残照日記

晩節を孤芳に生きる。

民主主義の壁

2011-11-07 17:03:43 | 日記
【米世論調査 オバマ大統領劣勢】
≪アメリカABCテレビとワシントン・ポスト紙は、先月31日から今月3日にかけて、全米の有権者1004人を対象に世論調査を行った。それによると、オバマ大統領を支持すると答えたのは先月とほぼ同じ44%、支持しないと答えたのは53%で、ことし6月から不支持が支持を上回る状況が続いている。さらに、オバマ大統領の経済対策について61%が「不満だ」と答えたほか、雇用対策についても57%が「不満だ」と答え、景気や雇用を巡って、多くの有権者がオバマ大統領に厳しい評価をしている。また来年11月に行われる大統領選挙について、投票するための有権者登録を済ませた人でみると「オバマ大統領に投票する」と答えたのは46%だったのに対し、「共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事に投票する」と答えたのは47%で、オバマ大統領は1ポイントながら先行を許しており、選挙を1年後に控え苦しい戦いを強いられている。≫(11/7 NHK)

∇世界の大国或は強国の名を恣にした米国も、“政治不信”の真っ只中だ。今朝の朝日新聞社説は、【提言 政治を鍛える〈序論〉】と題して、世界的に昏迷する政治不信を払拭すべく、≪時代にふさわしい民主主義を築くために、何をすべきか。次回から具体策を提言していく。≫と大見得を切った。現状政治の趨勢を次の如く分析していることに依存はないのだが。≪いまの政治のていたらくは「民主主義の結果」であることも間違いない。…難しい現実を解決するために汗をかくよりも、選挙めあてに甘言を弄する。そんな浅薄な民主主義観の表れに見えてならない。 民主主義国で、有権者に痛みを求めることがいかに難しいかは、ギリシャを見ればわかる。国境を超えて即決を迫る経済のスピードに、民意を束ねる政治がついていけない。 危機の足音は、主要7カ国の一角、イタリアにまで迫る。日本も、政治の鍛え直しを急がねばならない≫ と。そして≪政治の鍛え直し≫には、≪すべての政治家にこれまでより高度な民主主義の技量が求められる≫として、①聞く力( 政治に届きにくい声にこそ耳を傾ける力)、②選ぶ力(真に必要な政策に優先順位をつける力)、③説く力(苦い現実を正直に語る力)をあげている。

∇大上段に構えたまで良かったが、「序論」からしてこの程度では先行き頼りない。まあ、期待せず付き合っていくことにしよう。現行「民主主義」が世界的に行き詰まりを見せ、新しい方向を真剣に模索しなければならないことだけは、隠居老人にとっても焦眉の課題であるからである。何故か? 例えば米国発「ウォール街」騒動は、単に失業率9%云々の問題ではなく、仕事を得ている人々でさえ、普通に暮していくに必要な給与の絶対額不足を裏事情に潜めていることを、“他山の石”として重く感じているからだ。米国では先日までエリートだったMBAホルダーでさえ、今日は無料クリニックに殺到し、公園の一角にテントを張る。タクシー運転手も燃料費さえ稼げなくてテント暮らし。「今、陸軍に入る手続きを取っている。それしか道がない」と嘆く若者。英国でも「反格差デモ」参加者が、ロンドンのセントポール大聖堂前で、色とりどりのテントを張る。喫緊例としては、国家存亡の危機に瀕しているギリシャが、連立協議に基本合意したとはいえ、国民たちに待ち受けているのがリストラと増税と年金カット──これからが寧ろ苦難の始まりだ。

∇国際通貨基金(IMF)監視下で、財政再建や経済改革を再構築することに決まったイタリアにしても同様だ。5日、政府が進める緊縮政策に抗議する大規模なデモが行われ、参加者は、ベルルスコーニ首相の即時退陣などを訴えているが、これも大きな問題として波紋を広げるだろう。朝日新聞ヨーロッパ総局員の有田哲文氏が5日の「波間風間」で指摘している次の言葉が、問題を深く抉り出しているように思う。曰く、≪イタリアからの最大のメッセージは、おそらく財政再建の重要性ではない。財政の悪い国が競争力を失ったらどうなるのか、という現実だ。≫と。この≪財政の悪い国が競争力を失ったらどうなるのか、という現実≫は、「民主主義」存立上の根幹的問題で、世界的大不況期に於いて、“民主主義国家”全てが直面する、根源的最重要課題である。他人事ではない、日本こそこの問題に目をそらせぬターニングポイントにある。2011年度第3次補正予算案関連の復興財源法案など3法案が、今日午後の衆院本会議で審議入りした。復興財源法案は、東日本大震災の復興財源確保のため、所得税率引き上げなどの臨時増税を行ったり、復興債を発行したりする内容だ。どう決着するのか。不吉な予感がしてならない。