愛煙家の多事総論

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13対2

2006-07-07 20:10:40 | 国際情勢
アメリカのボルトン国連大使が、北朝鮮に対する安保理決議案の多数決の見通しを「13対2だ」と語った。

安保理協議 中ロの孤立際だつ

安保理は6日、北朝鮮のミサイル問題について協議する一方、安保理各国の実務者による作業部会を設けて、日本が提示している、対北朝鮮の安保理決議案の内容の具体的な検討を行いました。どちらの会合も引き続き協議は続けることで一致し、結論は出ませんでしたが、アメリカのボルトン国連大使は記者団に対し、「北朝鮮に対する対応で、決議案に賛成反対の割合は、13対2だ」と述べ、名指しはしませんでしたが、安保理15か国のうち、日本が提示しているような、拘束力のある安保理決議案に反対しているのは、中国とロシアだけであることを明らかにしました。これについて、今月の安保理議長国のフランスのド・ラ・サブリエール国連大使も日本の決議案への支持を表明したうえで、「中国とロシアの出方を見守りたい」と述べ、日本の対北朝鮮決議案をめぐる協議は、中国とロシアが焦点になりつつあるという認識を示しました。


中ロは、何故こうも北朝鮮を庇うのか・・・。
つか、そもそも彼らは北朝鮮を庇っているわけではない。両国とも現実外交の強者。北朝鮮などモルモットくらいにしか思っていないだろう。彼らがひたすら日米両国の決議案に反対するのは、「自国の為」でしかない。

仮に制裁決議案が通り、国際社会による北朝鮮包囲網が完成し、制裁が発動されたとしよう。中ロが恐れるのはその後の北朝鮮の動向だ。

まず、難民の流出。
ただでさえ北朝鮮難民(脱北者)に頭を悩ませている中国。また、アジア戦略の重要地であるナホトカ・ウラジオストクが北朝鮮国境近くにあるロシア。
両国とも、治安の悪化を招き、かつ人道的観点から支援するにしても強制送還するにしても金の掛かる難民など、1人として受け入れたくないだろう。
制裁が発動されれば、北朝鮮の食料事情はさらに悪化するだろう。今では軍人には一応配給しているようだが、それすらも危うい状況に陥る可能性が高い。軍人の士気は勿論下がるだろうし、職務に忠実ではなくなるだろう。「何をするにしてもまず食べることから」、というように、軍隊から食を抜いたらそれはただの暴力集団でしかない。
国境警備隊は脱北者を平気で見逃すようになるだろう。いや、脱北者を利用して食料の調達を頼むものも居てもおかしくない。さらに最悪なケースは、軍人の難民化。いわゆる武装難民が中ロに流れ込むことだ。治安の悪化だけは避けたい中ロとしては、このような結果を生みかねない制裁決議など、到底認められないだろう。
上記の理由は、両国ともに受け入れがたい状況だろう。

また、ロシアからすれば制裁発動により米朝間で紛争が勃発したら、その際にイニシアチブを取りにくい、ということがある。北朝鮮など駒の一つとしか見ていないロシアだが、仮に北朝鮮政権が崩壊するのならば、自分のそれに咬んで、甘い汁を吸いたい・・・それがロシアの本音だ。が、現状ではそれが出来ない理由がある。軍隊の再編成が進まず、極東方面部隊が結集していないこと。また、アジア方面監視の人工衛星が故障していること、だ。
この状況で紛争が勃発すれば、米中に遅れを取ることになるかもしれない。時間稼ぎの意味も、今回の制裁反対には含まれているだろう。

そして中国が反対する理由の二つ目は、アジア情勢での地位の失墜を防ぐ、というところにある。
今まで、中国は北朝鮮問題を利用することで、自分達が六カ国協議の議長となり、協議をリードし、北朝鮮問題ひいてはアジアの安全保障問題には自分達を欠かすことは出来ないとアピールし、そうすることでアジアのリーダーとしての地位を育ててきたし、アメリカに対抗する手段としてきた。

「北朝鮮問題は、俺達なしじゃ解決できないぜ?無視したら痛い目遭うぜ?」

といったメッセージだ。が、今回のミサイル発射で、中国が北朝鮮に与える影響力がほとんどないことがばれたわけで・・・。
中国からすれば、更なる権威失墜を防ぐためにも、是が非でも反対しなければならない。
ここで制裁決議を認めてしまえば、今までの中国の北朝鮮への「影響力」「対話外交」が、無駄だったと認めるようなものだ。制裁に反対することで、北朝鮮への影響力はまだ残っているということをアピールしなければならない。また、制裁を発動すれば、北朝鮮の暴走に備えて日米が日本海上に軍事力を展開させるだろうし、黄海への展開もアメリカは要請するだろう。中国からすれば、制裁が発動した後となればアメリカの黄海上への展開を抹香から拒否することは出来ず、結果的に中国の海軍の演習場を暴かれる結果となってしまう。
そんな事態になることは、中国からすれば何が何でも阻止しなければならない。
賛成する理由は皆無だが、反対する理由はごまんとある。
中国は制裁決議案に反対するのは当たり前といえる。



結局、今回の制裁決議案は通らず、北朝鮮への警告は議長声明だけに留まるだろう。拒否権を発動されれば、どうしようもないのが安保理委員会だ。
また、北朝鮮へ「国際社会の結束」を見せ付けるためにも、とりあえずどのような形でもいいから、北朝鮮への包囲網が整えなければならない。

日米が妥協して、議長声明に留まるだけだとは思うが・・・。
それでも、アメリカ嫌いのフランスですら決議案に賛成している現状で、強硬に反対する中ロが国際社会の目にどう映ったのか・・・。
それが気になる。



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