ジョニー・デップの映画は大抵見てるので、ふっとレンタルしてきた。
先日から書いているとおり、近所のTSUTAYAがなくなってしまう為、最後の半額セールで借りられれるだけ借りてきたDVDの中の1枚だ。
前知識は「歴史モノ」だけ。
お陰で映画を見ながら、頭の中で英国史のおさらいをしなければならなかった。
【リバティーン】2004年 イギリス映画
監督:ローレンス・ダンモア
出演:ロチェスター伯ジョン・ウィルモット/ジョニー・デップ、
リジー・バリー/サマンサ・モートン
チャールズ2世/ジョン・マルコヴィッチ
■ストーリー
ジョンは国王の前で卑猥な詩を発表した為、追放になってしまった。
だがジョンの才能を認め、彼を愛する国王は3ヶ月で彼を呼び戻すことに。
久しぶりにロンドンに戻ってきたジョンだが、その生活ぶりは少しも改まることがない。
酒場と売春宿と劇場だけが彼の人生だった。
その劇場で、ジョンは一人の女優に目を留める。
大根と罵られ、舞台を追われたリジーに、ジョンは無償の演技指導を申し出る。
女優としての誇りと野心に溢れるリジーにジョンは惹かれていくが・・・。
■感想
映画を演出(映像含む)・脚本・役者の三位一体芸術だと考えれば、バランスがいいとは言えない作品だ。
ものを書く人間からすると、一番気になる脚本の部分に疑問が多すぎる。
ロチェスター伯と言う放蕩者の人生を描きたいのなら、何故ひとりの女優との恋愛に焦点を当ててしまったのだろう。
プロローグはジョニデの口上から始まる。
「物語が進むにつれ私を嫌いになるだろう」
彼はそう言う。
その時私は、この映画で何を伝えたいのか想像してみた。
酷い男だがやっぱり魅力的だ、どうしても嫌いになれない。
客にこう言わせたいのではないかと。
残念ながらこの映画はそれに失敗している。
好きも嫌いもないのだ。
ジョン・ウィルモットを書ききれていないから、なんでそうなるのかわからないまま終わってしまう。
何故彼はこうまで王に反抗的なのか。
何故天才なのにまともな詩を書かないのか。
何故酒を飲み続けて自分を破壊していくのか。
映画はこうするのが当たり前のように彼の行動を描いていく。
芸術家=放蕩者・無頼漢を装う、天才=自己破壊願望あり、みたいは構図を作り上げ、ジョンを深く追求しているようには見えないのだ。
ただただ酒を飲み、女に溺れ、死に急ぐような生活を続ける彼の心の中にもっと触れたいのに、それを見せてくれない。
だからこの映画の見所は、ひたすらジョニデになってしまう。
ジョニー・デップはもともと2枚目役やヒーローだけを演じてきたわけではない。
「パイレーツ・・・」だって、憎めないと言いながら一応は悪役。
イメージの固定を恐れる、冒険好きな役者だと思う。
だから今回のジョン役を引き受けたのだろうが・・・。
前半の「放蕩者」とは名ばかりの、美しくてセクシーなロチェスター伯。
そして後半の梅毒の影響で崩れてしまった顔を銀の鼻覆いのようなもので隠し、小麦粉を溶いたような物を塗りたくっている姿。
この対照がすごい。
ジョニデって素敵~というファンを裏切る役作りも彼ならではだろう。
■お勧め度
極度のジョニデ好き。(しかも後半の状態にも耐えられる)
歴史モノ好き。
シェークスピア系の重厚な舞台好き。
以上の人にはお勧め。
この映画でもっとも残念だったのは、イギリス映画の最大の売りである田園風景の美しさが少しも味わえなかったこと。
よかったのは、忘れていた歴史の知識を掘り起こせたこと。
そしてジョニデの映画に対する情熱を感じることが出来たこと。
以下は蛇足です。
お暇な方と歴史好きの方だけどうぞ。
■時代背景
チャールズ2世の父王・チャールズ1世は、清教徒(ピューリタン)革命によって断頭台で処刑される。
母の王妃とフランスへ逃亡していた息子のチャールズ2世は、味方の軍と共に即位の機会を窺い、11年後にそれを果たす。(王政復古)
ジョンの父・ヘンリー・ウィルモットは、チャールズ2世の即位に貢献したとして、ロチェスター伯に叙勲された。
ちょうどこの時期、メイフラワー号でピルグリムが新大陸(アメリカ)のボストンに移住。
本国イギリスで清教徒迫害が起こり、次々と新大陸を目指したピューリタンによって、現在のアメリカ合衆国が土台が作られる。
■ジョン・ウィルモット
彼は14歳でオックスフォードの修士号を得た優秀な学者で芸術家。
18歳の時、オランダとの戦争に加わり武勲を得る。
その非凡な才能で王から寵愛されるが、王政を批判し続ける反骨者でもある。
33歳で、梅毒・アルコール中毒などによって命を落とす。
母親は清教徒(プロテスタントの宗派のひとつ)で、清廉・潔白・厳格を規範としている。
ジョンが放蕩な生活を続けるのは、母親への反抗の表れなのかもしれない。
だが死の床で母親が寄越した司教によって改宗し、自分の行いを恥じたと言われる。
先日から書いているとおり、近所のTSUTAYAがなくなってしまう為、最後の半額セールで借りられれるだけ借りてきたDVDの中の1枚だ。
前知識は「歴史モノ」だけ。
お陰で映画を見ながら、頭の中で英国史のおさらいをしなければならなかった。
【リバティーン】2004年 イギリス映画
監督:ローレンス・ダンモア
出演:ロチェスター伯ジョン・ウィルモット/ジョニー・デップ、
リジー・バリー/サマンサ・モートン
チャールズ2世/ジョン・マルコヴィッチ
■ストーリー
ジョンは国王の前で卑猥な詩を発表した為、追放になってしまった。
だがジョンの才能を認め、彼を愛する国王は3ヶ月で彼を呼び戻すことに。
久しぶりにロンドンに戻ってきたジョンだが、その生活ぶりは少しも改まることがない。
酒場と売春宿と劇場だけが彼の人生だった。
その劇場で、ジョンは一人の女優に目を留める。
大根と罵られ、舞台を追われたリジーに、ジョンは無償の演技指導を申し出る。
女優としての誇りと野心に溢れるリジーにジョンは惹かれていくが・・・。
■感想
映画を演出(映像含む)・脚本・役者の三位一体芸術だと考えれば、バランスがいいとは言えない作品だ。
ものを書く人間からすると、一番気になる脚本の部分に疑問が多すぎる。
ロチェスター伯と言う放蕩者の人生を描きたいのなら、何故ひとりの女優との恋愛に焦点を当ててしまったのだろう。
プロローグはジョニデの口上から始まる。
「物語が進むにつれ私を嫌いになるだろう」
彼はそう言う。
その時私は、この映画で何を伝えたいのか想像してみた。
酷い男だがやっぱり魅力的だ、どうしても嫌いになれない。
客にこう言わせたいのではないかと。
残念ながらこの映画はそれに失敗している。
好きも嫌いもないのだ。
ジョン・ウィルモットを書ききれていないから、なんでそうなるのかわからないまま終わってしまう。
何故彼はこうまで王に反抗的なのか。
何故天才なのにまともな詩を書かないのか。
何故酒を飲み続けて自分を破壊していくのか。
映画はこうするのが当たり前のように彼の行動を描いていく。
芸術家=放蕩者・無頼漢を装う、天才=自己破壊願望あり、みたいは構図を作り上げ、ジョンを深く追求しているようには見えないのだ。
ただただ酒を飲み、女に溺れ、死に急ぐような生活を続ける彼の心の中にもっと触れたいのに、それを見せてくれない。
だからこの映画の見所は、ひたすらジョニデになってしまう。
ジョニー・デップはもともと2枚目役やヒーローだけを演じてきたわけではない。
「パイレーツ・・・」だって、憎めないと言いながら一応は悪役。
イメージの固定を恐れる、冒険好きな役者だと思う。
だから今回のジョン役を引き受けたのだろうが・・・。
前半の「放蕩者」とは名ばかりの、美しくてセクシーなロチェスター伯。
そして後半の梅毒の影響で崩れてしまった顔を銀の鼻覆いのようなもので隠し、小麦粉を溶いたような物を塗りたくっている姿。
この対照がすごい。
ジョニデって素敵~というファンを裏切る役作りも彼ならではだろう。
■お勧め度
極度のジョニデ好き。(しかも後半の状態にも耐えられる)
歴史モノ好き。
シェークスピア系の重厚な舞台好き。
以上の人にはお勧め。
この映画でもっとも残念だったのは、イギリス映画の最大の売りである田園風景の美しさが少しも味わえなかったこと。
よかったのは、忘れていた歴史の知識を掘り起こせたこと。
そしてジョニデの映画に対する情熱を感じることが出来たこと。
以下は蛇足です。
お暇な方と歴史好きの方だけどうぞ。
■時代背景
チャールズ2世の父王・チャールズ1世は、清教徒(ピューリタン)革命によって断頭台で処刑される。
母の王妃とフランスへ逃亡していた息子のチャールズ2世は、味方の軍と共に即位の機会を窺い、11年後にそれを果たす。(王政復古)
ジョンの父・ヘンリー・ウィルモットは、チャールズ2世の即位に貢献したとして、ロチェスター伯に叙勲された。
ちょうどこの時期、メイフラワー号でピルグリムが新大陸(アメリカ)のボストンに移住。
本国イギリスで清教徒迫害が起こり、次々と新大陸を目指したピューリタンによって、現在のアメリカ合衆国が土台が作られる。
■ジョン・ウィルモット
彼は14歳でオックスフォードの修士号を得た優秀な学者で芸術家。
18歳の時、オランダとの戦争に加わり武勲を得る。
その非凡な才能で王から寵愛されるが、王政を批判し続ける反骨者でもある。
33歳で、梅毒・アルコール中毒などによって命を落とす。
母親は清教徒(プロテスタントの宗派のひとつ)で、清廉・潔白・厳格を規範としている。
ジョンが放蕩な生活を続けるのは、母親への反抗の表れなのかもしれない。
だが死の床で母親が寄越した司教によって改宗し、自分の行いを恥じたと言われる。