Three frogs which smile.

酒飲みは奴豆腐にさも似たり
初め四角であとは ぐずぐず

彼女の童話

2005-08-10 | こころみ
る街角に一人の娘が立っていました。
その娘の視線の先には若い男とそれに寄り添い、笑顔で戯れる美しい女がいました。
「あぁ、私もあの隣に行きたい。出来ることなら、一言だけ。
私のことを好きと言ってくれたら、もう何もいらないわ」
娘は来る日もまた来る日も、通り過ぎる男と女を窓越しに見てはため息をついていました。

る夏の夜のこと、その日街はお祭りで大勢の人でにぎわっています。
娘も自分のお気に入りの澄んだ蒼いスカートをはき、街に出て行きました。
色とりどりの鮮やかな飾りつけ。
笑いながら走り抜けていく子供たち。
大道芸の一団を囲むように人々は立ち並び、驚き、歓声を上げています。
男と女もその輪の中で、繰り広げられる奇術に拍手をしていました。
娘はそれを見つけるとやはり曇った顔をしました。
すると目の前に背の高い道化が立っていて、娘の掌に紅いキャンディーを握らせました。
なぜか娘は魔法にかけられた様にキャンディーを口にいれてみました。

れは娘の好きなほんのりと甘い、それでいて少し香ばしい夏の果実のような味がしました。
「ありがとう」
娘は笑顔でお礼を言うと、また視線を元に戻し、やはり曇った顔をしました。
「もしも願いが叶うなら一度でいい。あたしを好きだといって欲しい」
娘がそう思ったそのときです。
彼女の姿はもうそこにはなく、道化の手には澄んだ蒼いキャンディーが一つ光っていました。

りの終わり、街の灯りは一つ一つ消えていき、人影もまばらになってきます。
男と女はベンチに座り、祭りの思い出を語り合っていました。
見詰めあう二人の視界を影がさえぎり、そこには道化が立っていました。
道化は女の掌の上に、澄んだ蒼いキャンディーを一つのせてふらりふらりと去っていきました。
「薄荷は苦手なの」
そう言うと女は男の口にキャンディーを入れ、また祭りの話を始めました。
男はキャンディーを噛み砕き
「薄荷じゃないみたいだよ。なんだろう。俺はこの味好きだな」
男の口の中でキャンディーは
ほろほろと崩れとけてなくなっていきました。

*** おしまい ***

童話のような話を書いてみたくなり、
書いてはみたのですがお眼汚しです。

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おお、 (ワン太郎)
2005-08-10 19:58:29
この残酷さは、確かに童話だ!
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薄荷キャンディー (d-pop)
2005-08-10 20:27:48
ってキンキの曲なかなかいいんだよね。



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Unknown ()
2005-08-10 22:07:07
好きな人に美味しいと言われるなら、食べ物になってしまってもいいかも…。

でも、出来ることならすぐ食べられてしまうんじゃなくて、しばらくポッケで行動を共にしたいなぁ~。

昔は好きな人が授業中寝てたりしたら『あの机になりたい~』とか『タオルになりたい~』とかバカなコトを言ったりしたものです…。
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食べ物かぁ・・・ (ともっち)
2005-08-14 01:17:20
食べられたいケド、食べ物だと時間が経っちゃうと出てきちゃうような気がするなぁ・・・

そのまま体内に留まっていられたらイイんだケドな。



昔、好きな人のグローブになりたかった。

野球をやってる人でねぇ。

グローブだったら大事にしてもらえるなぁと・・・



でもね、久しぶりに会ったらグローブが変わってて、ちょっとだけショックでした(苦笑)
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残酷 (ワン太朗さんへ:あくあ)
2005-08-14 22:15:47
童話って残酷だけれど、道理は通っている気がします。

それでいいんだって思う。

そうでないと残らない気がします。



むずかしいっす;;
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へぇ (d-popくんへ:あくあ)
2005-08-14 22:16:53
薄荷キャンディー。

d-popは舐められないんぢゃ無かったっけ。

歌の歌詞に共感できるのはいいよねぇ。

ちゃんと読んでみるのは好き。
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願望 (犬さんへ:あくあ)
2005-08-14 22:19:19
邪魔にもならず相手の気持ちを欲することのない、

自分の思う人の近くにあるものになりたい。

ってある意味究極かなぁって思います。



そのときだけは必要とされてくっついていられるんだもんねぇ。

ポッケで一緒に行動してしまうとその分

違う願望も生まれてきそうで怖いなぁ。



やるなら一気に、一思いにっていうのも悲しいけれどねぇ。
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とどまりたい (ともっちさんへ:あくあ)
2005-08-14 22:21:44
なるほど。

キャンディーとかなら溶けてなくなっておわりだけれど、

食事となるとなんか出てきてながされて(失礼!!)

って言うのがありそうで微妙(笑)

グローブっていいねぇ。

その人と一緒に白球を追いかけることが出来るもんね。

その人の思いをかなえる力を発揮できる、ある意味パートナーだなぁ。

そいうのいいねぇ。
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これ・・・ (紗雪)
2005-08-15 10:55:23
すごいなぁ。。。

読んだ時から深いなぁと思うちょりました。



キャンディーね~・・・

舐め尽くされてなくなっちゃうの・・・ヤだな・・・(なんかエロい??)

さゆは何になりたいかなぁ・・・。

飼い猫になりたいかなぁ。・・・ん~やっぱそれも微妙・・・(苦笑)

だって、なんか・・・ちゃんと世話してもらえなさそうだもの(苦笑)



そうなると・・・結局人間なのかな。

だけど、人間って面倒くさいな~・・・・しみじみそう思う。

楽しい事もそりゃナイわけじゃないけど

それ以上に考えなきゃならない事が多すぎて。

時々すごく面倒臭い(苦笑)



童話もいいけど

あくあちゃんには是非濃ゆぅい小説を書いて欲しいっすぅ。

TB小説とは勿論別でね~(ニヤリ)

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濃ゅいもんかぁ (紗雪ちゃんへ:あくあ)
2005-08-15 11:41:35
愛欲と肉欲の渦が回るような奴?(笑)

小説のテーマって絞るのが難しいなぁってつくづく思うよ。

TB小説・・・濡れ場・・うーん、どうしようかねぇ。まだ悩み中だよ(笑)



童話って起承転結がはっきりしていていいなぁって思ったよ。主人公がどうなれば本当のハッピーエンドなんだろうって。

「結局誰も不幸にはなっていない気がする」でまとめてみた(笑)



キャンディーは、舌先で転がして舐めしゃぶりつくしちゃうとエロくなるよね。

キャンディーを擬人化するとエロに変わるのねぇ



猫だったらさ、気ままでくっついていることが出来ていいかもしれないね。ただ、帰ってこないときは寂しいかなぁ。むー。
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