あすかパパの色んな話

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広島皆実が見せた「堅守強攻」の証し

2009年01月13日 06時51分20秒 | コラム
<決勝 鹿児島城西(鹿児島) 2-3 広島皆実(広島)>


聖地・国立競技場を舞台に全国制覇を懸けて熱戦が繰り広げられた

オールラウンダーの真骨頂を見せ付ける勝利だった。広島皆実(広島)は、今季から掲げた「堅守強攻」の真価をファイナルゲームで見事に発揮した。相手は2トップがともに全試合で得点し、決勝まで5試合で27得点と爆発的な攻撃力を誇る鹿児島城西(鹿児島)。対する広島皆実はわずか1失点で勝ち上がって来た。

 当然、試合前の展望では「鹿児島城西の攻撃力vs.広島皆実の守備力」という構図が浮かび上がった。しかし、広島皆実には「守って勝つ」という意識はなかった。高卒でプロに進むような突出した選手はおらず派手さはないが、守備だけでなく中盤の構成力やボールポゼッションにも自信があった。そして、何よりも2大会連続のベスト8で、その先に進むための課題として攻撃力も磨いてきた。
「堅守速攻」と評されるチームが「堅守強攻」とわざわざ別の言葉を選んでスローガンとしたのは、その壁を乗り越えるためだ。だからこそ、鹿児島城西を相手に自信を持って選んだ方法は「打ち合って勝つ」だった。

■大迫勇に新記録許すも狙い通りのサイドチェンジで逆転

雪交じりの雨が降り、照明の灯った国立競技場で、キックオフからすかさずペースを握ったのは広島皆実だった。前半10分には完全に主導権を握り、ポゼッションしながら得点機会をうかがう王道の展開に持ち込んだ。
 中盤では圧倒的な寄せの早さを見せ、鹿児島城西が狙うエースFW大迫勇也へのパスコースを断ち切り、チャンスを作らせない。しかし、前半20分に大迫勇にボールが渡ると、3人がかりで囲んだにもかかわらず、ボールはスーパーストライカーの左足にこぼれ、大会新記録の個人10点目となるゴールをたたき込まれた。
 崩されてもいないし、大きなミスもしていない。ただ、エースにボールが渡ったというだけの止めようのない失点だ。おそらく、広島皆実がこれまでの試合のように守備をベースに考えて「1点取ることができれば勝てる」という気持ちで臨んだならば、精神面で立ち直ることができなかっただろう。しかし、打ち合いを覚悟していた彼らの気持ちは落ちなかった。

 広島皆実は失点前の前半10分、右から左へ斜めの大きな一蹴りで相手の4バックを突破した。パスを受けたMF谷本泰基は「前日に相手の試合のビデオを見て、バックラインがボールウォッチャーになるという印象があったから、サイドチェンジが効くと思っていた」と話す。失点から3分後、左サイドを突破した浜田晃がクロスボールを放つと、右MF佐々木進がヘディングで中央へ戻し、FW金島悠太がやや体軸の後方でバウンドしたボールを見事なハーフボレーを突き刺して同点とした。
 さらに、右から左への大きなサイドチェンジから、今度は左MF谷本がミドルシュート。一度は焦ってDFのブロックに遭ったが、もう一度足元に来たボールを今度はコントロールしたシュートで逆転に成功した。

■大迫勇という名の恐怖に立ち向かった冷静さ


広島皆実を全国優勝へ導く決勝ゴールを決めた金島悠太(中央)

先制点を奪われるも、中盤を制して逆転。それは、どこかで見た光景だった。わずか2日前、埼玉スタジアムでも同じことが起きていた。準決勝の鹿児島城西対前橋育英(群馬)戦だ。前橋育英は0-1から3-1としたが、そこから1点差に迫られると冷静さを欠き、急にリズムを崩してしまった。原因となったのは、大迫勇という名の恐怖だった。
 1点勝負では、いつやられるか分かったものではない。大迫勇の存在感は、絶大だ。谷本は「(大迫勇は)本当に怖かった。もう、単純に怖い。後ろ向きでボールを持たせても、反転のスピードが速くて置き去りにされる。Jユースとも試合をしたけど、今までで一番怖かった」と、プレッシャーに襲われていたことを素直に明かした。

 後半、広島皆実は序盤に強烈なプレスをかけ、中盤で得点を狙って駆け回った疲労から運動量が落ちた。そこで前半は落ち着きのなかった鹿児島城西が丁寧につなぎ始めると、後半17分、大迫勇のポストプレーから右MFの位置に途中出場したスーパーサブ平原慎也がドリブルで突破してラストパス。FW野村章悟が大迫勇とともに全試合得点となるゴールを挙げて、スコアは2-2となった。

 鹿児島城西は、明らかに手応えをつかんでいた。中盤での反撃に成功すれば、2トップの得点力を存分に生かせる。広島皆実は正念場に立たされたが、強じんな精神力が物を言った。FWがセンターサークルで試合を再開しようとする中、残りのフィールドプレーヤーが全員で集まって声をかけ合った。「絶対に(点を)取れる。落ち着いて、パスを回して崩そう」。わずか4分後、右からのクロスを金島が決めて勝ち越し。取られた直後の得点で相手を黙らせた。
 その後は冷静にポゼッションを続けることで相手の攻撃時間を減らしながら、「何回も時計を見たんですけど、進まないんですよ」(浜田)、「2日間ぐらいの長さに感じた」(主将・松岡祐介)と我慢を重ねて歓喜の時を迎えた。

■我慢し続けて育んだ攻撃力

「打ち合い」や「強攻」といった言葉だけをとらえると、攻撃的なシステムを用いて前がかりに仕掛けるというサッカーをイメージするかもしれない。しかし、広島皆実は、決勝までの5試合で6得点。相手の4分の1以下である。
 単にノーガードの打ち合いを展開すれば、KO負けは免れない。では、どのようにして「打ち合い」で勝つのか。そこには、オールラウンダーだからこそできる、絶妙のバランス調整がある。

 初めからうまくいったわけではなかった。夏の高校総体では、2回戦の大分鶴崎(大分)戦で前がかりになり過ぎて逆転負け。秋の高円宮杯全日本ユースでも攻守の切り替えに失敗して、総体王者の流通経済大柏(千葉)を相手に押しながら、終盤にひっくり返されて弱さを露呈した。
 それでも、藤井潔監督は「守備から、とはなかなか言えなかった」とベスト8の壁を破るために攻撃力を課題としたことをほごにはしなかった。この日、3得点を取ることができたのは、掲げた「堅守強攻」への我慢強い挑戦があったからにほかならない。

 2大会前は、3試合連続PK戦の勝利で準々決勝へ勝ち上がった。しかし、いずれも0-0だったため、守備力しか評価してもらうことができなかった。浜田は「ずっと、『守りだけじゃない』って言いたかった。攻めても守ってもできるチームだと言われるようになりたかった。最後に、打ち合いでも勝つことができると証明できて、うれしかったし、自信にもなった」と、溜め込んでいた思いを明かした。
 地味な勝ち上がりで注目度ではいまひとつ恵まれない広島皆実だったが、最後は4万を超える観衆の前で攻撃力を兼ね備えたオールラウンドの強さを存分に証明してみせた。(スポーツナビ)


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