Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

南極観測船のいない11月14日

2008-11-25 09:02:45 | Nice boat
毎年11月14日といえば、1983年以来、同年就航の南極観測船(文部科学省呼称)「しらせ」が日本を出発する日と決まっていたのですが、今年はそれがありませんでした。
「しらせ」が耐用年数切れで2008年7月30日に退役した一方、代船の5003号艦がまだ竣工していないからです。

2001年出発の第43次観測隊からは往路の観測隊人員は西オーストラリア州パースまで空路を利用して同州フリーマントルから乗船するようになったため、船の日本出発時の内容は個艦乗組員および物資のみとなっていましたが、
それでも船の出発が毎年ニュースになることは、日本の南極地域観測事業の存在とその意義を世間一般に知らしめるイベントとして大きな意味を持っていました。

また海上自衛隊が砕氷艦(防衛省呼称)を運用することが、限られた科学者以外でも南極に行けるという夢を叶える一手段となり、海自の隊員募集時の大きな誘因ともなってきました。

今回、耐用年数切れの代船の予算措置延期という日本科学政策史上の一大汚点のために自前の観測船を欠く事態となったことは、南極地域観測の広報上の危機であり、子どもたちに南極を夢として与える機会が少なくなることは悲しむべきことと言わねばなりません。
映画『南極物語』の大ヒットと「しらせ」就航に目を輝かせ、以来南極に特別の関心を寄せてきたかつての少年少女には、現在年頃の子どもを持つ親となっている方も少なくないはずなのです。

海自にとっても募集上の危機なのですが、昨年末の船火事から漁船との衝突、連続リンチ致死傷など、もっとよくない事案が多過ぎてこちらはなんとも庇いきれないというか……
その上11月20日には護衛艦「ちょうかい」の SM-3 対空誘導弾の実射試験での目標失中という、これまたバッドニュースもありましたし。
昨今はソマリア沖への派遣も検討されて、労働強化が進むばかりの海上自衛官カワイソス(´・ω・`)


なお今年昭和基地へ行く第50次観測隊の人員と物資は、2008年12月30日にフリーマントルを出港する(*)オーストラリア船籍の砕氷観測船「オーロラ・オーストラリス Aurora Australis」で輸送される予定だそうです。

今次の観測事業の無事を祈るとともに、南極への夢が次世代に語り継がれてゆくことを期待します。

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 (*) = 小達恒夫「代替船による第50次観測夏期オペレーション」 『極地研NEWS』187号 (PDF) p.8、国立極地研究所、2008年9月

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Summary of image:
Description = 「しらせ」舷窓に貼り出された第49次隊出発のポスター
Date = 2007-11-13
Source/Author of photograph = Vantey
Permission of poster = Copyrighted (2007) / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
Permission of photograph = Copyright (c) 2008 Vantey


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