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クインシー・ジョーンズProduceのヒット曲 ☆ あえてMJのヒット曲を外してみた ☆

2013年08月18日 | Producer
 クインシー来日公演、4時間にも及ぶけど濃厚な公演だったみたいですね。広島にも来たんですね。クインシーファンは、業界関係者も多いし、やっぱ音楽をわかってる人が多く行ってる感じ。
 私がクインシー・ジョーンズにふれたのは、やはりマイケル・ジャクソン経由であり、クインシーを調子乗って語れるほど詳しくはないですが、前からまとめてみたかったのでちょっと特集を。
 以前、ビルボードで発表されたクインシー・ジョーンズBEST20というのがありました。
 
1. Billie Jean / Michael Jackson (83)
2. We Are The World / USA For Africa (85)
3. Beat It / Michael Jackson (83)
4. Rock With You / Michael Jackson (80)
5. Baby Come To Me / Patti Austin with James Ingram (83)
6. Man In The Mirror / Michael Jackson (87)
7. The Girl Is Mine / Michael Jackson & Paul McCartney (83)
8. The Way You Make Me Feel / Michael Jackson (87)
9. It's My Party / Lesley Gore (63)
10. I Just Can't Stop Loving You / Michael Jackson with Siedah Garrett (87)

11. I'll Be Good To You / The Brothers Johnson ((76)
12. Bad / Michael Jackson (87)
13. Dirty Diana / Michael Jackson (88)
14. Don't Stop 'Til You Get Enough / Michael Jackson (79)
15. Give Me The Night / George Benson ((80)
16. You Don't Own Me / Lesley Gore (64)
17. Wanna Be Startin' Somethin' / Michael Jackson (83)
18. Strawberry Letter 23 / The Brothers Johnson (77)
19. Thriller / Michael Jackson (84)
20. She's A Fool / Lesley Gore (63)

 ヒットシングルという点ではマイケルとの作品が圧倒的。ベスト20のうちマイケル・ジャクソンとの曲が12曲。クインシーの長いキャリアの中でも、やはりマイケル・ジャクソンとのWORKSは特筆するものがあります。
 いわゆるジャズ畑ではクインシー・ジョーンズの名は知れ渡っていましたが、私のようにマイケル・ジャクソンを介してクインシー・ジョーンズを知った人は多いと思います。そして「We Are The World」でスーパースターを統率しているクインシー・ジョーンズの姿も多くの人の目に焼きついたと思います。
 ただこの方のキャリアはマイケルのみで語られるほど薄くはない。というより、アメリカ音学界を牽引してきた人、生き証人みたいな存在でもある。トランぺッターとしてプロデビューしたのが14歳の時だそうで、それからアレンジャー、プロデューサー、指揮者、映画音楽家、レコード会社の重役、様々な形で音楽業界の第一線にいるわけです。
 50年代は、ビックバンドの代表格、カウント・ペイシー楽団で才能を発揮するクインシーですが、そのクインシーがマイケル・ジャクソンのようなアーティストを手がけるなど、誰が想像したでしょう。
 ヒット曲という視点で見ると、マイケルWORKSが際立ちますが、これまで手がけてきたアルバム、楽曲の質はどれも高く、ジャンルを超えたそのサウンドスタイルは、各方面に多大な影響を及ぼしてきたと思います。クインシーもアルバムを通して聞くアーティスト。参加アーティストも豪華すぎるゴージャスなアルバムばかりですし。
 グラミーでの評価も非常に高い。プロデューサー部門では、78年から83年まで6年連続ノミネートされ、81年と83年に受賞している。(後、90年も受賞)すごく興味深いのは、彼が大ブレイクした時の年齢。彼は1933年生まれ、『スリラー』プロデュース時は49歳。一般的には、20代はビンビンの感性が全開、そしてそれに経験値も加わるのが30代、40代になるとある程度成熟した感じで、Creativeなマインドも減退すると思うのです。世の中の男どもの感性は著しく劣化し一気におっさん化する。しかし、クインシーがいわゆるHOT100(ポップチャート)でヒットシングルを生み出した時期は40代なのです。
 クインシー・ジョーンズは天才とよく言われますが、自伝も読んで感じたのが、音楽への飽くなき欲求というか、貪欲さのすごさ。そしてあらゆるものを吸収し消化する才能のすごさを感じた。その貪欲さの根底には、彼の育った“貧困”という環境もあったように思う。さらにすごく強運の人だなと思った。運を引き寄せる力がすごい。
 クインシーは、人としてもとても魅力的な人なんだと思う。彼の周りには多くの人が集まる。そして、自分のイメージに基づき一流ミュージシャンを配し、指揮者のごとく統率し、最高のエンジニアのもとレコーディングをする。
 クインシーサウンドを最終的に仕上げるブルース・スウェディンの手腕も見逃せない。
 一方、やはりおれのFav No1 Producerのジャム&ルイスは、テクノロジーの進化の恩恵を受けたプロデューサーチームだと思う。一流ミュージシャンを集めなくとも、テクノロジーと抜群のセンスでそれを代替した。
 といってもクインシーも、テクノロジーを積極的に導入した。80’Sはテクノロジーと生楽器が融合し始めたDECADEだと思うけど、それはクインシーとマイケルとの三部作を見ても感じれれる。『オフ・ザ・ウォール』、『スリラー』、『BAD』とどんどんデジタル化していく。三部作の中間である『スリラー』は、生楽器とテクノロジーのバランスが最高のアルバムだと思う。
 さて、クインシーのヒット曲なのですが、彼の最初のヒット曲は、63年、16歳のアイドル的な歌手・レスリー・ゴーアの「涙のバースデイパーティー」でした。見事にこの曲はビルボードの1位に輝きます。

涙のバースデイ・パーティ~レスリー・ゴーア・ベスト・セレクション
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 クインシーは彼女の歌声にほれ込み、多くの楽曲を作りヒットを生みます。このTOP20の中にも3曲入っています。やはりアレンジャーとしての彼の才能が光る名曲。録音的には古いけど、すごくキャッチーな曲。この曲、耳にした事のある人は多いと思う。クインシープロデュースだったんだっておれも思った一人。
 私はコンテンポラリーなブラックミュージック世代なので、今回は独断で76年以降のクインシーのヒット曲を集めたいと思います。
 なぜ76年なのかというと、やはりクインシーの転換点となったのは76年の『メロー・マッドネス』。この2年前に脳の動脈瘤が破裂して生死をさまようという出来事があります。ここでもクインシーの強運は働き生還する。死の淵からよみがえったクインシーは「すべてのものが輝いて見えた」と述べています。生還したクインシーの復帰作でもあったのです。この時、クインシーが逝っていたら、マイケル・ジャクソンとのWORKSはなかった。
 前作74年の『BODY HEAT』もカテゴリーにくくられない実験的な作品を作り上げていますが、この『Mellow Madness』からいわゆる洗練されたブラックミュージック的なサウンドになってきています。カテゴリーはジャズになっているのだけど、ジャズだけでおさまるアルバムではない。

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 レコード会社もそれまでのクインシーが手がけてきたジャンルから、ジャズのカテに入れてると思いますが、プリンスも然り、本当の才能はカテゴリーにそまらない。そもそもクインシー自身、カテゴライズされるのがすごく嫌いみたいで、カテゴリーなんて便利さのためだけにあるようなものだと。真の音楽にカテゴリーなんて関係ないと。
 この辺は、マイケル・ジャクソンの思いとも通じるものがあるのではないかと思う。だからこそ『スリラー』が生まれたのだと思う。
 『メロー・マッドネス』は、ブラックミュージックのもつかっこよさとロマンティックさを追求した。そしてクインシーが発掘した才能、ジョンソン兄弟がそれを後押しした。
 そして翌77年、ブラザーズ・ジョンソンの「I'll Be Good To You」がヒット。エポックメイキングな作品です。間違いなくこの2作品なくして『オフ・ザ・ウォール』はない。
 マイケル・ジャクソンは、EPICでのソロアルバムのプロデューサーを探すのにクインシーに相談したといいます。でもほんとは、ぜったいクインシーに直接頼みたかったんじゃないかなって思う。シャイなマイケルは、直接いえなかったにちがいない。当時のEPICの幹部や、父親のジョーは、クインシーをジャズのプロデューサーで、マイケルとは畑違いという認識だった。たしかに、当時はまだR&Bではヒットという視点では爆発的なブレイクはなかった。
 しかし、当時のシーンにおいて時代の先をいっているサウンドなのは明確です。そして、マイケル・ジャクソンはやはりそこをわかっていたのだと思います。「自分をプロデュースしてもらうのはクインシーしかいない」と。
 そしてクインシーの自伝にもある、彼がマイケルのプロデュースを引き受けたエピソードが素敵。
 マイケルが出演した映画『ウィズ』の中でのセリフで、マイケルはギリシャの哲学者のソクラテスの名前を間違えて発音し続けていたそう。しかし、誰もそれを指摘しない。そこでクインシーがその発音の誤りを指摘したわけですが、マイケルのその反応にハートをつかまれた。マイケルもそれなりのキャリアを積んでいるわけです、そうでなくとも、誰だって普通に間違えを知らないまま続けていたら恥ずかしさはあるはず。
 もしマイケルが、クインシーの指摘に「そんなの知ってたよ」って虚勢を張っていたらクインシーとのつながりは断たれていたように思います。
 しかし、マイケルは純粋に、大きく目を見開き「そうだったの~」っと答えた。その純粋さ、素直さにクインシーは、「マイケルとなら何かをやれる。彼の成長の手助けが自分にできる」と思ったのだと思う。そして『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』『BAD』と奇跡の3部作が出来上がるのです。クインシーだけでは作りえなかった、そしてマイケルだけでも作りえなかった。やはり2人の才能がスパークして出来上がった作品だと思います。
 というわけで76年以降のヒット曲で、さらにマイケルをのぞいた楽曲をPick Up!!  前述のビルボートが発表したベスト20と93年、音楽之友社出版の『ビルボード・ベスト・オブ・ベスト』の中のクインシーTOP50を参照しました。(93年発表時では、「ビリージーン」の1位は変わりないですが、2位が「Rock With You」で3位が「Beat It」でしたが、13年では2位が「We Are The World」になってる)

We Are The World / USA For Africa (85) 1位

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 80'Sを代表する1曲。あの時代のスーパースターが一堂に会した。きっかけはシリアスなアフリカ飢餓だったけど、これだけのスターが集まった出来事は超エキサイティングだった。
 そしてそのスターたちを統率するクインシー・ジョーンズの姿は多くの人の目に焼き付いたと思う。私もその一人。
 ライターは、マイケルとライオネル・リッチー。当時は、マイケルとリッチーの役割分担は半々かと思っていましたが、後に発表されたデモバージョンで、ほぼ曲はマイケルが単独で書き上げていた事がわかります。
 ほとんどのスターがいる中、マドンナとプリンスはいない。成熟した今なら、間違いなくかけつけると思うけど、当時はスターとしてのプライドが参加を妨げた感じ。(そもそもマドンナは声がかかっていない感じ)
 プリンスなんて、ボディーガードにトラブルを起こさせて既成事実を作るなんて手が込んでる。その後、チャリティーソング的なものは多く出たけど、この曲のインパクトをこえるものはない。あったとしたら未発表の、これもマイケル主導で製作された「What More Can I Give」だと思う。
 2010年、ハイチ地震の被災者支援のため、25周年ともかさなり再び新たなスターたちで「We Are The World」が再びレコーディングされた。その時、指揮をとったのも77歳のクインシー・ジョーンズでした。

 Baby Come To Me (あまねく恋で)/ Patti Austin with James Ingram (83) 1位

Every Home Should Have One (Original Rec
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 パティ―・オースティンもクインシー・ファミリーの一人。クインシーのソロアルバムでも、フューチャリングボーカリストとして参加。クインシーの求めるレベルに応え、クインシーが設立したレーベル・クエストのアーティストとして登場したのがこの『Every Home Should Have One』(邦題:『デイライトの香り』)。
 ここから同様にクインシーのアルバムでフューチャーされたジェームス・イングラムとのデュオ「Baby Come To Me」(あまねく恋で)が全米1位に輝きます。当時のクインシーSOUNDは、グルーブ路線とメロー路線がありましたが、メロー路線の代表格の1曲ともいえる。ライターはもちろん腹心のロッド・テンパートン。クインシーの描くサウンドのビジョンにロッドの曲は欠かせない。
 自身のレーベルアーティストということで、自身のアルバム以上にクインシーの息のかかった一流ミュージシャンが集結しています。東海岸(ニューヨーク)と西海岸(LA)の両方で録音されている。
 ブルース・スウェディンの録音も素晴らしすぎる1枚です。ロッド・テンパートンも表題曲の他に3曲を提供。この洗練されたスタイルはシーンにも大きな影響を与え、ブラック・コンテンポラリーという言葉も浸透していったように思う。
 余談ですが、パティのクエストレーベルからの3枚目のアルバムに売出し中のジャム&ルイスも起用されています。クインシーも注目したプロデューサーという事なのでしょう。ここでジャム&ルイスもクインシーにいろいろと助言ももらったみたい。

I'll Be Good To You / The Brothers Johnson (76) 3位

Look Out for #1
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 クインシーが発掘したルイスとジョージのジョンソン兄弟。クインシーは才能あるアーティストへのサポートも惜しまなかった。クインシー主導とはいえ、曲も書けるブラジョン(70年代からリアルタイムに知ってる人はこう呼ぶ)のギターPlayは強烈な個性を感じさせます。
 特にルイス・ジョンソンのベースは、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』で如何なく発揮される。ジョージのボーカルはライトでパンチ力はないですが、グルーブ先行のサウンドなので、このライトさはいい感じではあります。
 クインシーは、このデビューアルバムから3作品のプロデュースをします。それぞれのアルバムからCreativeでキャッチーな曲がヒットしています。
 最初のヒット曲の「I'll Be Good to You」を聞いたのは、ブラジョンの方ではなく、『Back On The Block』に収録されたレイ・チャールズとチャカ・カーンのバージョンの方が先でした。
 そっちの方のインパクトが強かったので、もとがこんなソフトな感じだとは知らなかった。同じく『Back On The Block』に収録され、テヴィン・キャンベルが歌った「Tomorow」もブラジョンの曲とは知らなかった。

Strawberry Letter 23 / The Brothers Johnson (77) 5位

Right on Time
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A&M Super Budget

 当時、マイケルも一番のお気に入りだったという曲。ブラジョンは、ライターとしてもすごい。楽譜を読めなかったジョンソン兄弟に、音楽的な事もクインシーは惜しむことなく教え込んだといいます。クインシーの器のデカさを感じます。マイケルは、様々な魅力がつまったブラジョンのこの曲を聞いて、自分をプロデュースするのはクインシーしかいない!って思ったんじゃないかな。あと、78年のクインシーのソロ、さらにカテゴリーの壁を破っている『スタッフ・ライク・ザット』にもしびれたんじゃないかな。
 『オフ・ザ・ウォール』の前のクインシーのR&Bにおけるヒット曲は、確かにブラジョンの「I'll Be Good To You 」と「Strawberry Letter 23」くらい。エピックやマイケルの父親のジョーが、プロデューサーのクインシーに難色をしめす理由もわかります。
 しかしとんでもない成功というものはいつも既成概念を超えたところにある。マイケルは、クインシーが手がけたブラジョンの曲を聞いて、いやこの「Strawberry Letter 23」を聞いて確信したに違いない。

Give Me The Night / George Benson (80) 4位

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 グルーブ路線とメロー路線が絶妙に融合した1曲。もちろんライターは、ロッド・テンパートン。そしてクインシーが設立したレーベル、クエスト・レーベルの第1弾アーティストが、移籍したジョージ・ベンソン。
 この曲は見事にヒットし、グラミーでも、ジャーメイン・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーを抑えて、最優秀R&Bボーカルに輝く。
 ギターリストとして超一流の彼が、ボーカリストとして評価されたのもすごい。ボーカルのテクニックがすごい。
 このアルバムも、これまでの彼のイメージであるジャズ・フュージョンからブラック・ミュージックにクロスオーバーしている。
 アルバムもすごく聞きやすく心地いい。ロッド・テンパートンも5曲も曲を提供している。ラテン調の「Dinorah Dinorah」もすごくお気に入りのインスト。そしてやっぱりスウェディンの録音も最高。

 Stomp / The Brothers Johnson (80) 7位

Light Up the Night
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A&M Super Budget

 クインシーとブラジョン三部作のラストのアルバムからのヒット曲。この曲も、95年のクインシーのアルバム『Q's JUKE JOINT』でヒップ・ホップTASTEでよみがえる。
 マイケルの『オフ・ザ・ウォール』と同時期に製作されており、マイケルも「This Had To Be」でライターとバックボーカルで参加もしている。『オフ・ザ・ウォール』のグルーブが好きな人はこのアルバムも気に入るはず。より洗練されたブラジョンとクインシーのサウンドが展開される。
 個人的には『オフ・ザ・ウォール』収録のブラジョンが絡んだ「Get On The Floor」が最高に好き。『オフ・ザ・ウォール』におけるベースのルイス・ジョンソンの貢献度は、実は相当なものだと思うんだけど。

Love Is In Control / Donna Summer (82) 10位

Donna Summer
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Polygram Records

 『スリラー』と同じ年に発表されたドナ・サマーのアルバムからの1stシングル。80年に入りレーベルもゲフィンレコードに移籍するもヒットに恵まれず、そのドナをもう一度頂点に導くべく起用されたのが、マイケルの『オフ・ザ・ウォール』を成功させたクインシーでした。
 この「Love Is In Control」(恋の魔法使い)は、最高のグルーブ。ロッド・テンパートンもライターの一人。マイケルが歌ってもいいような曲。しかし、チャート的には10位です。
 アルバムも、かなりゴージャス。クインシーの力の入れようもすごい。何せ『スリラー』と製作時期は同じ。TOTO勢をはじめミュージシャンもかぶる。しかし、その後ヒットシングルは続かず、アルバムの売れ行きものびず。
 かなりの製作費をかけたと思われますが、セールス的には失敗作となっているアルバム。 
 さらに翌83年、マイケル・オマーティアンによる「She Works Hard for the Money」(情熱物語)がHOTで3位(R&B1位)という大ヒットとなり、尚更、陰に隠れた感のあるアルバム。
 かといって駄作なわけがありません。乗りまくってるクインシーが製作したアルバムなのですから。ヴァンゲリスが作曲した「State Of Independence」には、ライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィック、ケニー・ロギンス、ブレンダ・ラッセル、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルド、そしてマイケル・ジャクソンもバックコーラスに参加!しか~し、私はマイケルの声がわかりませんでした。クインシーもこの時の経験は「We Are The World」製作時に役立ったと述べています。
 クインシーがこうして、自らの人脈を使って製作すればするほど、ドナ的には、自身がクインシーのアルバムのフューチャリング・ボーカリストのように感じてしまった部分もあるらしく、その辺の微妙な衝突を生んだそうです。当時、ドナもけっこうナーバスだったみたい。
 しかし、クインシーはけっして高圧的な人ではない。アーティストととのコミュニケーションを大切にし、最高のものを引き出そうとする。
 あまりクインシーもドナとのこのアルバムにはふれないし、しばらくの間、両者には若干溝があったのかもしれませんが、2012年5月17日のドナの訃報に際して、クインシーは「親愛なるドナ・サマーよ、安らかに眠れ。君の声は時代の鼓動であり、サウンドトラックだった」と哀悼の意を表しています。

Just Once / Quincy Jones featuring James Ingram     (81) 17位
One Hundred Ways / Quincy Jones featuring James Ingram (82) 14位

愛のコリーダ
クインシー・ジョーンズ
ユニバーサル ミュージック クラシック

 グラミーでも5部門受賞したクインシーの代表アルバム。日本でも知られている「Ai No Corida」(愛のコリーダ)はヒットとしては28位で、このジェームス・イングラムがリードをとるスローの2曲の方がチャート上は上。アルバムからは4曲のシングルがカットされる。自身が設立したクエストレーベルのプロモーション的な側面もあったよう。後にデビューする、前述のジェームス・イングラムとパティ―・オースティンがフューチャリングされている。
 最高級の2人のボーカルも堪能できるアルバムでもあります。
 このアルバムは、聞きやすさと心地よさという点でも逸脱。81年作ですが、録音のバランスも最高です。エンジニアのブルース・スウェディンの録音もさえわたっています。今聞いても録音バランスと抜けの良さは最高ですが、81年でこの録音はやばすぎます。なんかタイムマシーンにのって未来で録音してきたんじゃないのって思うくらい、奇跡の1枚。

 Yam Mo B There / JAMES INGRAM with MMichael McDonald(84) 19位

It's Your Night
クリエーター情報なし
Varese Fontana

 時期的には『スリラー』の後のクインシーのWORKSで興味深い。これもクエストレーベルからのアルバム。クインシーのお抱えシンガーだったジェームス・イングラムのやっとのアルバムデビュー作。しかし、それまでのクインシーアルバムでのフューチャーリングで、デビューアルバム前に、既に81年のグラミーの新人にノミネートされてるし、『The DUDE』収録の「One Hundred Ways」で最優秀R&B歌手も受賞している。
 この曲もロッド・テンパートンも作曲者の一人としてクレジット。グラミーでもマイケル・マクドナルドと共に最優秀R&Bボーカルデュオを獲得。テクノロジーを使ってのクインシーのアレンジャーとしての挑戦も感じる曲。
 製作陣も『スリラー』とかさなる部分も多いけど、やはり明らかに違うはアーティストとしての存在感。もちろんジェームス・イングラムをグラミーのR&B歌手を受賞するほどの力量の人だけど、アルバムはR&Bフィールドにおさまる感じ。マイケルの『スリラー』は、R&Bの要素も最高にあるけど、最高にポップな曲、最高にロックな曲もある。やはりマイケル・ジャクソンの存在感の凄さを感じてしまうのです。

 Do You Love What You Feel / Rufas & Chaka khan (80) 30位

マスタージャム
クリエーター情報なし
USMジャパン

 この曲は、POPチャートのランキングは下位なのですが、R&BではNo1となる。アルバムもR&Bでは1位。リードをとるチャカ・カーンとドラムのジョン・ロビンソンが光りまくるアルバム。特に「Do You Love What You Feel」のかっこよさと心地よさは半端じゃない。クインシー作品では外せない1曲でしょう。おれの2歳の子も手拍子してのってしまうほど。かっこいいSOUNDにかっこいいチャカのボーカルがあう。マイケルの『オフ・ザ・ウォール』とほぼ同時期に制作されたアルバム(発売は、ルーファスの方がちょっと後)で、参加ミュージシャンもかぶる。クインシーのリズム・アレンジがさえわたる1枚。

 以上です。あえてマイケル・ジャクソンとのWORKSを外したクインシーProのヒット曲から見えてくるものもあると思います。クインシーが、ジャズの世界のみにとどまっていたら、いわゆるHOT100でのヒット曲は生まれなかった。ましてやマイケル・ジャクソンとの伝説も生まれなかった。
 クインシーのジャズ畑の旧友は、ジャズから離れた事に非難する人もいたそう。だがクインシーにとっては、自分がやりたい音楽がすべてなんだと思う。そこにカテゴリーなんてない。ジャンル分けするのは、レコード会社だったり、カテゴリー好きの人たち。
 『スリラー』の成功に際してのカウント・ペイシーのクインシーへの言葉が印象的。「おい、マイケルとたいしたものを作ったな。オレやデューク(エリントン)は想像すらしなかったどデカい事だ。わかるかい?おれ達の想像を超える事をしでかしたんだぞ」と。
 クインシー・ジョーンズ、80歳での来日。41歳の時、脳の動脈瘤(それも二つ)の手術で生死の淵をさまよい、『BAD』製作の前の頃、うつ状態にもなっていたそう。でもほんとすごい元気。このバイタリティーは何なんだろう。女性と音楽が大好きなとこかな~。
 クインシー作品をまとめていたら、マイケルとクインシーについて掘り下げたくなったのでまた次回!

☆今回の記事の参考にさせてい頂いた本です。
クインシー・ジョーンズ自叙伝
クインシー ジョーンズ
河出書房新社


Q80~グレイテスト・ヒッツ
クインシー・ジョーンズ,ポール・ゴンザルヴェス,ジョー・ニューマン,フレディ・ハバード,メジャー・ホリー,レイ・チャールズ,ジェローム・リチャードソン
ユニバーサル ミュージック クラシック

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