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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

乳幼児側わん症へのキャスト治療-専門治療の紹介- こどもの命をもてあそぶ測湾整体への抗議をこめて

2010-07-04 23:23:05 | 乳幼児期側弯症
ひとくちに「側わん症」といっても、発症する年齢、原因等により、実はその
中身は大きく変わってきます。その脊柱のカーブが何が原因となっているのか
あるいは原因の特定できない「特発性」なのか、そういうことをしっかりと
診断することが、その後に続く「治療」の内容を決めることになります。

ここでは、乳幼児小児期の側弯症について、あらためて説明をさせていただき
たいと思います。掲示板「先天性側弯症のひろば」を設定したときは、その対象
として想定していたのは、先天的に椎骨に変形(奇形骨)があることによる側わん
のお子さんがたの為にと考えていたのですが、お母さんがたからのご様子から
しますと、乳幼児期における「特発性側弯症」のお子さんがたについての発言
も見られるようですので、このふたつの側弯症の違いを説明するとともに、
共通治療としてのキャスト治療をお話したいと思います。

◇先天性側弯症とは
 ブログの左のカテゴリー「先天性側弯症」をまずは参照ください。ここに掲載
している図や写真を見ていただき、先天的に椎骨に異常(奇形骨)があるという
ことをまずはご理解ください。表現は悪いとは思いますが、ヒトには様々な外観
上の個性があります。そして病的なものとして先天的に形態が未分化となること
は数多くあります。それが体内で発生することも多くあります。心臓の障害の
場合もあれば、そして「骨」に障害がある場合もあります。そのひとつが
脊柱を形成している「椎体骨」の異常を生まれながらもっている場合を先天性
側弯症といいます。この場合、この「椎体骨」の異常を外科的手術によって治療
することが最終の目標となります。この場合は、カーブを生じさせている原因は
明確ですから、この原因となっている変形した椎体骨をどう手術するかが治療の
目標ということです。

◇乳幼児小児期における特発性そくわん症
 「特発性」とは原因不明の病気の場合に用いられる医学用語です。
原因不明による脊柱側わんが、生まれて早期に発見された場合を乳幼児小児期の
特発性側弯症と呼ばれることになります。
ただし、実際の場面では、医師が初めてお子さんを診断したその最初から特発性
です。という確定診断をすることはありません。乳幼児期に見つかるそくわん症
の持つ側面として、医師は必ず、何か別の病気が隠れていないか、他にも障害が
隠れていないかを精密に検査します。レントゲンだけではなく、MRIを駆使して
脊髄や神経に何か病気がないか.......例えば二分脊椎とか、あるいは他の臓器
には障害がないか。といったことを調べます。椎体骨に異常が見つかれば先天性
側弯症と診断されることになり、そして脊柱のカーブ以外に何の症状も病気も
見つからなければ、最終的に特発性側わん症という診断が下されることになります。

生まれてまだ一年にも満たない時期のちいさいなこどもたちの似たような症状
なわけですが、先天性と特発性ではまったく意味が異なり、そして治療方針も
違ってくるわけです。ですから、お母さんがたは、お子さんが何という診断名
であるか、ということをしっかりとお聞きになり、そして理解してください。


先にも述べましたように、先天性は手術が最終的には必要になると考えて下さい
あとは、その手術の時期をどうするか、その時期までどういう対処をするか、
そういうことを先生は考えられるわけです。
特発性の場合は、乳幼児小児期の場合も、思春期特発性とある面では似ています。
「進行性の側弯症」と「自然治癒する側弯症」あるいは「抑え込める側弯症」
とに大きく分類できることになります。
そしてお子さんがどのタイプの側弯症であるか、ということは現代医学では
まだ診断する技術がありません。これは思春期特発性の場合と同様なのです。

診断検査の重要性(脊髄や神経の病気の発見)ということはよくおわかりになると
思います。もし、ここで「見逃し」があったら、それは最悪の場合、お子さんの
命に直結することになるのです。
世間ではいまだに大塚整体のように、側湾整体が病気治療に手を染めているよう
ですが、私には医師でもない民間人が「病気を治療します」とか「病気を治療し
ました」とかと宣伝していることに憤りを覚えます。あるいは、そういう業者に
手を貸す医療機関が存在することに怒りを覚えます。
そくわんのなんたるかを学んでもいないような、側弯症手術をしたこともない
ような「医師」のいる病院で、レントゲン撮影をしたり、仮にMRI検査をした
ところで、それがどれだけの医学的意味があるか、ということを皆さんはよく
お考え下さい。医学は細分化され、その道、その道の専門分野というものが
どんどんと進歩しています。整形外科なら、どこの病院のどの先生でも同じ診断
ができる、そういうものではありません。

MRIという高額な医療検査装置で検査すれば誰が検査しても、どんな病気も
たちまち「機械」が答えをだしてくれるかといえば、そういうものではありません。
診断とは最終的には、診断する人の知識と経験によるものなのです。

そして、残念なことですが、現代の進歩した医学診断技術をもってしても、
いかな経験をつんだ医師も、お子さんが進行性なのか、急激に進行するタイプ
なのか、抑えられるタイプなのか、あるいは自然治癒するタイプなのか、それを
診断する技術はまだありません。確定診断をする技術はありませんが、予測を
たてることはできます。先生や、医学界が積み重ねてきた経験と医学データから
予測をたて、その予測にもとづいたステップバイステップの治療が進められる
ことになるでしょう。
しばらく様子を見ましょう、というのもそのステップの第一歩となるわけですが
このあたりの話はブログ内の別の記事をご参考いただきたいと思います。


◇キャスト治療について
 キャストの代わりに「ギプス」という言い方をしたほうがイメージが掴みやすい
かもしれません。
骨折などをしたときに、包帯のようにグルグルと巻いて水で濡らすとやがて石膏
のようにカチンと固まってしまう、あの材料を「キャスト」と呼びます。
同じキャスト治療ですが、先天性と特発性ではその目的が異なります。
先天性の場合は、キャストを巻いたからといって変形している椎体骨が元の形に
もどるわけがないことは自明です。ではなんのために巻くのか? 
それは、変形した椎体骨を中心として脊柱カーブが進行していくのに伴って
その変形椎体を中心とした脊柱変形が他の椎体に伝播するような状態になること
を防ごう。というのが大きな目的のはずです。どんどんと曲がりが強くなって
いく経過のなかで、何が発生していくかといいますと、正常なはずの他の椎体骨
にも負荷がかかっていくことにより、しだいに変性が生じてくるのです。
たとば、身体を斜めに傾けた状態で何時間も何日も時間が過ぎていったときに
押しつぶされる側の椎体には、脊柱がまっすぐであれば本来はかかるのはずのない
負荷(荷重)がずっとかかっている。ということをイメージしてみてください。
それが長期間にわたることにより何の悪影響も与えるはずもない。と考えること
のほうが無理があるといえます。そこで行われるのがキャストにより、できるだけ
まっすぐな状態に保っておこうという考え方です。この状態をできるだけ長く
保つことで、やがて来るくる手術の時期をできるだけ先延ばしする。その間に
こどもの身長をできるだけ成長する時間をかせぐ。そういう考え方です。

一方、特発性の場合は、側わんカーブ自体を矯正することを目的としています。
ただし、全ての患者さんに行われるわけではありません。進行が進み、明らかに
進行が進んでいるとわかる患者さんに行われることになります。なぜなら、特発性
の場合は、自然治癒するケースがありえるからです。そういうケースではありえず
明らかに進行していると判明した場合は、この場合は、できるだけ早期の治療
開始が、やはりその後の成績に大きく影響してきます。
そういう兼ね合いがありますので、この治療も整形外科なら誰でもできる、
というものではありません。まして、キャストは麻酔下で行われるものですから
病院の、しかも専門の医師によってしかできない治療ということになります。

下記の説明は、側弯症の専門医学研究団体である Scoliosis Research Society
のホームページから関連部分を和訳したものです。

Scoliosis Research Society (SRS)
http://www.srs.org/patients/juvenile/casting.php
オリジナル英文は上記URLにてご確認ください

キャストを用いることで、その次の段階のブレースが十分な変形矯正を得るため
にさらに効果を得ることが期待できる。
これまで、キャストは24時間装着するブレース(装具)と同じ意味で、しかも
取り外しができない不便なもの、と考えられてきました。しかし近年、多くの
親御さんがキャストがブレースよりも優れたものであり、着脱できるがゆえに
逆に長時間の着用が困難となるブレースよりも乳幼児や小児にとっては、より
好ましいものであることに気付いてきています。

キャストは、側わんによるカーブ進行を遅らせる、という戦術にとって、
もっとも信頼のおける方法となりえます。英国での調査では、幼児期側弯症で
平均32度のカーブの12ヶ月のこども達にキャストを用いたところ、成長時には
10度以上の減少を得られた症例もあった、ということが報告されています。
18ヶ月か、それ以降でキャスト治療を開始した場合、(それまでに進行してしま
っているため) 平均52度という大きなカーブとなってしまっており、あまり良い
矯正は得られませんでした。しかしそれでもカーブをそれ以上は進ませないと
いう効果は得られます。

2歳以下のこどもにキャスト治療を行う場合、目標とする側わん症治療の為には
麻酔下でのキャスト交換を2ヶ月から3ヶ月ごとに行うことが必要です。
(もっとも少ない場合で5回のキャスト交換ということになります)。
これにより、脊柱をまっすぐにのばすという目標に近づくことができます。
キャストによりかなりの効果は得られますが、ブレース(装具)による治療が、
その後も必要です。2歳以上のこどもの場合は、キャスト交換は3ヶ月から4ヶ月
ごとに必要となります。
さらに年長となり、再発が見られる場合は、もう一度キャスト治療を4ヶ月行い
変形を矯正し、その後ブレース治療へと継続します。

米国内の治療センターではキャスト治療をカーブ矯正のための第一にとるべき
治療として実施しています。キャストは麻酔下で施行されます。カーブが大きい
こどもとか、進行が早いこどもの場合は、3ヶ月ごとにキャスト交換をする。
という変則方法がとられることもあります。これらの処置により、ブレースを
装着する時期を遅らせたり、そしてもし手術が必要であるとしても、できるだけ
「手術」となる時期を遅らせる、という戦術をとります。


You tube ユーチューブ
 http://www.youtube.com/watch?v=BUmfBQirENg&feature=related

 http://www.youtube.com/watch?v=kFHAED_BHVk&feature=related

 http://www.youtube.com/watch?v=dJKzjCxYX0M&feature=related

 http://www.youtube.com/watch?v=xuvnZ0PK2Bg&feature=related


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august03より

 どんな病気にも治療のための戦略というものがあります。それはクスリだけの
場合もあれば、外科手術や、あるいは化学療法も含まれるかもしれません。
医学の幅というものはとても広く、そして医学の進歩というものはまさに日進月歩
の世界です。でも、治療は病院や医師だけが行うものではなく、患者さん自身が
そして、小さいお子さんが患者さんの場合は、ご両親がその治療戦略の一翼を
担う事になる、ということを、特にこの側弯症治療においてはとても重要な一翼
となっていることをご理解ください。
ほぼ24時間お子さんと一緒にいるお母さんの役割はとても大きいのです。
とはいえ、その責任の重さにばかりを気にされなくても大丈夫です。こどもは
とても柔軟で、適応力が強いです。
まず第一にお母さんのすべきこと、それは、医師を探し、そしてその先生を
信頼できるかどうかを把握することです。信頼する、と決めたら、とことんその
先生について行って下さい。キャスト治療は、この日本の気候や生活環境を考え
ますと、かなり辛い.....辛そうに「見える」ものですが、その治療の目的と
ゴールを理解したならば、そのゴールに向かってまっしぐらに進んでください。

掲示板へ寄せられたお母さんの言葉が忘れられません。
「こどもを可哀想に思っても、その言葉を口にしないこと」「それを聞いた
こどもは、自分は可哀想な存在なのか、という気持ちになってしまい、治療を
拒否するようになる」
たしかこのような内容だったと思います。お子さんの「辛い」姿を見るのは
お母さんにとってもとても辛い苦しいことだと思いますが、その気持ちと言葉は
心の奥にしまいこんで、少なくとも、こどもには見せないこと/言わない事、
そうすることによって、お子さんは、自分は病気の治療をしているけれどそれは
治療として「普通」のことであり、自分は「可哀想な存在」なんかではない。
自分は「普通」なんだ、という気持ちで毎日を過ごすことができることになるの
だと思います。

お子さんを受け止めて、その治療を進めていくにはお母さんの勇気と愛情と
そして、掲示板やほねっとの患者会などを通じて得られる「仲間」や「先輩」の
方々の支えだと思います。
キャストやブレース治療を行っていくうえで、日常のなかで、様々なわからない
ことや、困ったこと、心配なことがたくさんあると思います。
ぜひとも、皆さんで智慧と経験を共有しあって、支えあわれることを期待して
います。
いまは、とてもたいへんだと思います。でも時間のたつものはとても早いものです。
この時期をいつか笑って振り返るときがきっと来ます。どうか、そのことを
信じて、いまを乗り越えてください。 お母さんなら、きっとできます



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ブログ内の関連記事
「乳幼児期そくわん症 初めて専門医の診察を受ける準備として」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ea2f2234b1b16b7f7487e7763816e520

「乳幼児期側弯症 キャスト(ギブス)の取り扱い方法」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/1e1be86d564cb2effa4459bfd953910c


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1 コメント

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キャストの際の麻酔 (パグ)
2011-06-05 01:41:17
とても勉強になりました。
子供がキャストを定期的にやっておりますが、麻酔は一切行ってません。
1歳過ぎからやってますが、暴れることもなく、他のお子様はやはりおお泣きしたりすることはあるようですが、麻酔なしでもベテランの先生や技師さんが行うので十分出来るものだと思います。
慶応などはいまだに麻酔を使っているようですが、子供ですからリスクが少ない方が親としてはありがたいので麻酔はさけたいです。
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