初めに断っておくが、私はアルコールにはまったく弱く、ビール一杯でジ・エンドという程の「微飲派」である。殆ど飲まないから、当然、ワイン通ではない。
敢えてワインを持ち出したのは、シトロエンのハイドロ・ニューマティックというシステムが、その基本的な形/乗り味を変えることなく熟成に熟成を重ねて今に至るその姿が、まるで「年代物のワイン」のようにも思えるからだ。
「ワイン好き」は多くても、実際にその味わい、香りを的確に見分けることができる人はそう多くない。ハイドロもこれと似て、その良さを本当に理解し愛情を持って接する機会に恵まれる人はそう多くない。
一見、普通の車だが、独特な味と香り、そして変わらぬ伝統を持っている。いや逆に普通の車としてみれば、細かいところから大きなところまで欠点もあり、むしろ劣っている部分も容易に見い出せる。しかし、それでもハイドロシトロエンは、なお独特の魅力と、他に代え難い個性を備えている。
日常の乗り物で、かつ一般人の保有が可能な機械として、ハイドロシトロエンは、幸運にもそれを楽しめる境遇にある人物にとって、最高の趣味の一つとなり得る。
クルマのない生活を迎えて早、2か月半が過ぎたが、これは偽りのない感想である。

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