少年が1冊の本に出会うことから始まる物語。
最近読んだパスカル・メルシェの『リスボンへの夜行列車』も、本との出会いから始まる物語でした。こういってしまうとなんだかひとくくりのようですが、もちろん味わいはそれぞれ。
その違いにしみじみしてしまいました。
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風の影
著者:カルロス・ルイス・サフォン
訳者:木村 裕美
発行:集英社
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1945年のバルセロナ。霧深い夏の朝、ダニエル少年は父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で出遭った『風の影』に深く感動する。謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去の探求は、内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させる…。17言語、37カ国で翻訳出版され、世界中の読者から熱い支持を得ている本格的歴史、恋愛、冒険ミステリー。
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「忘れられた本の墓場」でたった1冊、自分が守るべき本を見つける。
なんて魅力的な設定でしょう。
本とその作者に引き寄せられていく少年ダニエルの成長と、作者・フリアンの謎めいた人生が絡み合うかのように物語が進んでいきます。
少年の恋と冒険。
そして、絶ち切れぬ因縁と愛。
顔のない怪人と世間に隠れもない殺人鬼。
物語は許されぬ恋人たちの物語、メロドラマといえばそうとも言えると思いますが、何より心に残るのは父と息子の絆です。
少年ダニエルとその父との、静かに互いを思いあう情愛はもとより、ダニエルを見守る人々の中に宿る思い。
彼らはダニエルに何をみていたのでしょうか。
在り得たかもしれない自分。
在り得たかもしれない自分の息子。
それとも、少年時代の自分の鏡。
若者に思いをかける優しさが沁みます。
物語は上巻、下巻とも400ページほどの長編です。
が、これがなかなか思わせぶりで、後半になって、やっと物語が加速します。
私にとっては文豪ディケンズの『大いなる遺産』タイプの作品。
少年の、少年らしい日々、そしてその恋と成長が急がず描かれるので、前半のペースはゆっくりとしています。
カラックスの謎の周りをぐるぐる回るだけのような進み方。
これにじれて投げ出してしまうと、下巻に待っている怒涛の(若干大時代的な)種明かしとクライマックスにたどりつけません。
そうなったら、上巻を耐えた甲斐がないというものです。
もしも読まれるならば、クラシカルな物語を読みたい時に、そして、上下巻は必ず一気に揃えてできるだけ勢いをつけていくのがおススメです。
[読了:2012-12-17]
一気に読まないと、ダメなんですよねえ。やっぱり。
ところで、読みたいと思っていた『海のカテドラル』。
図書館にはなくて、そのうち購入リクエストをしようかと思っているうちに、出版社がつぶれてしまって、この先入手困難になる前に買ってしまうべきかしら…と、迷っています。
買ってしまうと、いつでも読める気がして、かえってなかなか読まないんですよねえ…私。(^^;)
>一気に読まないと、
特にこの作品はそういう作品だった気がします。でも、好評でシリーズ化されているみたいですね。『忘れられた本の墓場』シリーズ。
え! 武田ランダムハウス?へー、コージー系のものとかで売れてるのかと思ってましたよ。
そうかー。でも『海のカテドラル』は一読の価値ありです!『風の影』よりこっちを積んだほうがいいと…はい、珍しく断言します。
そういえば「ファインダーズ書店」、献本にあがりましたね。予想的中?
「ファインダーズ書店」献本は見事に外れました。外にもこの間,東京創元社作品随分応募したのですが,あたったのは1冊でした。
それでも外れたら買おうと思っていた本なので,ありがたいのですが。(っていうか,こう考える時点で献本の主旨に外れている気も^^;)
『海のカテドラル』もやっぱり買ってみることにします!
『ファインダーズ書店』、残念でしたね。じゃあ、私から献本しようかしら。ご連絡いただければお送りしますよ~。
『海のカテドラル』が積読山に追加されるなら、いつか書評を拝見できるのかしら。大河ドラマをたっぷり楽しんでください。