オータムリーフの部屋

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尊厳死で社会保障費を減らす

2017-12-09 | 政治
自民党の総裁選に正式に立候補を表明した石原伸晃幹事長の発言が、物議をかもしている。社会保障政策について話す中で突然尊厳死の話題が登場し、「尊厳死で社会保障費が減らせる」という趣旨らしい。
石原氏の失言は実に多い。
 
「ナマポ」対策で「私たちの試算ではマイナス8000億」   発言があったのは2012年の「報道ステーション」。ナマポとは生活保護の蔑称。
 
安倍首相の街頭演説で聴衆の「安倍やめろコール」に対して「民主主義を否定」「反対することだけしかできない人たちが妨害」(2017.7.1)安倍晋三首相も登壇し「こんな人たち」演説をし物議を醸した。
 
住民の反発が根強い放射能汚染土の中間貯蔵施設建設について「最後は金目でしょ」(2014.6.16)
 
自民党幹事長だった2012年、東京電力福島第1原発事故で汚染された土壌の保管先に関し「福島原発第1サティアンしかない」。
 
石原伸晃氏「市民は線量計持って歩くな」(2011.9.11)
福島原発事故に関連しては「市民に線量を計らせないようにしないといけない」(NHK番組)。
 
さらに「民主党は脳死状態」「胃ろう患者は寄生したエイリアンみたい」「脱原発は集団ヒステリー」など、石原伸晃のようなボキャブラリーセンスを持つ人は、稀有である。
増え続ける医療費の適正化を図るために政治家の考えるべきことは、効率的な医療サービスの提供と高齢者医療費の負担をどうするかという政策立案だ。しかし、石原氏のおつむの中には、高齢者を速やかに尊厳死させること、生活困窮者を健康保険から締め出すことしかないらしい。ご自分は尊厳死協会に加入されるつもりらしいが、そんなこと政治家の分際で国民にお勧めすべき話ではない。
 
 国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、日本の総人口は減少し続けており、2060年には8674万人になる。総人口に占める生産年齢人口(15〜64歳)の割合は、2010年の約64%から2060年は約51%に落ち込む。65歳以上の人口は2010年の約23%から2060年には約40%へと増加する。疾病を抱える高齢者が増加し、保険料を支払う生産年齢人口が減少すれば、医療保険制度が維持できなくなる。
 では、改善できそうな医療サービスの提供方法とは・・・・医療経済研究機構所長の西村周三氏
 「近年、ICT(情報通信技術)の進展により、患者一人ひとりのレセプト(診療報酬明細書)のデータを分析することで、その人がどのような受療行動をとっているのかが分かるようになった。今後はこうしたデータを使い、同じ疾病で複数の医療機関を受診する場合、個人の支払う負担を増やすといった形で回数制限をかけるなどの対応も必要になるかもしれない」。
 「大病院志向」への歯止めも重要だ。大学病院などの医療機関は、専門性の高い医療を提供するために高度な設備や手厚い人員配置をしている。しかし、こうした大病院の外来に人が溢れると、大病院は本来の先進的な医療サービスを提供すべき患者たちへの医療に集中できなくなる。その適正化を図るために現在、大病院における初診時の「選定療養費」が設定されている。これは、紹介状を持たずにベッド数が200床以上の病院にかかった場合、初診料と再診料を病院が任意の額を加算できる仕組みである。厚生労働省は今後、この初診料、再診料を全額自己負担とする方向で検討中だ。
 「疾病の違いにより自己負担率を変えるといった工夫も考えられる。例えば、2型糖尿病などの生活習慣病は、一人ひとりが努力して生活習慣に留意することで、発症や重症化をある程度抑えることができる。こうしたことを考慮すると、疾病を3〜4タイプに分け、それぞれのタイプによって医療費の自己負担率を変えるという方法もあるのでないか。ただし、遺伝的な要因についての配慮を忘れるべきではない」。
 
健康保険組合(健保組合)などの保険者が行う特定健康診査(特定健診)・特定保健指導が効果を上げているという。これは、40歳から74歳までの全ての被保険者、被扶養者に対して行われ、特定健診によりメタボリックシンドロームやその予備群の人を抽出し、特定保健指導を行うことで生活習慣病の低減に効果を上げているというのだ。実際の実施率はまだ低いが、厚生労働省の「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ」による中間とりまとめでは、特定保健指導により、積極的に支援された人の2〜4割が改善したという。健保組合などの保険者が積極的に保健指導を行うことで「生活習慣病は自分で"防ぐ"、"治す"」といった意識付けがなされ、被保険者の医療リテラシーを高める一助となっているというのだ。
後期高齢者医療制度では、保険者の特定健診・特定保健指導の実施率の多寡により、その保険者が支払う後期高齢者支援金を加算あるいは減算するシステムをとっているという。
 
今後は高齢者も一部負担率を現役世代と同程度にする方向に行くしかないだろう。
 医療費に占める高齢者医療費の割合は全体の3分の1を超えているのに、高齢者の医療費の一部負担率は1割と、現役世代の3割を大きく下回るというのは、やはり看過できないだろう。さらに、増大する医療費をまかなうためには、更なる公費の投入も回避できない。
 また健保組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)などの被用者保険と地域保険である国民健康保険(国保)の間での公平性も課題である。現行の医療保険制度は、64歳までが被用者保険と国保の2本立てとなっており、65歳以上の全ての人はそこから離れて高齢者保険になる"独立方式"をとっている。医療費が最も大きくかかるところを、被用者保険から切り離され、財政破たん間近な国保に入らなければならないのである。全ての医療保険制度を分けずに一つにするという"一元化方式"を採用するしかないだろう。
しかし、被用者と自営業者等では、所得の捕捉率が違う。さらに被用者保険の加入者は国民全体の約6割を占めている。従って、一元化ではなく、2本立ての体系を維持した上で、被用者の適用範囲の拡大(退職者をそのまま加入させる)を進めるべきだと言う案もある。
 
 健保組合の財政が悪化した原因の1つは、国が老人医療への国庫支出割合を45%から35%へ引き下げたことだ。それにともなう健保組合からの老人医療への拠出金割合が33%から40%へと増加した。さらに、リストラと賃金据え置きにより保険料収入が大幅に減少したこともある。健保組合の被保険者は1993年から2002年の9年間で70万人も減少した。財政悪化の主な原因は、老人医療費の急増ではなく、保険料収入の大幅減少であったということだ。政管健保では、解雇者の増加により、被保険者数の減少と標準報酬月額の低下による保険料収入の減少があり、市町村国保は不安定雇用者、失業者の流入で、財政が悪化したという。
 
リストラなどの政策を進めておいて、結果として起きる健保の財政破たんを尊厳死とナマポの問題にすり替える。自分たちの政策立案無能力症候群に気付くこともなく、自己保身体質をますますあらわにする。
 
政治家の資質はますます悪くなっていく・・・・・
高齢者は国保・健保から切り離され、現役世代からは「あなたたちのおかげで余分な保険料を払わされている」と言われて「公平な負担」を押しつけられ、受けられる医療の給付は著しく制限されることになりそうだ。

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