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![]() 行列の対角化 |
フーリエ級数を学んでいない高校普通課程の生徒諸君向けの補足です.
上記の対称行列 A を対角化する直交行列 U = (u1 u2) を用いて
A = 4 u1 u1T + u2 u2T = 4 P1 + P2
と表現できます.同様に,上記の対称行列 B を対角化する直交行列 V = (v1 v2) を用いて
B = 2 v1 v1T + 3 v2 v2T = 2 Q1 + 3 Q2
と表現できます.Pk,Qk は射影行列です.このような表現をスペクトル分解とよび, y= y1(1 0)T + y2(0 1)T = U x となる (y1 y2)T や z= z1(1 0)T + z2(0 1)T = V x となる (z1 z2)T を x のスペクトルとよんでいるようですが,(y1 y2)T と (z1 z2)T では基底ベクトルが違います--- 2次形式 xT A x が一定である2次曲線を描くような場合,A の固有値分解は非常に有効ですが,基底ベクトルがバラバラな行列ではスペクトルは無意味です(U x,V x で考えるのであれば y,z は不要).
上記の行列 H はαやωが変わっても基底ベクトルが変わらないので,固有値をスペクトル(実数値で評価できる属性に着目し,その評価値の順に集合の要素を並べたもの)として扱うことは無意味ではなくなります.H は対称行列でもエルミート行列でもありませんが,
|λE-H|= (λ-α)2 + ω2 = 0
となる固有値は λ = α±iω,固有ベクトルは (1 ±i) です.
※ λを微分作用素 d/dt で置き換えると微分方程式 (d/dt) x = H x になり,初期値が x(0) = (1 0)T のときは x(t) = eαt (cos ωt sin ωt)T です --- 工業高校生の諸君はωがこの微分方程式を満足する電気回路やばねの共振角周波数であることをよく知っていると思います.
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