核実験強行

今日は、昨日の日中首脳会談と今日の日韓首脳会談の成果に関して言及しようと思ったけれど、最早その必要は無い事態となってしまった。何故というに、日中、日韓の歴史問題などを吹っ飛ばすような事態が起こってしまったからだ。言わずと知れた、北朝鮮による核実験強行である。

ちなみに、日中首脳会談にちょっとだけ言及。

　交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が有能ならば何一つ与えず返せ。
　交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が無能ならば大いに与え、歓待せよ。
　そうすれば、隣国では無能な者が重用され、有能な者が失脚する。そしてやがては滅ぶ。

　　出典：「六韜」（りくとう、中国の兵法書、太公望呂尚作と言われる）


この中国の伝統を安倍さんにもうちっと弁えて欲しいもんだ。

それはそれとして、北朝鮮がやっちまいました。

北朝鮮が地下核実験に成功…朝鮮中央通信

中国政府、「北」に異例の強い非難

北朝鮮の核実験実施発表の全文

米地質調査所、北朝鮮でマグニチュード4.2の揺れを観測



これにより、北朝鮮は実の部分では完全な「核保有国」となり、かつそのことを国際社会に存分にアピールすることとなった。
北朝鮮の悲願の半分は達成された。
北朝鮮の思惑は「名実共に核保有国」となることだ。核保有国となれば、アメリカは戦争しない・・・そう北朝鮮は踏んでいるのだろう。実際、前例主義に立てば、アメリカは印パ核実験時に、激越な口調で非難したが、結局は彼らの「核保有」を認め、経済制裁も解き、勿論武力制裁をするようなこともしなかった。
北朝鮮も「核保有」さえ認めさせれば何とかなる・・・そう思っているのだろう。

しかし、北朝鮮が見誤っているのは、インドの核保有は結果的に「中国への牽制」となるのに比べ、北朝鮮の核保有は徹頭徹尾「アメリカとその同盟国（日韓）」をターゲットとしているところにある。要するに、北が核を持つことでのメリットは寸分もなく、逆にデメリットばかりがある、ということだ。アメリカは断固とした処置を取るだろう。
が、かといってアメリカがすぐさま武力制裁を行うことなど不可能だ。開戦と同時に北の核が日韓どちらに落ちないとも限らない。その恐怖心理こそが「核抑止力の強み」なのだ。その逡巡こそが北朝鮮の狙ったものであり、欲しいものだろう。
その逡巡をカードに、北朝鮮はアメリカと取引したい。が、アメリカも世界の警察を辞任し、テロリストを許さず、核保有を許さず、を建前としてきたため、取引に応じられるはずもない。
恐らく、全面経済制裁、そして包囲的経済制裁を全世界に呼びかけるだろう。
勿論、そんなことになれば北朝鮮も黙ってはいないだろう。下手をすれば、既に狂いかけている北朝鮮が完全に狂って、日韓に核を打ち込まないとも限らない。
が、そんなことになれば米朝は全面戦争に突入しかねない。そうなったら「北朝鮮の存続」を望む北朝鮮の目論みは藻屑と消える。結局、北朝鮮は「撃つぞ撃つぞ？」と脅すしか仕方なくなる・・・。
かといって北朝鮮が発狂したらどうなるか分からない・・・・。
もはやチキンレースである。
しかしアメリカは他国を賭けものにしているのに対し、北朝鮮は自国を賭けものにしている。北朝鮮の方が、少しだけ腰が弱くなるだろう。


そして、これからの動向が注視される中韓。

まず中国について。
前日、日中首脳会談で核実験阻止についての努力で合意したが、完全にそれに泥を塗られた形となった。中国の面子はミサイル発射以降、ことごとく潰され続けている。
が、中国は北朝鮮の核実験強行の意思が強いことを弁えていた。北朝鮮の核実験発言時、北朝鮮は北京に金正日の腹心４人を送り込み、その意思の堅さを中国に伝えた。中国は無論反対しただろうが、「止めても、強行するだろう」という北朝鮮の意思は十分に汲み取れていたはずだ。
国際社会的には面子を潰されたように見える中国だが、実際はそこまで深刻ではないだろう。
また、中国は北朝鮮に対して猛烈な批判をしたが、これとても、日米、国際社会へのリップサービスと受け取れなくも無い。
中国の「本気」は、安保理決議時に国連第７憲章を入れるときに拒否権を発動するかどうかの時に分かる。


そして、今までひたすらに、盲目的に「太陽政策」を行い、ひたすら北朝鮮に献金し、挙句ことごとく面子を、上辺だけでなく本当に面子を潰され続けてきた韓国。
日韓首脳会談も終わり、ノ・ムヒョンは

「北の核実験は決して容認できるものではなく、断固とした処置を取る」

と発表したが、如何なものか。かつて、北朝鮮の核保有を是とし、逆にアメリカに自制を求めたことすらあるノ・ムヒョン政権。とりあえず経済制裁には同意するだろうが、日米と足並みを揃えるかどうかとなったらまた微妙な問題だ。
ノ・ムヒョンは「民族」の自意識が強い。いざ制裁、となったら腰砕けになり、骨抜き制裁しか行えず、結果的に日米からも白い目で見られ、北朝鮮からも罵倒され、国際社会からも馬鹿にされる・・・という可能性も考えられる。

また、韓国にとって手痛いのは、これによって外国人の投資が減る上、対北朝鮮事業のほとんどが潰れてしまうということだろう。経済も打撃を受け、政治も打撃を受け・・・。
そして、この北朝鮮の核実験、核保有により、北朝鮮と韓国の軍事バランスは完全に逆転した。最早、いつ第２の朝鮮戦争・・・いや、朝鮮戦争の続きが始まってもおかしくない状況へと追い込まれた。

政経軍・・・全ての面で窮地に立たされた韓国の未来は、難しい舵取りを要求されるだろう。


そして日本。今現在、放射能汚染の心配は無いため、そのことに関しては心配は無いだろう。だが、北の核保有を確実となった今、いつ首都圏に核が落ちてこないとも限らない。日本の経済制裁への報復としてか、アメリカとのチキンレースのとばっちりとしてかは分からないが、日本は「核で狙われている」状況となった。
日本が強硬策に出るにしても、慎重に行わなければならない。米国に盲目的に従うのではなく、自分達が「北朝鮮の核の攻撃範囲」に入っていることを自覚して制裁を行わなければ、思わぬ齟齬を生むだろう。



何にしても、これからの各国の動向は見逃せない。