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高齢者の定義を変更しようという提言

2017-01-08 | 老人福祉
2017年1月5日に、日本老年学会と日本老年医学会の連名で、「高齢者に関する定義」についての提言が行なわれた。主旨は、「現在、65歳であることが多い高齢者の定義が現状に合わなくなってきているので、75歳にしよう」というものだ。
 
65~74歳 准高齢者 准高齢期 (pre-old)
75~89歳 高齢者 高齢期 (old)
90歳~ 超高齢者 超高齢期 (oldest-old, super-old)
 
 
健康保険制度では「前期高齢者」は65歳から75歳、年金制度の支給開始年齢は、「60歳」から「65歳」への移行が行われつつある。「生産年齢人口」は15歳から65歳未満となっており、65歳以上は生産年齢人口から外れている。しかし、「高年齢者雇用安定法」では55歳を高齢者とし、道路交通法の「高齢運転者標識」や、東京都の「シルバーパス」は70歳以上を対象とする。一方、「高齢者の日常生活に関する意識調査」という内閣府の調査では、「自分が高齢者だと思う人が過半数になるのは“75歳以上”」という結果が出ているという。
 
「皆さん身体的にも精神的にも元気のようなので」高齢者の定義を見直すという提言は、政府の思惑が透けて見える。
 
「専門家」のお墨付きで定義を見直し、老人も働き、年金支給年齢を下げ、厚生労働省は社会保障制度を改変するのに悪用するに違いない。75歳まで働けるのだから、年金要らないでしょということになる。90歳まで健康な人が多くなるんだから、健康保険制度も90歳まで三割負担でいいでしょということになる。しかし、こういう『若返り』現象の一方で、高齢者の貧困層が増え、認知機能が低下しているという現実もある。経済的余裕があり、生活をエンジョイできる人は確かに健康年齢は上がっているが、今の若い人が老年になるころ、果たして健康で元気な老人でいられるかは、甚だ疑問だ。最近、高齢ドライバーによる交通事故の増加が社会問題化している。新定義の高齢者である75歳にならない従来の定義の高齢者が重大事故を起こしている。70歳になると、免許書き換え時には、認知テストを受けなければならない。かなり個人差のあることなのだから、安全ということを考えるなら、健康でない人に合わせて定義するべきではないか。そんて、公平な社会保障制度を考えるのなら、資産や収入で年金支給年齢を変える方が合理的だ。一律に支給年齢を上げるのは貧困高齢者の政府による虐待にしか見えない。「身体的機能」の若返りなんていう煽てで、高齢社会の問題を一刀両断に解決してしまおうという意図が透けて見える。
 
そのために政府がこういう提言をさせたんじゃないかと、思ってしまう。個人の事情に鑑みてきめ細かく社会保障を充実させてほしいものだ。 単なる年齢で一律に社会保障を低下させる施策は、超格差社会の今、所得の再分配という政府の役割をないがしろにするものだ。

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