「洗脳すれば少年達は もっとも残虐な殺人マシンになる」
「彼等にとって暴力はファッション」
そんな衝撃的な言葉を聞いたのは数ヶ月前。
なんとなく見ていた「世界◯受けたい授業」というTV番組でした。
これは自らを「紛争屋」と称する
伊勢崎賢治さんの言葉で
この方は国際連合平和維持活動(PKO)で世界の紛争地域に赴き、
武装勢力にそれを解除するよう働きかけてきたスゴイ人です。
「武装解除する」と表現してしまえばカンタンですが
伊勢崎さんの言葉を引用すれば
「武装解除の作業は、国連の多国籍軍を後ろに控え、
この盗賊集団のような現場の指揮官・隊長のところに出かけて行き、
投降するよう説得をする。
多国籍軍は、あくまでバックに。
僕たちは、素手で、完全武装している相手に立ち向かうわけです。
武装解除の説得は、朝から麻薬でラリって目の焦点が定まらない、
それも装填した小銃を目の前で弄んでいる連中を相手に、
こちらは非武装で話しかける。
これを辛抱強く繰り返すのです。」
と言うのですから そんなヒトが日本人で存在するの??という感じでした。
伊勢崎賢治さんについて調べているうちに
ブラッド・ダイヤモンドという映画が浮かび上がりました。
ダイヤモンドの採掘権を巡って政府と反政府勢力による
内戦が激化した頃の西アフリカ、シエラレオネという国が舞台で
国の天然資源であるはずのダイヤが
外国人によって国外に持ち去られていく状態が話のベースになっています。
この違法行為を見て見ぬ振りし続けたのは当時の腐敗した政府で
賄賂さえ支払えば警察も役人も税関も買収できた様です。
その紛争ダイヤが武器の購入資金、内戦の資源になりました。
「紛争ダイヤモンド」とは発掘される宝石のうちでも
紛争当事者の資金源になっているものを指す代表格で
実際のダイヤモンドに限定されていません。
それをブラッドダイヤモンド(血塗られたダイヤモンド)などと呼んだりするようです。
アフリカでは昔から 象牙、金、石油等の貴重な資源が見つかる度
常にそれとは無縁の人々が犠牲になってきました。
映画の中で「RUF」という組織が出てきます。
何も知らずに映画だけを見れば 村を襲撃して殺戮・略奪を繰り返し
村人を奴隷にしてダイヤを採掘させ
拉致した少年を少年兵に育成する反政府ゲリラ組織なのですが
RUFとは「Revolutionary United Front」、
革命統一戦線の略で
もともとはこの腐敗した当時の政府に対する「革命戦士」だったのです。
最初に書いた「殺人マシン」や「暴力」という衝撃的な言葉は
このRUFに洗脳されていった少年達のことでした。
少年の暴力に対する軽い憧れは(例えば戦闘ゲームやモデルガン)
兄の少年文化に色濃く影響されてきたので理解できます。
暴走したRUFゲリラはこの暴力をファッションにし
腐敗した政治に将来が見えない、希望が持てない子供達の革命思想を利用し
これ以上がナイ程の残酷な行為を繰り返していきました。
TV番組内で伊勢崎さんが「TVで言えるのはこの程度」と話してくださった
彼等の行為を私はココに書き残すことも出来ません。
分かりやすく解説しているブログを見つけました→
コチラ
結局、アメリカの介入により
このRUFの指導者をシエラレオネの副大統領に就任させ
少年兵に至るまで内戦中の全ての犯罪を恩赦するという
理解し難い「取り引き」により内戦はカタチだけの終焉を迎えました。
伊勢崎さんの「武装解除」はこの「取り引き」の上で成功し内戦終結へ繋がりました。
「説得だけで収まるような内戦は、この世に存在しません。
戦った連中が、その殺戮行為を反省し、平和の価値を見出し、
戦いが終るなんてナイーブな状況は、絶対に存在しません。
戦いを終らせるのは、「取り引き」です。」
映画ばかり見て夢見がちな私には理解に時間が掛かる程 超現実的な厳しい話でした。
人々の痛みを全く無視した「取り引き」の上にやっと辿り着いた一筋の道なのです。
このアフリカの人々のやり場のない気持ちは何処へ向かうのでしょうか?
2003年、紛争ダイヤの売買を阻止するキンバリー・プロセスが導入されました。
しかしそれをかいくぐって売買されているのが実情です。
そしてアフリカにはまだ20万人もの
少年兵がいるそうです。
ブラッド・ダイヤモンドに主演したレオナルド・ディカプリオ。
デカプーと言えばデ・ニーロを食ったとまで評価された「ボーイズライフ」
「ギルバートグレイプ」、人気を不動のものにした「タイタニック」。
大人になったよねー
でもこのテの映画は無理にオススメしません。
興味がなければ残虐シーンばかりの映画です。
もっと詳しく知りたい方にはコチラ→
伊勢崎賢治の15歳からの平和学
非常に分かりやすく、映画とあわせるとより一層イメージが掴めます。
更にいろいろ検索してみると
ダイヤモンドという鉱物そのものの価値観は大手流通会社が作った神話であるという話、
宝石業界を敵にまわしかねないこの勇気ある映画への賞賛、
アメリカに次いでダイヤの消費国である日本にとっても他人事ではない、
宝石店の店員でも「紛争ダイヤ」の意味を知らない、など
複雑に絡み合った話が見えてきて興味深かったです。