もしも理想的な家庭を持っていたとして。
もしも理想的な夫と結婚していたとして。
もしもそれを突然失ってしまったとして。
どれくらいすればその現実を受け入れられるのだろう。
どうすればその現実に耐えられるようになるのだろう。
悲しみが乾くまで(THINGS WE LOST IN THE FIRE)
2007年 アメリカ・イギリス
監督:スザンネ・ビア
出演:ハル・ベリー、ベネチオ・デル・トロ、デビット・ドゥカヴニー
「チョコレート」でハル・ベリーの美しさに感動した。
それ以来彼女の映画は割と観てる。
そうでなければ、この邦題ではあまり観る気にならない。
しかも原題でないと、彼女が悲しみを爆発させるシーンとリンク出来ない。
仕方ない部分はあるんだろうけど、仕事なんだからもう少し頭をひねってほしい。
さて、デルトロだ。
この手のラテン系の男は好みではない。
だがデルトロから目が離せない。
アップが多い、と言うだけでなく、気がつくと目が行ってる、と言う感じ。
趣味じゃない男に惹かれると、きっとこんな気持ちになるんだろう。
オードリー(ハル)の夫は、現実にこんな人いるの?って言うくらい善人だ。
善人ゆえに、DV被害の女性を助けて、その旦那に撃ち殺される。
妻からしたら、こんな理不尽な話はない。
あまりに突然で、彼女は夫の死を受け入れることが出来ない。
オードリーはどうしたか。
夫の代わりを完璧にこなそうとした。
残された子供の母だけではなく、父親になろうとする。
夫の親友で、誰からも見捨てられたヘロイン中毒のジェリー(デルトロ)の面倒を、夫の代わりにみようとする。
今は薬中で落ちぶれてるが、もとは弁護士のジェリーには、どうやらオードリーの気持ちが理解できているようだ。
ジェリーを援助してる夫のやり方を快く思っていなかったオードリーが、急に彼を自宅に引き取ると言った理由が、そうでなければ納得いかないからだ。
だからジェリーは彼なりに恩返しをしようとする。
ヘロインを断ち、子供の面倒を見て、オードリーの寂しさを埋めてやろうとする。
オードリーが不眠に陥り、かつて夫との間で密かに交わされていた行為(セックスではない)を、ジェリーに求めるシーンは繊細だ。
男からしたら、ふざけるなと言いたいかもしれない。
だけどジェリーは、黙って彼女の要望に応える。
彼女に対する感謝、同情、そして何より亡くなった親友の代わりを、彼なりに務めたいと言う思いの表れだ。
女は男の存在そのものを欲することがある。
寄り添い、それだけで満足してしまう。
女性監督ならではの感覚、共感できる部分だ。
無論、嫌いな男にそれを求めるわけがない。
この時点でオードリーはジェリーに惹かれている。
だが夫の死を受け入れられないまま、他の男に惹かれるなんて許せない。
しかも父親役を引き受けていたつもりだったのに、今や子供たちはそれをジェリーに求めている。
戸惑いと嫉妬で、オードリーは自分を見失う。
2度目にオードリーが彼を迎えに行ったのは、もう夫の代理行動ではない。
彼女の意志なのだ。
自分の意思で行動した時、彼女はやっと現実を受け入れる準備を始めた。
自分の足で大地の上に立った時、人は初めてつらい現実を受け入れられる。
これは夫に頼り切っていた女と、親友に甘え切っていた男の、自立へのものがたりだと思う。
もしも理想的な夫と結婚していたとして。
もしもそれを突然失ってしまったとして。
どれくらいすればその現実を受け入れられるのだろう。
どうすればその現実に耐えられるようになるのだろう。
悲しみが乾くまで(THINGS WE LOST IN THE FIRE)
2007年 アメリカ・イギリス
監督:スザンネ・ビア
出演:ハル・ベリー、ベネチオ・デル・トロ、デビット・ドゥカヴニー
「チョコレート」でハル・ベリーの美しさに感動した。
それ以来彼女の映画は割と観てる。
そうでなければ、この邦題ではあまり観る気にならない。
しかも原題でないと、彼女が悲しみを爆発させるシーンとリンク出来ない。
仕方ない部分はあるんだろうけど、仕事なんだからもう少し頭をひねってほしい。
さて、デルトロだ。
この手のラテン系の男は好みではない。
だがデルトロから目が離せない。
アップが多い、と言うだけでなく、気がつくと目が行ってる、と言う感じ。
趣味じゃない男に惹かれると、きっとこんな気持ちになるんだろう。
オードリー(ハル)の夫は、現実にこんな人いるの?って言うくらい善人だ。
善人ゆえに、DV被害の女性を助けて、その旦那に撃ち殺される。
妻からしたら、こんな理不尽な話はない。
あまりに突然で、彼女は夫の死を受け入れることが出来ない。
オードリーはどうしたか。
夫の代わりを完璧にこなそうとした。
残された子供の母だけではなく、父親になろうとする。
夫の親友で、誰からも見捨てられたヘロイン中毒のジェリー(デルトロ)の面倒を、夫の代わりにみようとする。
今は薬中で落ちぶれてるが、もとは弁護士のジェリーには、どうやらオードリーの気持ちが理解できているようだ。
ジェリーを援助してる夫のやり方を快く思っていなかったオードリーが、急に彼を自宅に引き取ると言った理由が、そうでなければ納得いかないからだ。
だからジェリーは彼なりに恩返しをしようとする。
ヘロインを断ち、子供の面倒を見て、オードリーの寂しさを埋めてやろうとする。
オードリーが不眠に陥り、かつて夫との間で密かに交わされていた行為(セックスではない)を、ジェリーに求めるシーンは繊細だ。
男からしたら、ふざけるなと言いたいかもしれない。
だけどジェリーは、黙って彼女の要望に応える。
彼女に対する感謝、同情、そして何より亡くなった親友の代わりを、彼なりに務めたいと言う思いの表れだ。
女は男の存在そのものを欲することがある。
寄り添い、それだけで満足してしまう。
女性監督ならではの感覚、共感できる部分だ。
無論、嫌いな男にそれを求めるわけがない。
この時点でオードリーはジェリーに惹かれている。
だが夫の死を受け入れられないまま、他の男に惹かれるなんて許せない。
しかも父親役を引き受けていたつもりだったのに、今や子供たちはそれをジェリーに求めている。
戸惑いと嫉妬で、オードリーは自分を見失う。
2度目にオードリーが彼を迎えに行ったのは、もう夫の代理行動ではない。
彼女の意志なのだ。
自分の意思で行動した時、彼女はやっと現実を受け入れる準備を始めた。
自分の足で大地の上に立った時、人は初めてつらい現実を受け入れられる。
これは夫に頼り切っていた女と、親友に甘え切っていた男の、自立へのものがたりだと思う。