~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

winterさんへ ..... 自分を責めないでください

2014-05-21 01:35:13 | 側弯症患者さんの経験
winterさんからご質問をいただきました  2014-05-20 13:30:12
「特発性側わん - Natural History - 1993年の文献より」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/b645ff45eba1edce69aa3b03fef87070

小6の娘(11歳)が側わんのため装具療法をしております。august03さんにお聞きしたいことがありコメントさせて頂きました。
(中略)
先日の受診で「今のところいい感じに矯正が効いている」が「まだ11歳だから矯正が効いている」、4月頃よりパットの位置がズレているようで痛いとの娘の訴えに「側わんが進もうとする力が強く、こういうケースはいずれ手術になる可能性が高い」との事でした。娘の側わんは発見時の年齢と角度、コルセットを装着したタイミングから見て、コルセット療法の甲斐なくいずれ手術が必要なほど進んでしまうのでしょうか。
可能性でいうなら手術するほど進まないという%は残っていないのでしょうか。
主治医の先生の「悩んだところで進むものは進む。今出来る最善の事をするしかない」というお話しの後に、また娘の前でお聞きすることが出来ません(側わんの治療において先生がおっしゃる事に尽きると言う事は理解しております)。august03さんのブログを拝見して、側わんの進行リスクに初潮の有無やリッサーサインはとても重要とお見受けしますが、娘の初潮を伝えた時さほど気に止められない様子やリッサーサインの説明もないことからいずれ手術が視野に入っているからかな、、、とコブ角が抑えられている嬉しさ反面進行と手術への不安を大きくして帰ってきました。今コルセットで進行を「抑え込む」事が出来ていてもコルセットを着けた時の角度が30度を超えていたためやはり手術となるのでしょうか。

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☞ august03より

 winterさん、ご心配ですね。これまでも多くの質問をお受けし、そのたびに「私になんとかしてあげられる力があれば」と何度も思いました。でも、残念ですが、私にできることは、ささやかなアドバイスと励ましのお言葉をかけてあげることしかできないことを、どうかお許し下さい。
最初に winterさん、ご自分を責めていませんか? ご自分に何か欠陥があって、こどもを苦しめるような目に合わせてしまったのか? と考えていませんか ? あるいは、ご主人とか、義母義父の方々から、白い眼で見られて辛いとか、そういう思いをされていませんか ?
この側弯症という病気の辛いのは、子供を産んだお母さんがまず精神的に追い詰められることなんです。ご主人を巻き込んでのいざかい、心のすれ違い、対応の温度差、あるいは直接的に、「お前のせいだ」と責任を押しつけてきたり、さらには、義母義父からの心無い一言、さげすむような目で見られたり、時には、周囲の親戚からさえも、ああだこうだと言われたり、そういう環境に置かれやすい。というのが、この病気の持つ「悪い特長」と言えます。
何も知らない人は、いちも簡単に「整体にいけば治るそうよ」と「親切にも勧めて」くれたりすらします。この病気の持つ、そういう「悪い特長」の為に、正しい情報と知識が得られなかった時代は.....このstep by stepを始めた2007年でさえそういう状態でした。それ以前は、もう悲惨の言葉では言い尽くせないような時代が続いていたことをブログを始めて知ることができました。お子さんの側弯症発症を原因として離婚されたご夫婦が大勢います。義母義父との仲が疎遠を通り越して、二度と顔を見ることさえもなくなった。というケースもあります。winterさんは、大丈夫ですか? 辛いことがあったら、思いっきり泣いて下さい。泣いても、お子さんの病気が治るわけではありませんが、でも、お子さんの病気を治すのと同じくらいに、winterさんご自身の「心」が立ち直って欲しいのです。 お子さんの為に、まずできることと、しなければならないことは、winterさん自身が、現実と向き合う、という冷静で、強い心を持つことが必要だからです。
ですから、まずは、おもっきり泣いて下さい。涙が枯れるまで泣いて下さい。そして、涙が枯れたら、大きく深呼吸をして、こう声をだして、ご自分に語り掛けて下さい。 「ようし、やるわよ」「なんとかなる」「この世はなんとかなるようにできているのよ」と。
いいですか、winterさん、ご自分で、自分を責めないで下さい。責める理由も、必要もありません。誰かから責められる理由もありません。あなたのせいではないのでから。お母さんのせいではないのですから、精神的に自分を責めるのはもうやめて下さいね。

確率についてのご質問ですが、さきほど「原稿中 Natural History 1999 (Nachemson)」を掲示しました。文章は書いていませんが、この中の表をクリックしてみて下さい。これは文献に掲載されていたデータです。側弯症と診断された年齢とその場合の手術に至るかもしれない確率を示したものです。もちろんこれが100%正確と言えるわけではありませんが、私があれこれと文献を見てきた経験から感じることは、およそ、この傾向は実際の確率に近いもの。という印象を持っています。ですから、これをベースにすると、winterさんのお子さんの場合、手術は60%ということになるでしょう。次に、下記に掲示した過去ログも参考にして欲しいのですが、装具で抑え込めれば 80%の確率で手術には至らずに、骨成熟の時期を迎える可能性はあります。
そして、ここから先が、winterさんと、娘さんとの間で、真剣に話し合って欲しいことになります。そして、真剣に話し合うにあたっては、winterさんは、おもっいきり泣いて「冷静な自分」を得たうえで、お子さんと向き合って欲しいのです。
第一に、この病気についての正しい知識を一緒に学ぼう、ということを提案してあげて下さい。病気と向き合って、そしてこの病気とつきあっていくのは、お子さん自身だからです。これは、身体の問題ではなく、お子さんの人生の問題なのだ、ということをお子さんも、そしてwinterさんも理解して欲しいのです。
第二に、学校で「イジメ」にあってないかを聞いてあげて下さい。もし、いじめられていることがわかったら、そこから先は、お母さんとしてwinterさんがやるべきことがあります。イジメをなくす為に、先生と話し合って下さい。病気のことでイジメるような環境があることは、そのイジメている「子供たち」を指導してあげないと、その子供たちは心がゆがんだまま大人になってしまいますよ。イジメはいけないもの。そういう当たり前のことを「教える」のは大人の責任です。
第三に、患者の会に連絡をとってみて下さい。「ほねっと」は先天性側弯症を持つお子さんのお母さんが多いのですが、きっとwinterさんにとって貴重な話を聞くことができると思いますよ。できれば、顔を見て話ができるようなそういう機会が持てれば、もっとwinterさんの気持ちが落ち着くと思います。もし可能ならば、このstep by stepにコメントを残してくれている方々と連絡を取れれば、あの方々もきっとお力になってくれると思いますよ。大切なことは、ひとりで抱え込まないで、「先輩」の経験を分けてもらって下さい。 自分はひとりじゃないんだ、と思えることが、私たち「弱い人間」には必要なのですから、誰かと繋がって、誰かに支えられる。そういう事には、遠慮してはいけないと思います。そして支えられる時期が過ぎて、winterさんが一人でも歩けるようになったら、次はwinterさんが、誰かを支えてあげて下さい。
第四として、いまの時期は、ドクターはあまり役に立たないものだ、ということを「受け止めて」下さい。winterさんのお子さんの側弯が進行するか、止まるかは誰にもわかりません。いまの時期に医師にできることは、レントゲン検査で進行状態を検査して、必要にお応じて装具士さんに指示をだすことくらいしかできませんから。別の意味でいいますと、winterさん自身が、装具士さんと話をして、仲良くなっておくのもいいと思いますよ。装具を作り、その調整をするのは、装具士さんですし、医師よりも、装具のことはわかっていますから。家庭での調整とか、あれこれとアドバイスをして欲しいと頼んでみてはいかがでしょう。
第五として、運動をどんどんとしましょう。私はスイミングをお勧めします。側弯症という病気は、ある意味、長い長い年月をこの病気と一緒に過ごすことになる可能性を持っています。そのとき、重要になるのは、骨粗鬆症になっていてはダメ、ということです。 女性は年をとるほどに、骨粗鬆症になりがちです。その予防は、若い時にしっかりと運動をして、健康な身体作りをしておくことがまず第一歩です。
第六として、ワーストケースに備えましょう。つまり、手術をしなければならなくなった時に、どうするか、ということです。 端的に申し上げます。 手術は、医師の腕(技術と経験と知識)と優秀なスタッフの有無と十分な医療機器を持つ病院かどうか、ということが、手術後の将来のあり方を決めます。 良いドクター、病院を選択すること。それがお母さんの大切な役割です。手術をしてもらう医師を「信頼」できますか? 信頼を持てない、肌が合わないと感じたら、そこで手術を受けるべきではありません。winterさんが、どの地域におられるかわかりませんが、お母さんとしてして欲しいこと、そしてできることは、ワーストケースに備えて、良い医師、良い病院を探しておくことです。できれば、お金はかかりますが、その医師のところへ出向いて「セカンドオピニオン」を求めて、実際に話をして、そして、もしものときにその先生にお願いしたいと思うかどうかを考えて下さい。住んでいる場所によっては、交通費がかかりますから、簡単ではありませんが、一度か二度でいいですから、そういうことにトライしてみて下さい。 側弯症手術自体は、いまの医療技術ではそれほど難しいものではありません。でも、誰でもが「上手に」できるものでもありません。手術してもらう医師と病院はしっかりと見極めるできです。もし可能ならば、やはり、名城病院、ということになると思います。川上先生は、多くのドクターから、「神の腕」と称賛される技術があるだけではなく、辻先生という優秀なお弟子さんもいて、いまは辻先生のほうが多くの手術を、側弯専門医師のみなさんとともにこなしている。経験を積まれた専門スタッフが大勢いるという病院は全国でも珍しいでしょう。しかも、お二人ともとても「人あたり」が良くて、誰でもが好きになるタイプだと思います。川上先生、辻先生等のすごいところは、本当に患者さんの為の医療を考えてくれているところです。患者さんの手術中の安全を考えて、日本で初めて M5という名前の側弯症専用神経モニタリング装置を導入したり、ナビゲーションも併用したり、ご自分の腕を過信せずにちゃんと、安全に必要な医療機器を積極的に探し出して誰よりも早く活用して手術に臨んでいる。そういうことをしっかりと考えて手術に向かうという姿勢をどんなに偉くなられても持ち続けておられる。このような先生はなかなかおられません。
第七として、もう一度、一番に戻りますが、お子さんとしっかりと向き合って、装具治療と手術について話あってみて下さい。お子さんの性格によっては、装具をしたくない、手術が必要ならそれはそれで構わない。と考えるお子さんもいます。その言葉を「甘え」や「逃げ」ととるか、それとも、「自分の人生の責任は自分でとれる子供に育った」ととるか、そういう真剣な話し合いをして欲しいのです。
手術をしたからといって、運動ができなくなるわけではありません。結婚もできます。出産もできます。でも、この病気とは、今後もずっと向き合っていくことになると思います。そういう病気だけだからこそ、お子さんにもこの病気を勉強して欲しいですし、winterさんと話しあって欲しいのです。病気に負けない、ということの意味をつかんで欲しい。自分の価値は病気でなんか減らない、自分の価値は自分で作り出していくもの。そういうことを教えて欲しいのです。

長くなってしまったみたいで、申し訳ありません。
以下には、このstep by stepのなかから、選択した記事をリンクしました。これらも参考にしていただければと思います。

august03


「お母さんは、自分のことを責めないで下さい」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/22bf62ebf9707d847e57c1b56ceb81d8

「そくわん症治療の確率 50%のリスクをとるか80%の可能性にかけるか」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/8d2b14d64b859ecacb4fad21f0d48505

「患者さん同士の助け合いによって」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/352dc8b12373e613647524dde28384f6

「母親の愛とは? 特発性側弯症との闘い (測湾整体記事一覧)」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/c50064449535307cf398d6b12d2484ad


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?



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2 コメント

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お返事ありがとうございます (winter)
2014-05-23 16:09:48
august03様
 お忙しい所早速のお返事ありがとうございました。
娘の頑張りを見ていると、手術を前提としてのみ(抑え込める可能性なく)コルセットを着けさせるのが申し訳なく感じられ質問させていただきました。
確率から言えば、
・手術の可能性60%、至らない可能性が40%
・装具で抑え込めれば手術に至らず骨成熟を迎えられる可能性が80%
と具体的な数字を教えていただき漠然とした不安が薄らぎました。ありがとうございました。
 この度は親身にご心配もいただきまして恐縮しております。
・第1について。
娘なりに「側わん」を受け入れコルセット装着の大切さを理解し1日23時間頑張っています。
冒頭コルセットを「着けさせる」と書きましたが、コルセットによる治療を受身でなく、着けなければいけないものとして装着できていると思います。
何事も一生懸命励めば結果はついてくると信じる娘に「いずれ手術になる可能性もある」とは今の段階で言う勇気がありません。。。
コブ角の経過を見ながら徐々にと考えております。
・第2について。
かねてより落ち着いた教育環境を求め転居を考えておりましたが、側わんの診断を機に関東から東北(私の実家)に移りました。
少しでも涼しい気候でコルセットをと中学卒業まで過ごす予定です。
過疎地への転校生と言う事で地域やクラスの皆に温かく受け入れていただきました。特に学校においては、側わんについて十分理解していただき、学校生活においてコルセットを着けて不自由な点は早急に対応いただき助かっております。
・第3について。
側わんという病気が一般的でないため、話を聞いてもらうにはやはり専門的な知識がある方という事でaugust03さんに質問させていただきました。
今後は「ほねっと」のページも拝見させていただきます。
・第4について。
今の時期娘の側わんが進むのか止まるのか「誰も(=先生も)」解らないという事ですので、先生の言葉に一喜一憂せず、負の気持ちをいつまでも引きずらないようにしたいと思います。
・第5について。
田舎ですので近くにスイミング教室がありません。部活動もしておりませんが、毎朝ラジオ体操第一第二、お風呂上りに軽い筋トレをしています。
なるべく歩き骨粗しょう症を予防するため体を動かす事を心がけたいと思います。
・第6について。
具体的な病院名と先生のお名前を教えていただきありがとうございます。娘もたくさんの手術と治療を経験された先生に診ていただいております(診察時、上京しております)。
手術になった場合に備えてセカンドオピニオン等準備しておく事が大切という旨、心得ました。
・第7について。
まずは私が側わんという病気と向き合い、受け入れ、いずれ手術が必要性な場合もある事について話し合いたいと思います。
娘としっかりと向き合う。
側わんになったから持てる機会である気もします。
側わんになったから娘も私も得るものがあるはずですね。
今はまだ治療が始まったばかりなのでそれが何と言えるのは先ですが(既に得たものはあるけど気付いてないだけかもしれません)。
娘にはパティシエールになるという夢があります。お菓子の勉強をするため留学できるよう頑張るのだそうです。
間違っても「側わんだから」その夢が叶わなかったとならないように、娘を見守り支えていきたいと思います。
 この度はいろいろご教示いただきましてありがとうございました。
 winterより
返信する
私も重度の側湾症ですが手術はしておりません (ガッツ)
2014-10-27 11:21:25
現在80度(最近はレントゲンを撮っておりません)です。
あまり、痛みが出なかった事もあり、29歳になる現在まで放置気味でしたが、最近少しづつ腰の下あたりに違和感が出てきました。
左足にほんの僅かな違和感と、座骨神経痛の様な症状があります。
発覚したのは中学に上がる頃、検診でした。
実は、このブログで記載のある整体治療院にも通院歴がありますが、明確な改善には至らず、成長が止まると同時に治療も打ち切りました。
本来の時期に手術を行っていれば、この苦しみも無かったのではないかと考えると悔しい気もしますが、自己責任と割り切るしかありません。
こんな哀れな人間もいるという事を末筆まで。
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