あすかパパの色んな話

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【競馬】ルーラーシップが宝塚記念で証明する、「血」の力

2012年06月23日 21時44分58秒 | 競馬の話題

年明けのAJCC(GII)を快勝したルーラーシップ。その後、香港で初のGI制覇を果たした。

オルフェーヴルのたどった道筋が「王道」だとしら、ルーラーシップのそれは、王の血を持ちながら王道を進まなかった「邪道」とも言っていいだろう。ならば、2012年4月29日の出来事は、オルフェーヴルという王道と、ルーラーシップという邪道をねじれさせるトリガーだったのだろうか――。

 父はダービーを圧勝し、種牡馬としてもアパパネやローズキングダムなどのGI馬を輩出したキングカメハメハ。母はオークス馬で、牝馬ながらに天皇賞(秋)を勝ち、アドマイヤグルーヴなどの活躍馬を産んだエアグルーヴ。ダービー馬とオークス馬。日本が誇る血の結晶として、この世に生を受けたルーラーシップに課せられたのは、勝つことへの期待などという生半可なものではなく、GIレースを勝つ、という重圧を伴った義務だった。その義務付けられ方は、三冠を制し、有馬記念でブエナビスタに引導を渡したオルフェーヴルが、4歳を迎えたのと同時に課せられたものと酷似している。

 2歳の暮れにデビューしてから香港遠征前までの約2年間、ルーラーシップに与えられた評価は、「ポテンシャルは高いものの、GIIまでは強いがGIではちょっと足りない」というものだった。GIIを3勝にGIIIを1勝。普通なら賞賛されてもおかしくない成績であるのに、ある種の期待はずれのような感覚が拭えないのは、この馬に課せられたものに起因すると言っていい。

3歳クラシック戦線をはじめ、4歳になってからも求められた結果は出せなかったが、管理する角居勝彦調教師や厩舎スタッフは、この馬の持つポテンシャルを信じて疑わなかった。結果が出なければ出せばいい。よりよい条件を求めて、そのための選択肢は国内にこだわらない。5歳になったルーラーシップは、年明けに2戦を消化して、4月29日開催される香港の国際GI、クイーンエリザベス2世カップに矛先を向けた。

 4つのコーナーを回る芝2000mは、条件だけ見ればルーラーシップにとって最も合致していた。だが、条件さえ合えば勝てるというほど、競馬は甘くない。ましてや海外への遠征。ドバイ、アメリカ、オーストラリア、香港と世界各国で結果を出してきた手練れの角居厩舎であっても、それは例外ではない。

「いやぁ、実は飼い葉(馬の飼料)を全部食べてくれないんですよ。状態は悪くはないんですけど、順調とも言い切れないんですよね」

 レースの4日前、帯同スタッフの岸本教彦調教助手は、苦笑まじりに愛馬の状態を漏らした。同じ海外遠征でも、前年に敢行したドバイ遠征(シーマクラシック/6着)のほうが、よほど絶好調だったと付け加える。環境の変化による食欲減にはじまり、体重の減少、準備運動用馬場のコンディションが合わない、栗東と比べて調教の時間が蒸し暑いなど、次々と「そこまで酷くはないし、想定の範囲内なんですけど」というエクスキューズを添えながらも、こちらが期待しているものとは正反対の、ネガティブな要素が並べられた。

 当然、指揮官である角居調教師の耳にもその情報は入っている。翌々日、つまりレース2日前の朝、角居調教師はルーラーシップの状態を確かめるべく、調教が行なわれる沙田競馬場のスタンドに姿を現した。調教を見終えた角居調教師の第一声は「良くないとは聞いていたけど、思っていたほど悪くはないです」と、もともと饒舌ではないことを差し引いたとしても、いいでも悪いでもなく、なんとも歯切れの悪いもの。悪くはない、という言葉も、取材陣にではなく、むしろ角居調教師が自らに言い聞かせているかのようにも見えた。

 だが、ふたを開けてみれば、まるで義務づけられた勝利という重圧から放たれたかのような突き抜けぶりで、期待されていた以上に鮮やかな圧勝。待望のGI初勝利を海外遠征で果たすという、大仕事をやってのけた。ちょうど同じ日、勝つことを義務付けられた同じ勝負服の『三冠馬』オルフェーヴルが、天皇賞(春)で予想だにしなかった惨敗を喫した、ほんの数時間後の出来事であった。

 はたして、陣営の、あのもやっとした、自信のなさは一体なんだったのだろうか。物足りない、としたのは本当に物足りなかったのか、それとも、散々本調子でレースに送り出しながらも、辛酸を舐め続けたことへのある種の保険のようなものだったのか。仮に前者だとすれば、それは、多少のことでは影響を受けないこの馬の高いポテンシャルを逆に示すと同時に、ダービー馬とオークス馬という、これ以上ない血の力に拠(よ)るものを証明したものかもしれない。

 宝塚記念はルーラーシップにとって、帰国初戦ではあるが、香港での勝利が「GIではちょっと足りない」馬にちょうどいいレースだった、と言わせないためにも、不甲斐無い走りは見せられないレースとなった。勝って、“邪道の王”の戴冠を目指す。(スポルディーバ Web)



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