気になる植物たち

植物歴長いけど、世の中にはまだまだ気になる植物がいっぱい。花屋のQuの植物的ミニエッセイ。ときどき俳句。 ときどき古墳。

スズランエリカ 嵐が丘のヒース?

2008-01-24 20:52:17 | 店先で

 スズランのようだけれど、

 茎が細くて、葉が細かい、

 花も細かいのが、いっぱい。

 スズランエリカは、スズランに似た可憐さで一番人気のあるエリカです。エリカはヒースともいい、ツツジ科の常緑低木です。ヒースと聞いて、え?と反応する方、いませんか?青春時代の私もそのひとり。あの「嵐が丘」のヒースと、この可愛いエリカが同じものだったなんて!

 その後の調査(笑)で、エリカには南アフリカ原産700種と、ヨーロッパ原産20数種の2系統あることがわかりました。おおざっぱですが、南アフリカのものは、暑さには強いが、冬はやや弱い性格です。「嵐が丘」に出てくるイギリス北部の、暗い寒い原野に自生しているエリカは、当然ヨーロッパ原産のはずなのです。

 このスズランエリカは、残念ながら(?)南アフリカ原産なので、嵐が丘のヒースではありません。ジャノメエリカも、ファイヤーヒースも、クリスマスパレード(ヒエマリス)も、違います。ヨーロッパ原産なのは、花のもっと小さい草丈の低いダーレンシス、カルネア、エリゲナなどでした。

 やや地味ですが、ひそかに生命力を蓄えたエリカが、嵐が丘にはやはりよく似合うということですね。

 

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クリスマスローズ

2008-01-23 20:35:03 | 庭で

 クリスマスローズもキンポウゲ科。大きく開く花びらは、実はガクなので、花の寿命が終わってからも、長期にわたり鑑賞に堪えます。ガクが落ちないことから、学が落ちない受験の花、なんてこじつけで売られているものも見かけます。



 満開。


 



 おしべがはらはらと散っていく。


 



 緑になったガクも美しい。


 



 実が大きくなり、そろそろ、ガクにもシミが出てきました。


 


 クリスマスローズの伝説をご存知でしょうか。


 キリスト生誕の折、人々が豪華な贈り物を持って集まってきたのを見て、貧しい敬虔な少女が何の贈り物もできないことを嘆いた。すると、あたり一面の雪原に天から一筋の光が射す。少女が駆け寄るとそこに一輪の純白の花が咲いていた。少女は天に感謝を捧げ、その花を幼いキリストへの贈り物とした。


 だから、本当はクリスマスの頃白い花を咲かせるニゲルだけが、クリスマスローズと呼ばれるべきなのでしょうが、実際は、ヘレボラス全体をそう呼んでいます。覚えやすい美しい名前だからでしょうね。


 ついでに、ローズマリーの伝説。


 幼いキリストを抱いて旅をする聖母マリアが、泉のほとりでお休みになられた。その時、青い上着を傍らの白い花の咲く木にかけられた。聖母マリアの立ち去られた後、その花は青くなり、あたり一面良い香りが漂っていた。


 西洋では、美しい花、イコール バラなのでしょう。日本にも、キク科ではなくても、シュウメイギクやマツバギクがありますから。


 


 



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オキナグサ 絶滅危惧種に思う

2008-01-18 22:44:26 | 花市場で

 オキナグサ、キンポウゲ科。その昔は日本中にあった野草のようですが、今は絶滅危惧種です。園芸用の採集、植生の遷移、草地の開発が減少の要因です。100年後の絶滅確率はほぼ100パーセントだとか。(この写真のものは、何代にもわたり種を自家採取している栽培品です。)

 自然及び自然資源保存国際連合(IUCN)の2007年レッドリストに登録された絶滅危惧種は、動物、植物合わせて4万種以上あります。誰もが驚く数字ですし、人間との関わりの中で、絶滅する運命となった生物たちへの申し訳なさに胸を痛め、何とかしてあげなくては!と思うのは、当然の感情です。

 でも、例えば、ひとつの植物をことさらに保護するために、野山に柵や看板を建てることで、その他の貴重な命を踏み荒らしていることもあるのでしょう。人間は神ではなく、自然の一部です。人間が自然を荒らしてきた道のりも、自然の一部なのかもしれません。つまり、他の生物を絶滅させながら、自らも含まれた自然全体が同じ道を歩んでいくのかも。

 自然保護は人間保護。まずは、歩き、エコバッグを使い、汗をかき、寒さに震えることは、他の生き物のためではなく、自分のためなんだと、自覚して生きたいと思っています。ヒトがレッドリストに載る日が来ないように。

 

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トベラの実

2008-01-14 11:48:40 | 野山で

 八月に青く固かったトベラの実が、たくさんはじけているのに出会いました。

 青かった実の外側は茶色になって裂開し、中から朱赤の種が出ています。触ってみると、かなり強力にべたつきます。鳥たちが食べるだけではなく、体につけて移動することもねらっているのかもしれませんね。

 この木も独特の臭気を持ちますが、その枝を厄除け(鬼除け)として、節分に扉にはさむ習慣があったそうです。それで、トビラがなまってトベラ。なるほどの命名です。

 

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クスノキ  楠

2008-01-14 00:35:54 | 神社仏閣で

 神社仏閣などで、よく見かける大きなクスノキ。太い枝を四方八方に広げ、堂々たる姿です。



 松山市 阿沼美神社の大楠。



 大三島 大山祇神社の樹齢2500年と伝えられるクスノキ。



 黒い実がなっています。


 大学に入学したての頃、木のことなど何も知らない私に、サークルの先輩に教えてくれました。


 「クスノキの仲間は葉脈が葉の付け根から三本に分かれているから、すぐわかるよ。」


 それから30年経っても、私はクスノキを見るたびに、彼女のまじめな若い美しい顔を思い出します。人が人に教えるということ、もちろんその多くは忘れられるのでしょうが、何かの感動と共に脳に刷り込まれたことは、忘れないものですね。いろいろな植物に出会う度、そんな小さな思い出たちを反芻している私です。


 もし、クスノキに出会うことがあったら、三本の葉脈の分かれ目をよく見て欲しいのです。そこには、1ミリにもみたない小さなくくりぼっちのようなものがあります。それは、目に見えないほどのダニの家、ダニ室なんだそうです。不思議なことに、どの葉にもこのダニ室があるのです。ダニ室には、小さな小さなダニが住んでいます。このダニたちを食べる捕食性のダニも、必ずクスノキの葉には住み着いているのだそうです。そして、捕食性のダニたちは、クスノキに害を与える可能性のある侵入者のダニも食べつくしてしまう。つまり、クスノキを守ってくれる番人を定着させるための餌袋としての、ダニ室なのではないか、ということが、わかっているのだそうです。


 そして、クスノキといえば、あの独特の匂いがあります。仲間のニッケイ(シナモン)、ヤブニッケイも、個性的な甘い香りですね。クスノキからとれる樟脳が、昔は防虫剤の主流ですから、クスノキ自身も虫がつきにくい木なのでしょう。ダニ室と、その匂いで、クスノキは虫や病気からわが身を守り、長い年月を生き抜いているのでした。


 



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トウネズミモチ 唐鼠黐

2008-01-12 21:02:47 | 神社仏閣で

 


 子年にちなんで、ネズミの名がつく植物。1月2日に初詣に行った阿沼美(あぬみ)神社にその木はありました。初めネズミモチと思ったのですが、大木であること、枝がしなだれるほどの実付きの良さと、丸っこい実の形で、トウネズミモチのようです。ネズミモチの実は、もっと細長くネズミのフンに似ています。だから、ネズミモチというのは、ネズミのフンを知っている方たちには納得の命名です。




 トウネズミモチは、モクセイ科で、中国(唐)原産です。この大量の実でわかるように、繁殖力旺盛、種を調達し易いので、街路樹にも多いと聞きます。でも、晩秋に実ったこの実、1月だというのにこんなにあるのは鳥が好まないのでしょうか。調べてみると、鳥が実を食べて種の混ざったフンをすることで、どんどんテリトリーを広げるタイプの木です。(ネズミのフンに似た実を食べた鳥のフン!)つまり、食べきれないほどたくさん実るということで、鳥たちにとって、なんともありがたい木なのでした。


 


 



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