ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

アヴィグドル・ダガン【宮廷の道化師たち】

2013-07-19 | 集英社

『古いシルクハットから出た話』のアヴィグドル・ダガン。
せっかくなので、代表作のひとつを読んでみました。

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 宮廷の道化師たち

 著者:アヴィグドル・ダガン
 訳者:千野 栄一,姫野 悦子
 発行:集英社
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「世界にただこのことを忘れさせないために、生き残りたいと願った…」強制収容所の最高司令官の“館”の道化師として生きのびた4人の男達の運命。淡々と、シンプルに、しかしながら深く、衝撃的な恐ろしい歴史的事実が暴かれてゆく。「人間は皆この地上での神の宮廷道化師にすぎないのか?」復讐のための長い彷徨は、この問に「否!」と確信する宇宙的な美しい答に辿り着く。人間性への信頼を回復する哲学的歴史ドラマ。
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これはAmazonにあった「BOOK」データベースの内容紹介文です。
そのとおりと思う文章です。
この文章を書いた人は、この作品を深く受けとめたのだろうと思います。

語り口の印象は『古いシルクハットから出た話』と同じです。
誰かを前にして、起こったことを静かに話しているような。
その静けさはかえって出来事の悲惨さを伝えます。

死と紙一重の場所で、ただ生き抜くことだけを願った日々。
その後に続く時間をどのように生きるか。
4人にはそれぞれの時が流れます。

「人間は皆この地上での神の宮廷道化師にすぎないのか?」

この問いを前にして思うのは、自分の身に起こること、そのほとんどは自業自得であると思っていられる私はとても幸せなのだということ。
そうでなければ、これは受け容れるよりほかないと思えるということも。
こんな目にあうのはなぜだ、この理不尽はどういうことだと問わずにいられないほどの出来事を知らないのはとても恵まれたことなのだろうと思います。
ただ、そのような時に、同じ問いを持つかはわかりません。
そして、著者と同じ答えを持つかどうかも。




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