6月24日、イベントプラザ富山で行なわれた、『DEEP 野蛮人祭り』にてラストマッチを行なった地元、富山市出身のBarbaro44(写真・前列中央)。引退セレモニーには多くの関係者が集まり、引退に華を添えた。共にしのぎを削った北岡悟(写真・後列右端)も駆け付けた。
近年、日本格闘技界では地方興行が活発になっている。
北海道の『BOUT』、愛知の『NAGOYA KICK』など定期シリーズが旗揚げ、名古屋では5月にK-1王者の名を冠した『ホーストカップ』も開催された。
とりわけ地方進出に熱心なのは、DEEPの佐伯繁代表だ。
「47都道府県制覇」を目標に掲げ、大阪、名古屋といった大都市はもちろん静岡でも定期的に開催。また富山でのイベントも定着している。
格闘技の場合はプロレスのような“地方巡業”ではない。主役となるのは、地元のジムで練習に励む選手たちである。彼らはこうした地方興行からキャリアを積み、後楽園ホール、そしてタイトルマッチを目指す。中にはUFC出場を目標にする者もいるはずだ。
“地域性ありき”の地方大会が地元選手の成長の場に。
6月24日、富山県・イベントプラザ富山で行なわれた『DEEP TOYAMA IMPACT~野蛮人祭り~』も、まずは“地域性ありき”のマッチメイクだった。ほぼすべての試合に地元ジム所属選手が出場。DEEPはMMAイベントだが、前半戦にはキックルールやキッズの試合も組まれていた。
ジャンルを問わず、地元選手が経験を積む場所として機能しているわけだ。
会場は街道沿いの倉庫を改装したとおぼしき展示スペース。場内ではTシャツなどのグッズだけでなく焼きそばとビールの売店も。
いかにも地方、といった感じののどかな雰囲気。しかしここで行なわれる試合は、間違いなく東京での試合、さらには北米にもつながっている。
若い選手にそう実感させてくれるのは、トップ選手の存在だ。この日、メインに登場したのはBarbaro44(バルバロフォーティーフォー)だった。
地元に愛され続けた格闘家、Barbaro44の引退式。
大会を運営するジム『クラブバーバリアン』の所属で、DEEPライト級の上位戦線で活躍。帯谷信弘、横田一則、菊野克紀といったタイトル経験者としのぎを削ってきた選手であり、現在UFCを主戦場とする小見川道大に勝ったこともある。
今回は富山の格闘技シーンを引っ張ってきた彼の引退試合。日系ブラジリアンのLUIZに判定負けを喫してしまったBarbaroだが、興行のクライマックスはここからだった。
地域社会にしっかりと根付いた日本の“格闘文化”。
引退セレモニー。労いの花束や記念品を渡すためリングに上がったのは、実に21人。ジムの後輩、イベント関係者、スポンサー。東京からは、出稽古でともに汗を流した北岡悟も訪れた。地元にこだわりながら“中央”でも活躍したBarbaroならではの、そして地方興行ならではの引退セレモニーだったと言えるだろう。
決して目立たない、大きなニュースにはならない地方興行での引退。しかしそれは、Barbaroと彼の仲間たちにとって最高の舞台だった。
東京ではなく、五大都市でもない富山にも、格闘技を愛してやまない者たちがいる。ここで行なわれる試合は“世界”につながり、同時に“ここにしかないドラマ”もある。
日本から格闘技ブームが去って久しい。しかし富山大会を見て感じたのは、この国には間違いなく“格闘文化”が根づいているということだ。(Number Web)