発売の「コミック百合姫」2011年11月号(*b)にて誌上通販を行う旨を発表する(*6)という神対応が執られました。

そのガラスケース全景。



このガラスケースとビデオモニタの上方に、前掲のサイン入りポスターの1枚が掛かっています。

こちらはシュタゲ展のガラスケースの一つ。
もう一つのガラスケースは撮禁でした。



前掲の24話台本が左上に見えます。
上段は第1話の絵コンテ(担当: 浜崎博嗣)。オカリンが血の海に沈む牧瀬紅莉栖の姿を目撃(観測)する場面のものでした。
下段は過去のノベルティグッズで、中央はC78(2010年夏コミ)のショッパーバッグ、右はC80(2011年夏コミ)のショッパーバッグ。


これの写真を見返していて、そういえばゆるゆり展にはショッパーバッグとかの展示は無かったな、と。
限られた展示スペースと資材であれもこれも飾れというのは無理ですし、展示が無かったことに特に不満はないのですが、折角気が付いたのでこの機会に、ご参考までに筆者手持ちのゆるゆりショッパーをうpしてみます。

配布元: C80企業ブースNo.341「ぽにきゃん」 (描画面: 318 × 425 mm)


配布元: C80企業ブースNo.314「一迅社」 (描画面: 318 × 417 mm)


「ぽにきゃん」裏面 『花咲くいろは』(原作: P.A.WORKS、キャラクター原案: 岸田メル、キャラクターデザイン: 関口可奈味)
「一迅社」裏面・妻面 『かんなぎ』(原作: 武梨えり)


前述のミラクるん本を含め、C80での一迅社ブースは目玉商材を2日目までに完全に売り切ってしまった(*6)ので、3日目にこのショッパーを提げている人はほとんどいませんでした。3日目に提げていたごく少数の人は、1日目・2日目に買い物した人が持参した可能性のが高いかもです。
なので3日目にこれを提げて歩き回っていたら、珍しがられてよく目立ち、買い物時に売り子さんから「おっ、意外とかわいいじゃん」「アッカリーン」などと声がかかって(筆者の実話)、ちょっとした言葉を交わすきっかけにもなったり。
なんというフラグメーカー。

因みにもう一方の妻面(描画面: 109 × 417 mm)はこんなデザイン。




あかりちゃんの立ち位置ww
自社の顧客に商品をこれに入れて配布し、ターゲット人口密度が異常に高い中を持ち歩かせるとか、一迅社さんの「全社的あかりちゃん応援」(*c)の本気の一端を見た。

\アッカリ~ン/

(シュタゲ展終、ゆるゆり展続く

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(*a) = (劇中世界で)アニメ化もされている漫画作品『魔女っ娘ミラクるん』(原作: 西京焼蘭子)の同人誌として歳納京子(筆名: 西京極ラム子)が制作し、東京で2011年8月13日に開催の同人誌即売会『コミックエクストリームマーケット80』2日目に出展したサークル「西京極亭」で頒布した――というのがアニメでの劇中描写。
(*b) = その百合姫11月号も重版決定だそうで。出版界の中の人もいろいろ大変なようで、お疲れさまです。
(*c) = 『ゆるゆり』アニメ6話から10話までの番組内で流れた一迅社の30秒CF(ナレーション: 赤座あかり)にて、末尾の社名画面に「全社的にあかりちゃん応援中!!」というキャッチフレーズが添えられていた。

(*1) = ゆるゆり展延長決定です!!ご報告遅れまして申し訳ござ ... - Twitter / 東京アニメセンター、2011年9月27日
(*2) = ゆるゆり展@東京アニメセンター延長けって~い♪9月2 ... - Twitter / アニメ「ゆるゆり」公式アカウント、2011年9月27日
(*3) = ゆるゆり展延長けって~い♪ - 東京アニメセンター、2011年9月27日
(*4) = ゆるゆり展@東京アニメセンター延長けって~い♪ - ゆるゆりブログ、2011年9月27日
(*5) = コミックマーケット80にてゆるゆりグッズ販売! - ゆるゆりブログ、2011年8月2日
(*6) = 一迅社コミックマーケット80出展情報!! - 一迅社、2011年8月
(*7) = なつ★こみ はっじっまっるよ\アッカリ~ン/ - コミック百合姫、2011年8月12日

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東京アニメセンター TokyoAnimeCenter
http://www.animecenter.jp/
STEINS;GATE展が聖地アキバに!!
http://www.animecenter.jp/201109/03184028.php
ゆるゆり展はっじまるよ~♪
http://www.animecenter.jp/201109/02214924.php
TVアニメ『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』公式サイト
http://steinsgate.tv/
TVアニメ『STEINS;GATE』公式サイト
TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト
http://yuruyuri.com/
TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト

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Summary of images:
Description = 『STEINS;GATE展』『ゆるゆり展』
Date = #1,3,5: 2011-09-23 / #2,4,6-9: 2011-09-25
Source/Author of photographs = Vantey
Author/Permission of pictures = (c) 2011 5pb./Nitroplus 未来ガジェット研究所 / (c) なもり/一迅社・七森中ごらく部 / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
License of photographs = CC-BY-2.1-JP, Trademarked

Description = コミックマーケット80「ぽにきゃん」「一迅社」ショッパーバッグ
Date = 2011-08-12
Source/Author of photographs = Vantey
Author/Permission of pictures = (c) なもり/一迅社・七森中ごらく部 / (c) 花いろ旅館組合 / (c) 武梨えり/一迅社 / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
License of photographs = CC-BY-2.1-JP, Trademarked

ゆるゆり展(1) 話題Box

2011-09-27 04:49:51 | イベントレポート
秋葉原。
駅を降りた目の前のラジ館を見上げても、人工衛星はめり込んでいませんでした。


Public domain

今回秋葉原での目的地は、秋葉原UDX4階の東京アニメセンター
ここで2011年9月6日~25日に開催されていた『STEINS;GATE展』『ゆるゆり展』を、会期末間際に観てきました。





展示内容はともに、アニメの設定画、美術ボード、原画、完成作品の場面写、ポスターといった平面資料のほか、台本、過去のノベルティグッズなど。

会場内の概観。




半年間視聴につきあってきてかっこいい終わりを迎えたばかりとあって、個人的に感慨深いものがありました。



どちらもいいアニメでした。

   *  *  *  *

さて、ここからがネタのターン。

会場入口近くに、このようなものがありました。



ご意見箱です。

クローズアップ。



箱の側面に、『STEINS;GATE展』の告知ビジュアルが。

ということは、反対側には……




やっぱり。『ゆるゆり展』の告知ビジュアルが。


――でもここは、ゆるゆり的には寧ろこうすべきだったんじゃなイカ?




(でもそうした結果、こんなのが入ってても困るんですがw)



続く

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東京アニメセンター TokyoAnimeCenter
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STEINS;GATE展が聖地アキバに!!
http://www.animecenter.jp/201109/03184028.php
ゆるゆり展はっじまるよ~♪
http://www.animecenter.jp/201109/02214924.php
TVアニメ『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』公式サイト
http://steinsgate.tv/
TVアニメ『STEINS;GATE』公式サイト
TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト
http://yuruyuri.com/
TVアニメ「ゆるゆり」スペシャルサイト

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Summary of images:
Description = 秋葉原ラジオ会館
Date = 2011-09-25
Source/Author = Vantey
License = PD-self

Description = 『STEINS;GATE展』『ゆるゆり展』
Date = #3-6: 2011-09-23 / #2,7-11,15: 2011-09-25
Source/Author of photographs = Vantey
Author/Permission of pictures = (c) 2011 5pb./Nitroplus 未来ガジェット研究所 / (c) なもり/一迅社・七森中ごらく部 / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
License of photographs = CC-BY-2.1-JP, Trademarked

Description = 『ゆるゆり』アニメ第12話「みんなでポカポカ合宿へ」/第1話「中学デビュー!」/第7話「くり済ませり」 場面写
Source = テレビ東京
Date = 2011-09-20 / 2011-07-05 / 2011-08-16
Author = (c) なもり/一迅社・七森中ごらく部
Permission = 日本国著作権法32条1項に基づく引用

あずにゃんがロンドンで見つめる先には、アイススケートの史跡

2011-09-10 08:37:29 | 作品舞台研究
アイススケートリンク(*a)の氷盤の設営方法は、天然氷盤の利用、自然製氷、機械製氷の3種に大別されます。
天然氷盤は、湖沼などの水面が安全な氷厚まで凍結したところで勝手に滑るもの。自然製氷は、撒いた水が低い外気温で自然凍結するのを利用して予定地に氷盤を形成させるもの。どちらも寒冷な地方(の大抵は屋外)でしか設営し得ず、利用可能な季節が限られるほか、凍結具合は気温次第なため氷質が安定せずまた暖冬などの高温に弱いという欠点があります。

そこでこれらの欠点を解消するものとして、機械製氷 mechanically-frozen ice という設営法が考案されました。
まず準備として、コンクリートや砂でできた水平な基盤面を用意し、その表面には熱交換器となる金属パイプを満遍なく仕込んでおきます。
そして氷点下に冷却した不凍液をパイプ内に循環させて面上を冷却し、そこへ水を噴霧すると、水は面上で薄く凍結し氷層を形成します。これを十分な氷厚になるまで繰り返すと、リンクができあがるという寸法です。
これなら氷盤が常時強制冷却されているため、比較的安定した氷質が得られ、また気温が多少高くても利用が可能となります。



世界最初の機械製氷式アイスリンク(いわゆる人工アイススケートリンク)は、1876年、ロンドン西部のチェルシー地区キングス・ロード King's Road 沿いに造られました。
「グラシアリアム(グレイシアリアム) Glaciarium」と名付けられたそれは、まず1月に小さな建物内に仮設リンクとしてお目見えし、3月にはキングス・ロード379番地に恒久設備が完成して移転・本格開業となりました。

このリンクは大きさが 40 フィート × 24 フィート (12.192 m × 7.315 m)、基盤面は 6 インチ厚のコンクリートで、その上に土の層、牛毛を敷き詰めた層、木板の層などが重ねられ、その上に小判型(オーバル型)の平面形に銅管が敷設されました。銅管は水に浸されて、その水が凍結して氷盤となりました。
その銅管には蒸気機関で駆動するポンプにより冷媒(硫酸とも)が 1.5 気圧で送り込まれ、それは管内で気化して管外の水から気化熱を奪った後、機械室の冷蔵庫(冷媒はグリセリン水溶液)に戻されて再冷却・循環されました。
一連の施設の建設費は機械込みで2万ポンドもしたそうです。

開発者のジョン・ギャムジー John Gamgee は、オーストラリアとニュージーランドから食肉を輸入するための凍結方法の開発過程でこれを発案し、既に1870年にこの仕組みの特許を取得していました。
彼はグラシアリアムを会員制リンクとして運営し、壁にスイス・アルプスの風景を描いて、冬にアルプスまで滑りに行くような熱心なアイススケート経験者の誘致を試みました。
ギャムジーの方法によるアイスリンクの設営・維持は機構的には成功し、彼は1876年の後半にはマンチェスターのラスホルム地区とロンドンのチャリング・クロス地区にさらに大型のリンクを2ヶ所新設しました。しかし氷表面からの蒸発による霧の発生が客には不評で(*b)、また維持費が高価だったこともあり、キングス・ロードのグラシアリアムは1876年末までに閉鎖を余儀なくされ、他の2ヶ所も1878年半ばまでに閉鎖され、最初の試みは経営的には短命に終わったのでした。

   *  *  *  *

話はがらりと変わります。
2011年12月3日封切予定のアニメ映画『映画 けいおん!』(監督: 山田尚子、脚本: 吉田玲子、キャラクターデザイン・作画監督: 堀口悠紀子、美術監督: 田村せいき、色彩設計: 竹田明代、アニメーション制作: 京都アニメーション、配給: 松竹)のあらすじが8月13日に発表され、主人公たち桜高軽音部員の5人はロンドンへ行くことになる(*c)ことが明かされるとともに、このあらすじに合わせた第三次のキービジュアルも同時に公開され(公式サイトのトップ絵となった)(*d)、ベンチで寛ぐ5人の背景にはロンドンのものと思われる風景が描かれました。

この背景のモデルとなった場所の特定は、非常に難航しました。
けいおん愛好者のネットコミュニティ(主に2chなのだが)の中には "特定班" と呼ばれている人達がおり、劇中に登場したあらゆる地物、器物、食物などのモデルは、彼らによって毎週恐ろしいほどの早さで特定されてきました。
画面右奥の尖塔を教会や時計塔と推定しての捜索は悉くハズレだったようで、修学旅行回(2期4話)やマラソン回(2期15話)の多様な風景も放送終了後の夜明けまでにあらかた特定してきた百戦錬磨の彼らも、さすがに海外ということではひどく苦戦を強いられたのです。

それでも特定班諸氏の執念の捜索は2週間近くを費した末に実を結び、8月25日、遂に場所が割れました。


Creative Commons License

その場所とはチェルシー地区のキングス・ロード400番地前付近の歩道で、右手前の建物(キングス・ロード392番地)は「Eight Over Eight」というレストラン、背後に伸びる道路はパーク・ウォーク Park Walk 、尖塔の建物はやはり教会のようで聖アンドルース教会 St. Andrews Church というらしいです(*e)。


そして現地時間8月29日には早くも最初の巡礼者(舞台探訪者)が現地に乗り込んで、日本時間8月30日未明に特定後初の現地写真がネットにうpされました。


(Image from 2ch「けいおん!!紅茶2708杯目」>>270,332)


さて、ここまでに出た固有名詞で、一見無関係なこの二つの話題をここで並べた意味を読者諸兄も大体ご理解のことと思います。

この現地ショットは東西に走るキングス・ロードの北側歩道から北向きの風景を捉えているのですが、上掲のグラシアリアムがあったキングス・ロード379番地は、この場所からはキングス・ロードの車道を挟んだすぐ真向かいなのです(*f)。
より正確にはこの現地ショットを撮ったカメラの右斜め後ろの場所。
キービジュ絵でいうと、梓の視線方向にあたります。

彼女たちはまさかアイススケート史ないし製氷・冷凍技術史の史跡探訪のためにこの場所に来たのではないと思いますが、これから現地探訪をお考えの方にはまったく役に立たないトリビアとなるかと存じます。


そういえば『けいおん!』のキャラがウィンタースポーツをやっている版権絵ってまだ1枚も見たことがありませんね。

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(*a) = 広い概念ではアイスリンク ice rink と言い、スケート靴を使用しないカーリング場なども含む。
(*b) = 不評だったのは霧そのものよりも、水滴の付着による滑走者の全身の水濡れがかもしれない。当時はまだ、室温を下げるために部屋を冷房したりはしていなかっただろうから。
(*c) = 「ロンドンへ行くことが決まり、各自、ロンドンへの思いをはせる」とはあるが、劇中で実際に「ロンドンへ行く」とまでは明言されていない。映画本編が未公開の本稿執筆時点では、ロンドン行きが企画倒れや夢オチとなる可能性も残っている。
(*d) = あらすじとキービジュアルの初公開は、同日に東京・文京シビックホール大ホールにて開催されたイベント『TBSアニメフェスタ2011』(主催: TBSテレビ)のステージ上。
(*e) = 特定当初にはこの尖塔の建物を「チェルシー・アンド・ウェストミンスター病院 Chelsea and Westminster Hospital」だとする情報もあったが、同病院は数本西側の道に面しており、誤りである。
(*f) = 現場付近のキングス・ロードはSカーブの途中のため、南ではなくカメラ位置の真東にあたる。

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Glaciarium - Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Glaciarium
A to Z Encyclopaedia of Ice Hockey - Gl - Glaciarium
http://www.azhockey.com/Gl.htm#Glaciarium
映画けいおん!公式ホームページ|TBSテレビ
http://www.tbs.co.jp/anime/k-on/
映画けいおん!公式ホームページ

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『けいおん!』関連の主な過去記事
「そうだ! 私たちも脱皮すればいいんだよ!」 (2010年12月30日)
「二次元版権モノ」記念切符の先例(4)西武鉄道〈中〉 (2010年12月12日)
「二次元版権モノ」記念切符の類例(2)信濃大町駅 (2010年12月6日)
「二次元版権モノ」記念切符の先例(1)近江鉄道 (2010年12月6日)
「商品名: けいおん!!」 (2010年11月15日)
これが「けいトラ!!」だ!! (2010年11月13日)
『けいおん!!フェア』実施中の「ローソン フジテレビ店」に突撃レポート (2010年11月11日)
「痛空母」の誕生まで、というか『けいおん! キティホーク』レビュー (2010年10月26日)
Oh My ウィキ太!! (2010年10月6日)
とある駐屯地祭の焼きそば屋台にて (2010年9月19日)
『けいおん!!』キャラ・キャスト・スタッフ誕生日まとめ (2010年9月16日)
桜花の4つ並びを見ると、つい… (2010年9月1日)
gooの「つい見てしまった深夜アニメランキング」の修正前・修正後 (2010年8月24日)
gooの「つい見てしまった深夜アニメランキング」に聞き捨てならない記述が (2010年8月23日)
今Wikipediaで一番調べられている声優は… (2010年7月20日)
あなたの 筆加減で おいしくなるの! (2010年5月25日)
Some rights reserved な自著作物の無断転載発覚時、著作者はどうすべきか? (2010年1月25日)
「だめねー、唯ちゃんは恥じらいが足りないわ」 (2009年8月17日)

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Summary of images:
Description = Simplified illustration of the components of an ice rink
Source = http://commons.wikimedia.org/wiki/File:WWIP_Componentes_pista_de_hielo_móvil.jpg
Author = Wwip
License = CC-BY-3.0

Description = Eight Over Eight, Chelsea, SW3
Source = http://www.flickr.com/photos/55935853@N00/4196466547/
Date = 2008-09-19
Author = Ewan Munro
License = CC-BY-SA-2.0

Description = 映画けいおん!公式ホームページ / 現地比較写真
Source of left = http://www.tbs.co.jp/anime/k-on/
Source of right = http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1962027.png
Source of merged image = http://uproda.2ch-library.com/422421zCM/lib422421.jpg
Date = 2011-08-30
Author/Permission of left = (c) かきふらい・芳文社/桜高軽音部 / (c) 1995-2011, Tokyo Broadcasting System Television, Inc. / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
Author of right = 名無しさん@お腹いっぱい。
Permission of right = unsure / Conventionally copyleft