オータムリーフの部屋

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トランプ砲に右往左往の日本企業

2017-01-15 | 国際
トヨタのメキシコ新工場建設に反対するトランプの「脅迫」に、右往左往する企業トップのだらしなさ!!!
日本を代表するグロ-バル企業が脅しに弱く、ヤクザな大統領に世界戦略がコロコロ変わるのかと驚くとともに、嘆かわしく、将来が不安になる。企業だけでなく日本政府や自治体までが振り回されそうだ。
 
大統領就任前にもかかわらず、トランプ氏は自動車産業の空洞化阻止のためにツイッタ-によるトランプ砲で効率よく攻撃している。
フォード社はキシコ工場建設計画をキャンセルし、代わりにミシガンで新工場を建設するという。
 
アメリカとメキシコは、カナダを含めた3カ国で「北米自由貿易協定(NAFTA)」を構成している。これは、EUやTPPのような自由貿易圏で、域内の貿易は関税がかからない。「高関税をかける」という「トランプ砲」は、NAFTAから脱退しないと実現不能だ。そしてNAFTAの改訂は可能だが、簡単ではない。
 
トヨタは、フォードのように「建設中止」と発表していないが、「メキシコ新工場は、新規建設であって北米の工場を移転するものではない」、「小型車の供給により、北米販社での雇用増にプラスになる」という弁明をすぐにアナウンスした。さらに豊田章男社長が、「これとは別に100億ドル(1兆1000億円以上)の投資を北米で行う」と言明した。こんなに戦々恐々とする様は見苦しい。
 
GMはこの攻撃について冷静な対応を取った。「GMは従来から米国の雇用に尽くしてきている、工場投資については長期的な観点で考えるものだ」ということを冷静に主張した。
 
同じ1兆円でもソフトバンクのように、トランプ氏に直接話せば、イメ-ジがよくなるが、今回のトヨタの発表は、ただただ暴君の作戦に乗せられて、お金を差し出したようにしか見えない。
米国におけるコンパクトカ-市場の場合、価格は非常に重要。少しでもコストダウンをして、思い切って値下げするというのが、ビジネスの基本。もともと、エコカ-志向のトヨタは、温暖化否定論のトランプと相性が悪い。北米のトヨタファンは、環境問題に熱心な層が多く、トランプ氏を支持しない。トヨタがトランプに寄り添う姿はトヨタファンを失望させるかもしれない。グロ-バル企業として自らのポリシ-を大事に、毅然とした態度で臨んでほしいものだ。
 
トランプ氏の「私的ツイート」で世界中を右往左往させるのは、19日までだ。トランプ氏は合衆国大統領として、憲法と法律の範囲で行政権を行使しなければならない。
 
しかし、ハチャメチャの大統領がアメリカファ-ストの路線で想定外の政策を行使する可能性は高く、地球規模でとんでもないことが起こりそうな気がする。
 
エネルギー業界に対するトランプ氏の政策は明快だ。炭鉱作業員を職場復帰させ、再生可能エネルギーへの助成金を撤廃し、気候変動を止めるための世界的な取り組みに米国が参加することをやめる。
インパクトの大きかった雇用創出のメッセージを実現するために、滅びゆく産業を力づくで延命させようとする。一瞬にして共和党が最も大切にしてきた政策や理念を書き換え、先進諸国のポピュリストやナショナリストに活力を与えた。貿易面では自由貿易協定に懐疑的になり、移民政策では繁栄を支える労働力としてとらえるのではなく、経済的・社会的脅威としてやり玉に挙げる。共和党のブッシュ大統領はイラク侵攻を命じたが、トランプは当初から侵攻には反対だったという。給付金制度に関しても、かつての共和党は高齢者に対する給付金を削減する準備をしていたが、現在は逆の方向を向いている。
 
トランプの大きな政府に対して共和党は小さな政府、自由貿易に介入するトランプに対して共和党は自由主義。政府の過剰な関与を否定する共和党とは水と油だ。
 
トランプは企業を脅すことで経営判断に介入するが、今のところ、小手先の手段で、宣伝効果はあったもののいつまでもこの脅しが通用するとは思えない。減税や規制緩和については下院共和党と意見が合いそうだ。金持ち減税が景気を刺激し、いずれは低所得層にも恩恵が及ぶという「トリクルダウン効果」を信奉しているようだ。現実には、金持ち優遇は高所得者への富の集中を加速し、後戻りできない超格差社会を作ってしまった。トランプがもたらす地政学的リスクもマイナスだ。台湾を取引材料に中国に貿易交渉を仕掛け、米中関係は極めて悪化している。
 
 あれほど格差是正を待ち望んでいたはずの米国民が格差拡大、富裕層優遇を是としたのが今回の結果だ。低所得者層はクリントン支持だったが、それ以外の層は格差を是認しても、富裕層を圧倒的に利するとしてもクリントンを嫌忌する不満があったのだろう。貧すれば鈍するで目先の利益しか見えなくなるのも理解できるが、大国のアメリカがこの調子なのだから、日本の政治の劣化が顕著なのも仕方がない。楽しみなのは小池劇場だけだ。
 
一見トランプは、「反グローバリズム」に見えるが、反グロ-バリズムなのは人種や性別、商取引だけで、金融取引はグローバルで結構というもの。貿易協定を否定し他国からの製品の流入に高関税をかけて保護貿易を推進しつつ、海外で稼いだ利益の還流だけは米国内にしやすくする。金融取引に関しては90年代、2000年代の発想に戻して、実体経済の地味な成長とかけ離れた株高、ドル高を演出し、バブルに突入していきそうだ。投機筋は活気に満ちているが、バブル崩壊という結果が繰り返されるだろう。
 
2010年夏に成立した米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)の中核となる「銀行の市場取引規制ルール」をボルカ-ル-ルという。銀行が自らの資金(自己勘定)で自社の運用資産の効率を図るためにリスクを取って、金融商品を購入・売却また取得・処分をする事を禁止する。オバマ米大統領の呼びかけにより、ポール・ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長が提唱した。具体的には、米国の銀行によるデリバティブや商品先物の取引を規制し、未公開株ファンドやヘッジファンドなどへの出資も制限する。一方、顧客のリスク回避などを目的としたヘッジ取引や、値付け(マーケットメーク)取引、米国の国債や政府機関債、地方債のほか、外国銀行の在米拠点における外国国債の債券取引などは規制対象外となっている。2008年の金融・経済危機を引き起こした要因が米大手銀行の放漫経営にあり、金融機関の破綻や公的資金投入による救済が続出したことから、「預金者のお金を高リスク取引に二度と回させない」との理念に基づいて導入された。
トランプがボルカー・ルール(ドットフランク法)を廃止するのは確実(議会もそれを認める)との見方が多く、それにより金融機関のボルカー・ルール絡みのコストが下がるということで、金融株が上げのリード役になっている。株式市場の熱狂やバブルには金融株の上昇が不可欠であるが、現在、それが起こりつつある。
 

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