パパはね、
仕事から帰って、私を散歩に連れて行ってくれるんだけど、
もう、夜だし、外は蒸し暑いし、
面倒くさいな。
行きたくないな。
行くには行ったけど、嫌だ!
やっぱり、私、もう帰りたいー!
それでどうしたの?
リードを取ったら、家に帰っていったよ。
だから、一人で、ビールを飲みながら、散歩してる。
私は、晩御飯を食べ終わったころで、
まだ、食卓には、夫の姿があった。
ときどき、途切れながらのやりとりが、細々と続いた。
彼女は、反抗的だったからね。
お父さんは、一人でも行くよって教えるためだよ。
行かないなら、留守番よろしくっていうしつけ。
じゃあ、私も、反抗的な態度を取ったら、
そんな風に、あなたにそっけなくされるの?
素っ気無いんじゃなくて、相手を尊重しているんだよ。
お互い、心地よい行動を取ろうね。っていうコミュニケーション。
俺は、こういう目的で動くから、嫌ならいいよ。
その代わり、一緒には行動しないよ。っていう意思表示。
そう。
彼の行動には、いつも意味が有る。
私の場合は、ただのそっけない態度でも、
彼の場合は、相手を尊重する態度。
常に、相手のことも考えたうえで、
お互いにベストな行動が、それだったわけ。
一瞬の出来事に、毎回そうやって、答えを導き出せるって、すごいなぁ。
素っ気無い態度が、尊重という思いやりに思えてくるなんて。
彼の行動は、深い。
私は、あなたの行動に、どんな意味があるのか、全部理解できるようになりたいの。
ねえ、私、ずっと感じていたことがある。
あなたは、ひょっとして、先生なの?
彼は、続けた。
自分を知って、
他人を尊重して、
共鳴できなければ、
必要以上に
干渉しない。
彼はそれを
孤独ではなく、ひとりで、自分を整理するチャンスだと言った。
夫が、夜勤の仕事に行くのを見送った後、
急いで
LINEを開いた。
数分の差で、彼は、すでにどこかの家庭の人となっていた。