Three frogs which smile.

酒飲みは奴豆腐にさも似たり
初め四角であとは ぐずぐず

あたしの還る場所

2007-09-10 | 日々の種

「蛙の子は蛙」
おたまじゃくしじゃないのか


土曜日、学校から帰るとテーブルの上に山ほどの袋が置いてある。
茶色の紙袋の中にはたくさんの魚。
さより、こはだ、穴子、鯵、鯖、海老、鮪の塊、烏賊、蛸など。。。
台所にはぱぱんぬ。
腰には前掛け、頭に手ぬぐいを巻いて下ごしらえをしている。
あたしは熊笹を一枚一枚丁寧に洗い、ぬぐう。
ぱぱんぬの横に立ち、捌かれていく魚を見ている。
夜になるとたくさんの人が集まり、ぱぱんぬの握った鮨を食べ、喋り呑み笑う。

ぱぱんぬはずっと立ち通しで、ご飯を作り振舞う。
あまり自分では食べず、ひと段落して賄いを作って少し食べる。
その賄いが美味しそうで、もうお腹いっぱいなのに食べたがる人にこしらえる。
あたしもそれを少し貰う。

『本当に美味しいものを食べたとき、人は笑ってしまうものなんだ』

そんな事を言ってた。
美味しいご飯と気の合う仲間と酒。
そこには笑があってみんな笑顔で帰って行った。
ぱぱんぬも笑顔だった。身体は草臥れたかもしれないけれど、気持ちが穏やかだった。

家を出るとき、ぱぱんぬが事あるごとに一心に砥いで使っていた小出刃、と出刃を譲ってもらった。
と、言うよりは黙って持ってきた。
笑顔で暮らせるような気がしたから。

休日、人に呼ばれてずっと台所に立っていた。
秋刀魚を30匹、烏賊を5杯、モツを1.3kgをとにかく調理。
秋刀魚は刺身、生姜煮、蒲焼、〆秋刀魚、つくね汁に塩焼き。
烏賊は刺身としょうが焼きと保存用に捌いておく。
モツは煮込んでモツ煮。

愉しかったよ。とてもとても愉しかったの。
腰も痛いし、筋肉痛もあるのだけれど、ご飯をこしらえるのは気持ちがいいし、心が落ち着く。
食べてくれる人がいるのがよりいっそう嬉しい。
でも、味見をしてから人に出す癖をつけたいものだと多少思う。
そいえば、ぱぱんぬも殆ど味見をしなかった。
あたしは貴方の子供だと、再確認して笑った。
魚くささと煙草と酒の匂いが絡まって自分にまとわりつく。
自分でも臭いと思うけれど、なんだか懐かしくて心地好かった。
そんな匂いのぱぱんぬに抱きつきたかった事を思い出した。

次はもっと大物を捌きたい。
まずは鰹、鯛、鰤か。
作る場所と食べる人を探さないとね。
このまま調子に乗っていって、
そのうち鮪の解体ショーとか参加しそうな気持ちだったりする。