オータムリーフの部屋

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トニー・ブレア元英首相は戦争犯罪人

2015-10-29 | 国際
トニー・ブレア元英首相を戦争犯罪人として裁くべきだとする人が増えている。そうした中、10月25日にブレアはCNNの番組で「自分たちが知らされた情報が間違っていた事実」を謝罪した。
 
CNN: サダムは大量破壊兵器を持っていなかったのだから、戦争は誤りだったといえるか。
ブレア: インテリジェンスに誤りがあったという事実について謝罪する。また計画の一部にも誤りがあり、サダム政権を倒した後に何が起こり得るかを我々が十分理解できていなかったことについても謝罪する。
CNN: ISの台頭については、多くの人がその第一要因はイラク侵攻だと思っている。このことについてはどう思われるか。
ブレア: 幾分か事実であると思っている。2003年にサダムを失脚させた我々に、2015年の現状について全く責任がないとは言えないだろう。
CNN: あなたは同世代で最も成功した政治家だと評される一方で、戦争犯罪人とも呼ばれるようになった。どう感じられたのか?
ブレア: あなた方のいう私の「犯罪」について考えるとき、それはサダムを倒したことを意味するが、シリアで何万人もの人びとが死に行く様を見ていて……我々西側諸国は、これを傍観した。このことについては西側諸国に責任があり、責任の大部分は欧州にある。我々は何もしなかった。歴史の審判を受ける覚悟はある。いつも言っていることなのだが、イラク戦争の後も選挙には勝ったが、(私にとっては)常に大きな政治的な問題であったことは認めざるを得ない。諜報データが不正確だったことをお詫びしたい。また、作戦立案におけるいくつかの過ちについてもお詫びしたい。政権転覆後、何が起こるかについて、理解を誤った。ただし、サダムを追い落としたことそのものについては、お詫びするのは難しい。2015年の現代から見ても、彼がいるよりはいない方がいい。
 
ジョージ・W・ブッシュ政権の国務大臣だったパウエルは2002年3月28日、ブレア首相はアメリカの軍事行動に加わるとメモに書いている。この頃、アメリカではネオコン/シオニストなど好戦派はイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を破壊しようと目論んでいたが、統合参謀本部では大義がないうえ、無謀だとして反対意見が多かった。イギリスでも開戦が認められるような雰囲気ではなかった。そこで、アメリカやイギリスの政府はイラク攻撃を正当化するために「大量破壊兵器」を宣伝する。ブレア政権が「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書を作成したのはパウエルのメモが書かれた半年後、2002年9月だった。その報告書、いわゆる「9月文書」はイラクが45分で大量破壊兵器を使用できると主張している。しかも文書の内容がリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載した。この報告書をパウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物で、内容もイラクの脅威を正当化するために改竄されていたことが後にわかる。
 
つまり、ブレアは2002年3月以前にイラクを先制攻撃することを決断、それを実現するため、9月には嘘を承知で大量破壊兵器の話を広めて開戦へ結びつけたのであり、情報機関から「正しい情報」を知らされたにもかかわらず、「間違った情報」を発信したのだ。その結果、2003年3月20日にアメリカ軍はイギリス軍などを引き連れてイラクを先制攻撃、フセイン体制を倒し、12年以上を経た今でも戦闘は続いている。その間、フセインは処刑された。
 
一連の極秘事項は、ヒラリ-のメ-ル問題で明らかになった。約3万件の公務メールを公開するよう求められたからだ。
問題のパウエル氏がブッシュ氏に送ったメモは、2022年4月1日まで極秘扱いにされるはずだった。
 
(ブッシュ)大統領へのメモ:差出人:コリン・L・パウエル
トニー・ブレア氏はクロフォードでの会談を心待ちにしています。ブレア氏は会談で、次のテーマを話し合いたいと言ってきています。アフガニスタン、イラク、中東全般、ロシアとNATO(北大西洋条約機構)、貿易と開発。イラク問題では、米国がイラクへの軍事介入を必要と判断した時にはブレア氏はついていくとの意志です。米国の先導に従います。(中略)ただ現段階で、英労働党と世論はイラク軍事介入には納得していません。ですからイラクが国際的平和にとって脅威であることを広く信用させる必要があります。
 英国は重要な国際問題では米国の決断に従います。ただ英国民は米英両国が特別な関係を築いており、同等なパートナーでいる姿を見たいのです。
 
この会談で米英両国のイラク侵攻の必要性が話し合われ、ブレア氏が英語で言う「スピン・ドクター(広報担当アドバイザー)」としてイラクの脅威を国内外で説いていくことになった。
そこでブレア氏が求めたのが、「ブレアはブッシュのポチではない」ということだった。実際は米国がリードして英国が追随していくことを認めておきながら、対外的には対等を求めている。
 
 ブレア氏にしてみると、13年前にブッシュ前大統領と交わした秘密の約束が今になって公開されるとは思ってもいなかっただろう。
 対等であるとみなされていた国家の関係は非常に従属的なものであった。なぜ、こんな卑屈な役割をブレアが進んで引き受けたのか、真意はわからない。
 
 2006年10月に出されたイギリスの医学雑誌「ランセット」によると、2003年3月から06年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は戦闘が原因だとしている。またイギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに約100万人が殺されたという調査結果を公表した。
 
 
少しでも思考力があれば、大量破壊兵器の話に疑問を感じただろうが、日本の政治家やマスコミは戦争熱を煽るだけだった。そして、日本もイラクに自衛隊を派遣した。
これに対して、名古屋高裁は「多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸する活動は、他国による武力行使と一体化した行動で、武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」とし、その実態は平和復興支援とは名ばかりの軍事活動だったとして違憲判決を出し、確定している。しかし、小泉元首相は派兵の誤りを認めないし、謝罪もしない。
それどころか、安倍首相は先の国会の安保法案審議の中で「まず、そもそもなぜ米国、多国籍軍がイラクを攻撃したかといえば、大量破壊兵器、当時のサダム・フセイン、独裁政権が、かつては間違いなく化学兵器を持ち、そしてそれをイラン・イラク戦争で使用し、多くの人々を殺し、自国民であるクルド族に対してもこれを使用したという実績があったわけでありまして、そして、それを既に、大量破壊兵器はないということを証明する機会を与えたにもかかわらず、それを実施しなかったというわけであります。」と、フセインが悪いとばかりに、イラク派兵を正当化している。
 
大量破壊兵器がないことをどうやって証明できるだろう。そして今では、戦争を起こした当のイギリスの首相でもイラク戦争の誤りを認めているのに、日本の総理大臣たちは頑として過ちを認めない。こんな連中に「間違った戦争」の責任など取れるわけもない。
 
イラクの「独裁者」を排除したら、さらに残虐な「イスラム国」が台頭して、周辺諸国が戦争状態になり、シリアなどから何百万人もの難民が出る。戦争は、何も解決せず、混乱と苦しみを生むだけなのに、武器を消費させて武器輸出で儲ける大国は戦争がしたくてたまらないようだ。中東で起こっていることは、大国同士の泥沼の利権争いだ。ロシアが参入して勢力図は大きく変わるだろう。
 
「そうは見えないかもしれないが、ロシアのシリア介入は米国にとって僥倖だ」という説がある。1979年のアフガニスタン介入が1989年にソ連邦崩壊の原因になった先例を想起し、ロシア失墜の始まりだと見る。
オバマが「アサド政権とは戦わない、イスラム国とだけ戦う反体制派を養成する」などと言う非現実的な政策が効果なく終わったのに対して、プーチンはアサド政権を明確に支持して空爆を行い、世界のスンニ派に敵視される役割を買って出た。アメリカ人にとっては、肩の荷を降ろしたような気分なのかもしれない。
 
米国にとっては、ロシアのシリア介入のデメリットは、「米国が弱くなったように見える」ことだけであって、実際にはロシアが米国以上にシリア情勢に変化を及ぼせるわけではないという。シリア介入でロシアが多少とも「イスラム国」に対峙するならそれでいい、それでロシアが自滅すればそれはその時だ、という黙認による消極的な協力が基調となりそうだ。
 
 
ロシアはシリア軍に兵器を供給し、教育訓練を施してきた。最近の未確認情報ではロシア軍人が戦闘に参加しているとも言われてきた。それが急激な軍事支援増強に続いて、初めて公然と直接軍事介入に踏み切った。実際の目標は「イスラム国」に限定されることなく、アサド政権の掌握地域のうち、脆弱な部分を支える幅広いものとなる。「イスラム国」ではなく、「イスラム国」と競合・対立している反政府勢力も空爆の対象としているので、「イスラム国」にとってむしろ好都合となり、反体制勢力も「イスラム国」に結集しかねない。いっそう紛争を長引かせ、ロシアが巻き込まれていく可能性がある。ロシアが失敗するのは間違いないだろうし、アメリカも打つ手がない。イスラエル建国以来、中東は燃えさかる火薬庫であり、国民がいない国土で殺戮は続く・・・・

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