ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

ホルヘ・ルイス・ボルヘス【砂の本】

2013-06-19 | 集英社

ボルヘスといえば、「夢」と「図書館」というイメージ。
アンソロジーでの拾い読みばかりだったので、初の1冊まるごとボルヘスです。

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 砂の本

 著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
 訳者:篠田 一士
 発行:集英社
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古本屋さんで見つけたこの文庫は、2冊分の本がまとまっています。
1つは『砂の本』で、『他者』,『ウルリーケ』,『会議』,『人智の思い及ばぬこと』,『三十派』,『恵みの夜』,『鏡と仮面』,『ウンドル』,『疲れた男のユートピア』,『贈賄』,『アベリーノ・アレドンド』,『円盤』,『砂の本』の13篇。
もう1つは『汚辱の世界史』。
『ラザラス・モレル』,『トム・カストロ』,『鄭夫人』,『モンク・イーストマン』,『ビル・ハリガン』,『吉良上野介』,『メルヴのハキム』,『ばら色の街角の男』,『死後の神学者』,『彫像の間』,『夢を見た二人の男』,『お預けをくった魔術師』,『インクの鏡』の16篇。
この他にそれぞれの「あとがき」や「序」が収められています。
すべてが短編、しかも短編としても短めの作品ばかりなので、ぎっしりつまっている印象です。

どの話が好きとか嫌いとか、そういう記憶の残り方ではなく、なんだかとても漠然とした読後感。
それなのに、何かの折に、ふと「ああ、ああいう話があった」と思いだしそうな気がします。
そしてなにより、不気味。
次に本を開いた時、中身が変わっていそうで怖い感じがします。
ひとつふたつ増えていたり、あったはずのものがなくなっていたり、物語がほんの少し変わっていたりしそうな気がしてしまう。
作品数が多く、作られた物語と過去にあったこととして語られるものが混在していることと、表題作の『砂の本』の影響なのかもしれません。
同じページを開くことができない『砂の本』。
もともとボルヘスに対して持っていた「図書館」というイメージのせいもあるかも。
なんだか図書館が1冊の本に集約されたというイメージ。
文庫ですらそう思うのに、手元にあるのがもし単行本だったらなおさら不気味に思いそうです。
ひとつひとつはそう怖くも不気味とも思わなかったのに。
怖いな、ボルヘス。
初版本なんて手にしたら開けないかも。
触ることはおろか、目にすることもないでしょうけれど。



コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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そうそう! (かもめ)
2013-06-19 06:48:32
なんというか、この本自体が「砂の本」なのではないかと思わせるなにかがありますよね。
不思議な魅力が詰まっていました。
かもめさん、コメントありがとうございます。 (きし)
2013-06-19 23:53:01
不思議ですよねー。ありそうもない話なのに、ありそうもないからかえってありそうな気がしてしまう。学者さんっぽいというか、華美な感じがないからでしょうかねー。

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